積分と不等式(面積比較・評価)
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要点
求まらない量を、求まる量で挟む。これが理三で最も差がつく技術である。積分の値が初等関数で書けなくても、被積分関数の大小を評価すれば、面積の大小として不等式が作れる。特に重要なのが和と積分の比較で、Σ 1/k と log n の関係はその代表例になる。階段状の和と滑らかな曲線の下の面積を比べる、という図が頭にあるかどうかで見通しが変わる。ただし論証としては、被積分関数の単調性を先に示すことが必須で、これを抜かすと面積の大小を主張する根拠がなくなる。
こんなときに使う
- 『〜を示せ』の対象に、直接計算できない積分や和が含まれている
- Σ と ∫ が同じ問題に現れる → 面積比較を疑う
- log n が評価の対象 → 1/x の積分と調和級数の比較
- はさみうちの材料が要る → 積分で作れないか考える
- 『(1) 不等式を示せ → (2) 極限を求めよ』の誘導 → (1) が挟む道具
- 被積分関数が単調 → 区間の両端の値で挟める
手順
- 1. 被積分関数 f の単調性を調べる(微分するか、明らかなら理由を一言)
- 2. 区間 [k, k+1] 上で、f が減少なら f(k+1) ≦ f(x) ≦ f(k)
- 3. 各辺を [k, k+1] で積分する(幅が1なので、両端の値がそのまま不等式になる)
- 4. k について足し合わせ、Σ と ∫ の大小関係を作る
- 5. 求めたい量がその不等式の中央に来るよう整理する
- 6. 両端の極限を計算し、一致すればはさみうちで確定する
例題
n を 2 以上の整数とするとき、次を示せ。
1/2 + 1/3 + … + 1/n < log n < 1 + 1/2 + … + 1/(n−1)
解答
- f(x) = 1/x は x > 0 で単調減少(f′(x) = −1/x² < 0)。
- 【区間ごとの評価】
- k ≦ x ≦ k+1 のとき、単調減少性より 1/(k+1) ≦ 1/x ≦ 1/k(等号は端点のみ)。
- 各辺を x について k から k+1 まで積分する。区間の幅が 1 なので
- 1/(k+1) < ∫[k→k+1] dx/x < 1/k
- (f は定数でないので、狭義の不等号になる)
- 【足し合わせる】
- k = 1, 2, …, n−1 について足すと、中央の積分は繋がって ∫[1→n] dx/x = log n。
- 左辺の和: 1/2 + 1/3 + … + 1/n
- 右辺の和: 1 + 1/2 + … + 1/(n−1)
- ∴ 1/2 + 1/3 + … + 1/n < log n < 1 + 1/2 + … + 1/(n−1) (証明終)
- 【この不等式が効く場面】
- 右側から Σ[k=1..n] 1/k > log n が言えるので、n → ∞ で調和級数が発散することが従う。
- また両側から、Σ[k=1..n] 1/k と log n の差が有界であることも分かる。
- 検算:n = 2 のとき 1/2 < log 2 < 1。log 2 ≒ 0.693 なので成立 ○
別解・ほかの見方
- 向きを逆にする:積分を和で評価する(数値積分の誤差評価と同じ発想)
- 台形で近似すると、長方形より精密な評価が得られる
- 被積分関数が単調でないときは、増減表を書いて区間を分ける
- 積分区間を平行移動・対称移動して、既知の積分に帰着させる
- 定積分と漸化式(I_n を I_(n−2) で表す)と組み合わせて、極限のオーダーを出す
落とし穴
- 単調性を示さずに面積の大小を主張する(論証として成立しない)
- 区間の取り方(k から k+1 か、k−1 から k か)を誤り、和の範囲がずれる
- 等号の有無を検討せず、狭義/広義を取り違える
- 和の項数と積分区間の対応がずれる(n−1 項なのか n 項なのか)
- 評価が甘くて両端の極限が一致せず、挟めないまま進む
- 被積分関数の単調性を示さずに面積の大小を主張する
なぜ大事か
log n と調和級数の比較など。数IIIの最高難度帯で、理三の合否はここに出る
東大での出方
理三の合否がここに出る、最上位帯のテーマ。単独で出るというより、(1) で不等式を作らせ、(2) でその不等式を使って極限や評価を求めさせる形で出る。誘導の意図を読めるかどうかが問われており、(1) を独立した小問だと思って解くと (2) で行き詰まる。
確認問題
- 上の不等式を使って、Σ[k=1..n] 1/k が n → ∞ で発散することを示せ
- 0 < ∫[0→1] xⁿ/(1+x) dx < 1/(n+1) を示し、n → ∞ の極限を求めよ
- Σ[k=1..n] 1/√k と 2√n の大小を、同じ方法で比較せよ
発展
和と積分の差そのものを評価する(オイラー・マスケローニ定数に繋がる話)。高校範囲では定数の存在までは示せないが、差が単調で有界であることは示せる。東大の最難問はこの一歩手前まで踏み込んでくる。
前提になるノード
このノードを前提にするノード
「積分法」のノード
- 不定積分の基本形(微分の逆)
- 置換積分(型の判別)
- 部分積分(何を微分側に置くか)
- 有理関数の積分(部分分数分解)
- 三角関数の積分(次数下げ・積和・t=tan(x/2))
- 無理関数の積分(√(a²-x²) 型の三角置換)
- 定積分の性質(偶奇・周期・区間の対称性)
- 定積分と漸化式(I_n を n で結ぶ)
- 積分で定義された関数の微分(微積分学の基本定理)
- 区分求積法
- 積分と不等式(面積比較・評価)
解説は自作です。誤りに気づいたら お問い合わせ(/contact/)から教えてください。