定積分と漸化式(I_n を n で結ぶ)
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要点
I_n = ∫ (n を含む式) の形の定積分は、直接計算しようとしても n が一般のままでは原始関数が書けない。そこで部分積分を1回だけ行い、I_n を I_{n-1} や I_{n-2} で表す関係式(漸化式)を作る。個別の値を求めるのではなく、値どうしの関係を作ってから初期値で下ろす、という発想の転換がこの単元の全てである。さらに東大はここで止めず、作った漸化式から不等式評価や極限へ繋げてくる。
こんなときに使う
- 積分の中に自然数 n が指数として入っている(sinⁿx, xⁿeˣ, (log x)ⁿ など)→ 漸化式を作る
- 『I_n を I_{n-2} で表せ』という誘導がある → 部分積分ほぼ確定
- (1) で漸化式を作らせ (2) で極限 → 最後ははさみうち
- n乗の積分で n が偶数か奇数かで答えが変わりそう → 2つ飛びの漸化式(I_n と I_{n-2})
手順
- 1. I_n を定義通りに書き、部分積分の形に分ける(何を微分側・積分側に置くかを決める)
- 2. 一度部分積分し、出てきた積分を I_{n-1} または I_{n-2} の形に整理する
- 3. 整理の途中で sin²x = 1 - cos²x などを使い、同じ I_n が右辺に現れたら移項してまとめる
- 4. 初期値 I_0, I_1 を直接計算する
- 5. 漸化式を繰り返し適用して一般項を出す(n の偶奇で分かれることが多い)
- 6. 極限が問われていれば、0 ≦ I_n ≦ (評価しやすい式) を作ってはさみうち
例題
I_n = ∫[0→π/2] sinⁿx dx (n は 0 以上の整数) について、I_n を I_{n-2} で表し、lim[n→∞] I_n を求めよ。
解答
- n ≧ 2 とする。sinⁿx = sinⁿ⁻¹x · sinx と分け、sinx を積分側に取る。
- I_n = [-sinⁿ⁻¹x · cosx]₀^(π/2) + ∫[0→π/2] (n-1)sinⁿ⁻²x · cos²x dx
- 第1項は x = π/2 で cos = 0、x = 0 で sinⁿ⁻¹ = 0 (n ≧ 2) より 0。
- cos²x = 1 - sin²x を代入すると
- I_n = (n-1)∫[0→π/2] sinⁿ⁻²x dx - (n-1)∫[0→π/2] sinⁿx dx = (n-1)I_{n-2} - (n-1)I_n
- 移項して n·I_n = (n-1)I_{n-2}、すなわち I_n = ((n-1)/n) I_{n-2}
- 初期値は I_0 = π/2、I_1 = 1。
- 極限について:0 ≦ x ≦ π/2 で 0 ≦ sinx ≦ 1 だから sinⁿ⁺¹x ≦ sinⁿx、よって I_n は単調減少で I_n > 0。
- 漸化式より I_n = ((n-1)/n)I_{n-2} で、係数 (n-1)/n < 1 が掛かり続ける。
- n·I_n·I_{n-1} = (n-1)I_{n-2}·I_{n-1} より数列 n·I_n·I_{n-1} は一定で、I_1·I_0·1 = π/2。
- よって I_n·I_{n-1} = π/(2n) → 0。I_n は単調減少で正だから I_n² ≦ I_n·I_{n-1} = π/(2n) → 0。
- ∴ lim[n→∞] I_n = 0
別解・ほかの見方
- 部分積分を2回使って元の I_n に戻し、移項して解く型(eˣsinx の積分など)
- 積分の中身を評価してから積分する(漸化式を作らずに、はさみうちだけで極限を出す)
- 置換で別の漸化式に化ける場合がある。x → π/2 - x の置換で cosⁿx の積分と等しいことが分かる
- (log x)ⁿ 型は log を微分側に置くのが定石。xⁿeˣ 型は xⁿ を微分側に置く
落とし穴
- 部分積分で微分側・積分側の選択を誤り、次数が下がらない
- 漸化式は作れたが、初期値 I_0 と I_1 の両方を出さない(偶奇で必要)
- 極限で『(n-1)/n < 1 だから 0 に収束する』と書いてしまう(1に近づく係数を無限回掛けても 0 とは限らないので、評価が必要)
- はさみうちの下側 0 ≦ I_n を書かない
- 移項が必要な形で、右辺に出た I_n を見落として計算を続ける
- 漸化式は作れても最後の極限評価(はさみうち)に繋げられない
なぜ大事か
東大の頻出構造。部分積分でI_nとI_{n-2}を結び、極限や不等式へ繋ぐ
東大での出方
東大が構造的に好むテーマ。(1) 漸化式を作らせ、(2) 不等式を示させ、(3) その不等式で極限を出す、という3段の誘導で出る。誘導を使わずに解こうとすると詰まるように設計されているので、前問の結果を必ず使う。
確認問題
- J_n = ∫[0→1] xⁿeˣ dx について J_n を J_{n-1} で表し、lim[n→∞] J_n を求めよ
- K_n = ∫[1→e] (log x)ⁿ dx について漸化式を作れ
発展
漸化式から一般項を出さずに、不等式評価だけで極限の速さ(何のオーダーで 0 に近づくか)を求める問題。理三の最上位帯。
前提になるノード
このノードを前提にするノード
「積分法」のノード
- 不定積分の基本形(微分の逆)
- 置換積分(型の判別)
- 部分積分(何を微分側に置くか)
- 有理関数の積分(部分分数分解)
- 三角関数の積分(次数下げ・積和・t=tan(x/2))
- 無理関数の積分(√(a²-x²) 型の三角置換)
- 定積分の性質(偶奇・周期・区間の対称性)
- 定積分と漸化式(I_n を n で結ぶ)
- 積分で定義された関数の微分(微積分学の基本定理)
- 区分求積法
- 積分と不等式(面積比較・評価)
解説は自作です。誤りに気づいたら お問い合わせ(/contact/)から教えてください。