未知を既知に帰着させる(言い換えの技術)
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要点
東大は初見の設定を出してくる。しかしその中身は、ほぼ必ず既習の型である。だから問題文の言葉のまま処理しようとすると手が止まり、設定を剥がして『これは何の問題か』を見抜けば、すでに持っている道具で解ける。この翻訳作業こそが受験数学の最上位の技術であり、パターン暗記だけで来た人が最後に止まるのもここである。逆に言えば、翻訳の引き出しを増やすことが、そのまま得点力になる。
こんなときに使う
- 見たことのない設定 → 装飾を剥がし、何を求めるのかだけを抜き出す
- 『〜が存在する』→ 方程式の解の存在条件(判別式・値域)に翻訳
- 『すべての〜で成り立つ』→ 最小値・最大値の問題に翻訳
- 図形の条件 → 座標・ベクトル・複素数・面積のどれかに翻訳
- 数えにくい → 1対1に対応する別のものを数える
- 規則が見えない → n = 1, 2, 3 で実験する
手順
- 1. 問題文から装飾(物語・ゲーム・実験の設定)を全部剥がす
- 2. 何が変数で、何が定数で、何を求めるのかを書き出す
- 3. 条件をすべて数式にする
- 4. 『これは何の型か』を判定する(解の存在条件/最大最小/数え上げ/漸化式)
- 5. 既知の型に落ちたら、その型の手順で処理する
- 6. 落ちなければ、小さい場合を実験して構造を探す
例題
1辺の長さが 1 の正三角形 ABC の内部の点 P から、3辺に下ろした垂線の長さをそれぞれ p, q, r とする。p + q + r の値を求めよ。
解答
- 垂線の足の位置を求めようとすると、点 P の座標を置くことになり計算が重くなる。
- しかしこの問題は、幾何の問題ではなく面積の問題に翻訳できる。
- 【翻訳】点 P と各頂点を結ぶと、三角形 ABC は3つの三角形に分割される。
- △PBC、△PCA、△PAB
- この3つの面積の和が、元の三角形の面積に等しい。
- 各三角形について、底辺は正三角形の1辺(長さ 1)、高さがそれぞれ p, q, r。
- (1/2)·1·p + (1/2)·1·q + (1/2)·1·r = (正三角形 ABC の面積)
- 正三角形の面積は (√3/4)·1² = √3/4 なので
- (1/2)(p + q + r) = √3/4
- ∴ p + q + r = √3/2
- 【要点】P がどこにあっても値が変わらない(一定である)ことが結論。
- 座標を置いて計算しても出せるが、面積に翻訳すれば3行で終わる。
- 『長さの和』を『面積の和』に読み替えた、という一点がこの問題の全て。
- 検算:P が重心のとき、p = q = r = 内接円の半径 = √3/6。
- 3倍して √3/2 ○
別解・ほかの見方
- 図形 → 座標(計算で押し切る)/ベクトル(内積で角と長さ)/複素数(回転が絡むとき)/面積・体積(和が一定のとき)
- 数え上げ → 1対1対応(最短経路を『右と上の並べ方』に読み替える等)
- 『存在する』→ 判別式、値域、中間値の定理
- 『一定である』→ 具体的な位置で値を求めて予想し、一般に示す
- 整数 → 合同式・因数分解・評価のどれかに翻訳
落とし穴
- 問題文の言葉のまま処理しようとして、計算が膨張する
- 設定に引きずられ、本質でない部分を丁寧に計算してしまう
- 既知の型に落ちているのに気づかず、一から考え直す
- 翻訳した先の条件が、元の条件と同値でない(必要条件だけになっている)
- 実験を飛ばして、いきなり一般の議論を始める
- 問題文の言葉のまま処理しようとする
なぜ大事か
東大は初見の設定を出すが、中身は必ず既習の型。設定を剥がして何の問題かを見抜く作業が本体
東大での出方
東大の問題は『初見の設定 × 既習の型』という設計で作られている。誘導が薄い年ほどこの力が要求され、逆に誘導が丁寧な年は、その誘導自体が翻訳の道筋を示している。過去問を解くときは、答えが合ったかよりも『何に翻訳したか』を記録していくと蓄積になる。
確認問題
- 正四面体の内部の点から4つの面に下ろした垂線の長さの和は一定であることを示せ(体積で翻訳する)
- n 個のさいころを同時に投げたとき、出た目の最大値が k である確率を求めよ(『最大値 ≦ k』から引く)
- 整数 x, y が x² + y² = z² を満たすとき、x, y の少なくとも一方は偶数であることを示せ(mod で翻訳する)
発展
翻訳の候補が複数あるとき、どれが最も軽いかを事前に見積もる判断。座標・ベクトル・複素数のどれで書くかで計算量が数倍変わることがあり、書き始める前に30秒考える価値がある。
前提になるノード
このノードを前提にするノード
「メタ技能」のノード
- 実験する手癖(n=1,2,3 を書き出す)
- 対称性を利用して場合を減らす
- 極限の3種の神器(はさみうち・区分求積・漸化式評価)
- 未知を既知に帰着させる(言い換えの技術)
- 場合分けを漏らさない・同値性を保つ記述
- 減点されない答案の書き方
- 計算の設計と検算(次数・単位・特殊値)
- 150分の運用(大問の選択と撤退の判断)
解説は自作です。誤りに気づいたら お問い合わせ(/contact/)から教えてください。