微分を用いた不等式の証明
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要点
不等式 f(x) ≧ g(x) を示す手順は決まっている。差 h(x) = f(x) − g(x) を作り、h の最小値が 0 以上であることを微分で示す。手順自体は単純だが、実力が出るのは h′(x) の符号がすぐに決まらない場面である。そこで止まらずに h″(x) へ進み、h′ の増減から h′ の符号を決め、それから h の増減を決める——この二段階、必要なら三段階の階段を昇れるかどうかで差がつく。そしてこの技術の本当の価値は、はさみうちの材料を自分で作れるようになることにある。数IIIの極限問題の多くは、実はこの力に支えられている。
こんなときに使う
- 『〜を示せ』の形で不等式が与えられている
- 相加相乗やコーシーでは処理できない(対数・指数・三角が混ざっている)
- 極限を求めたいが直接計算できない → 挟むための不等式を自分で作る
- h′(x) の符号が determined しない → ためらわず h″(x) を調べる
- n を含む不等式 → 微分ではなく帰納法かもしれない、と一度疑う
手順
- 1. 差 h(x) =(左辺)−(右辺)を作る
- 2. 定義域を確認する(対数なら真数条件、分数なら分母 ≠ 0)
- 3. h′(x) を計算し、符号を調べる
- 4. 符号が決まらなければ h″(x) を調べ、h′ の増減を出す。h′ の値が分かる点(多くは端点)と組み合わせて h′ の符号を確定させる
- 5. h の増減表を書き、最小値または端点での値を求める
- 6. 最小値 ≧ 0 を示す。等号成立条件も必ず述べる
例題
x > 0 のとき、e^x > 1 + x + x²/2 が成り立つことを示せ。
解答
- h(x) = e^x − 1 − x − x²/2 とおく。示したいのは x > 0 で h(x) > 0。
- 【1回目の微分】
- h′(x) = e^x − 1 − x
- この符号は一目では決まらない。そこでもう一段進む。
- 【2回目の微分】
- h″(x) = e^x − 1
- x > 0 のとき e^x > 1 なので h″(x) > 0。
- よって h′(x) は x > 0 で単調増加。
- 【h′ の符号を確定させる】
- h′(0) = e⁰ − 1 − 0 = 0
- h′ は単調増加で h′(0) = 0 だから、x > 0 では h′(x) > 0。
- 【h の符号を確定させる】
- よって h は x > 0 で単調増加。
- h(0) = 1 − 1 − 0 − 0 = 0
- したがって x > 0 では h(x) > 0。
- ∴ x > 0 のとき e^x > 1 + x + x²/2 (証明終)
- 【構造】微分するたびに『0 での値が 0』という情報が使えて、符号が1段ずつ確定していく。
- この階段を降りていく形は、e^x の多項式による評価では常に現れる。
- 同じ手順で e^x > 1 + x + x²/2 + x³/6 も示せる。
別解・ほかの見方
- 凹凸を使う:凸関数は接線の上側にあるので、接線の式との比較で不等式が出る
- 平均値の定理を使う(区間の設定と c の存在範囲の明示が必要)
- 相加相乗平均やコーシー・シュワルツで処理できないか先に検討する(使えれば微分より速い)
- n を含む不等式は数学的帰納法。微分と併用することもある
- 両辺の対数を取ってから微分する(積や累乗の形のとき)
落とし穴
- 1回微分で符号が決まらないところで止まってしまう(この単元の最大の壁)
- 定義域の端点での値を調べず、最小値の議論が完結しない
- 等号成立条件を書かない
- 『単調増加だから正』と書くだけで、起点の値(h(0) = 0 など)に触れない
- 定義域を確認せず、対数の真数が負になる範囲まで議論してしまう
- 1回微分で符号が決まらないときに2回微分へ進めない
なぜ大事か
差をとって微分し最小値を評価。はさみうちの材料を自分で作れるようになる
東大での出方
単独でも出るが、より多いのは極限問題の (1) として出る形。『(1) この不等式を示せ → (2) 極限を求めよ』という誘導では、(1) がはさみうちの材料そのものになっている。(1) を飛ばして (2) を解こうとすると、まず解けない設計になっている。
確認問題
- x > 0 のとき log(1 + x) < x を示せ
- x > 0 のとき x − x²/2 < log(1 + x) を示せ(2段階の微分が必要)
- 上の2つを合わせて lim[x→0] log(1+x)/x を求めよ(はさみうちの材料として使う)
発展
3回以上微分が必要な不等式。また、示したい不等式が弱すぎて挟めないときに、より強い不等式を自分で立て直す判断。東大の最上位帯はここを要求してくる。
前提になるノード
このノードを前提にするノード
「微分法」のノード
- 積・商の微分、合成関数の微分
- 三角関数・指数関数・対数関数の微分
- 逆関数・陰関数の微分
- 媒介変数表示された関数の微分
- 対数微分法
- 増減・凹凸・変曲点・漸近線(グラフを描き切る)
- 最大最小(実用・図形量への応用)
- 方程式の実数解の個数(数III版・定数分離とグラフ)
- 微分を用いた不等式の証明
- 平均値の定理
- 速度・加速度・近似式
解説は自作です。誤りに気づいたら お問い合わせ(/contact/)から教えてください。