旧帝大の医学部を目指すロードマップ
北海道大、東北大、東京大(理科三類)、名古屋大、京都大、大阪大、九州大の医学部医学科に向けた進め方です。ほかのページの計画は、志望校を決めていない人にも当てはまる共通の流れでした。このページは、旧帝大の入試の作りから逆算して、何を前倒しし、何を後回しにしてよいかを書いたものです。月ごとの細かい割り振りは月ごとの計画で志望校を旧帝大にして見てください。
旧帝大の医学部は、点数のほとんどが二次試験にあります。共通テストは配点が1割前後から2割弱で、役割は二次に進むための足切りと、ほんの少しの上乗せです。だから勝負は、数学、理科、英語の記述の完成度で決まります。共通テストは捨てられませんが、ここで満点に近づける努力より、二次の答案が書ける状態を早く作るほうに時間を使うのが、このページの基本の判断です。
7校の比較
配点と科目は2026年度版の予備校の解説記事1件からまとめたものです。同じ大学でも記事によって配点の数字が違うことがあり、たとえば大阪大は共通テスト500点・二次1500点とする記事もあります。共通テストの点を圧縮して換算するなど、数え方の違いが原因とみられますが、確かめていません。比率と科目の傾向をつかむための表として使い、数字は必ず募集要項で確認してください。
| 大学 | 共通テスト | 二次 | 二次の科目 | 合格最低点の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 北海道大 | 100点(約12%) | 725点 | 英語・数学・理科2科目。国語なし | 約80% | 二次で85〜90%を取る戦い。英語は形式対策が要る |
| 東北大 | 200点(約18%) | 900点 | 英語・数学・理科2科目。国語なし | 公表なし | 穴のない網羅学習が試される。共通テストの比重が旧帝大では高め |
| 東京大(理科三類) | 110点(約20%) | 440点 | 英語・数学・理科2科目・国語 | 約72% | 全科目で最高水準の理解が要る。共通テストは6教科8科目 |
| 名古屋大 | 250点(約9%) | 2500点 | 英語・数学・理科2科目。国語なし | 約79% | 問題は東大・京大に次ぐ難しさだが、合格最低点は低め |
| 京都大 | 150点(約12%) | 1125点 | 英語・数学・理科2科目・国語 | 約74% | 国語、英語、数学が特殊な形式で、専用の対策が要る |
| 大阪大 | 200点(約10%) | 1800点 | 英語・数学・理科2科目。国語なし | 約74% | 骨のある良問が多い。二次の比重が大きい |
| 九州大 | 100点(約9%) | 1075点 | 英語・数学・物理・化学。国語なし | 約83% | 典型問題で高得点を取り合う。生物選択では受けられない |
7校すべてで面接があります。国語を二次に課すのは東大と京大だけです。九州大は理科が物理と化学に固定なので、生物で受験するつもりの人は、高2までに理科の選択を考え直す必要があります。
共通テストの目標
旧帝大の医学部は、共通テストの得点率が85%を超えることがほとんどの資料で目安とされ、東大と京大は90%前後です。ただし配点が小さいので、二次で取り返せる範囲は広く、共通テストで8割台でも二次で逆転する人はいます。目標は、苦手科目で大きく落とさず、9割を安定して取れる状態です。国語と社会(地歴公民)、情報の失点は、二次で使わない大学が多いぶん対策が遅れやすいので、高2の冬に現状を知っておくと安心です。
学年ごとの進め方
高1:土台と前倒し
- 数学は学校より先に進み、高1の終わりまでに数学IAと数学IIBの基本を終える。計算の正確さと速さが、二次の記述で最後まで効く
- 英語は単語と文法を固め、構文を読めるようにする。英作文と和訳の添削を受け始める(旧帝大の英語は記述が中心)
- 理科は、物理か生物かの選択を決める目安を持つ。九州大を考えるなら物理と化学。ほかの大学は、学校で選べる範囲と、独学で補える教材の有無で決める
- 定期テストの内申点は、一般選抜では直接使われないが、推薦や評定が必要な手続きのために落とさない
高2:全範囲を終える
- 数学IIIとCを夏休みで一気に進め、高2のうちに数学の全範囲を一通り終える。これが旧帝大向けの最大の前倒し
- 理科は、主要分野を高2の終わりまでに一通り終える。高3で入試演習に入るために、この終わり方が要る
- 英語は、長文を毎日読む習慣と、自由英作文の型を作る
- 共通テストの模試は受けるが、結果は確認程度にとどめ、二次レベルの問題集と、記述の復習に時間を割く
- 高2の冬に共通テスト形式の問題を一度解き、国語と社会の現状を知る
高3の春から夏:二次の記述を作る
- 数学は、入試標準から難関レベルの問題集を、答案を書いて解く。答えが合うかより、論証が途切れていないかを見る
- 理科は、化学と物理(または生物)で、旧帝大の過去問に近い記述問題を時間を計って解く
- 英語は、長文、和訳、英作文をそれぞれ志望校の形式に合わせる。北大は形式対策、京大は専用対策が要る
- 夏のうちに志望校を2〜3校に絞る。配点、科目、問題の性格に合う大学を選ぶ
- 過去問を10年分ほど解く計画を立てる。初めは解けなくてよい。難しさを早めに体感しておく
高3の秋:過去問と共通テストの両立
- 志望校の過去問を、本番と同じ時間で解き、答案を学校や塾の先生、先輩に見てもらう。採点基準に合わせて、部分点が取れる書き方に直す
- 共通テスト対策は、10月から少しずつ増やし、12月に本格化する。二次の記述を切らさないよう、週のうち数日は二次の問題に戻る
- 面接は、志望理由と、医師になって何をしたいかを自分の言葉で話せるようにする。地域や地方の医療に結びつく経験があると話しやすい
- 出願校の最終判断は、共通テストの結果が出た1月に、二次の得点力と合わせて決める
高3の冬から本番
- 1月は共通テストの振り返りと、出願先の決定。ここで二次の過去問に戻る
- 2月は、志望校の直近の過去問と、類題の仕上げ。新しい教材には手を出さない
- 旧帝大の医学部は前期の二次が本番。後期を行うかどうかは、募集要項で確認する
既卒の場合
春までに、現役のときの失点を科目ごとに洗い出し、数学と理科の抜けた単元を埋めます。夏までに記述の演習を現役より多くこなし、秋からは過去問に集中します。既卒は共通テストが安定しやすいぶん、二次の完成度で差がつきます。
地方の高校から受けるときに
九州から近く現実的な旧帝大は九州大です。理科が物理と化学に固定なので、生物選択の人は早めに切り替えを考えます。九州の公立高校では、数学IIIの前倒しや記述の添削が学校だけでは足りないことがあります。そのときは、通信教育や、オンラインの添削、先輩に答案を見てもらうことで補います。教材の選び方は科目別の段階と教材に、答案の書き方は答案のページにあります。数学の単元の前提関係は、東大理三 数学マップに、つながり図と習得テストでまとめてあります。東大理三向けに作ったものですが、旧帝大の数学の抜けを探すのにも使えます。地域枠との併願は九州の地域枠のページを見てください。
入学してから待っている世界
受験の先に何があるかを知っておくと、志望校の選び方が変わります。旧帝大の医学部は、どこも6年間で医師国家試験の受験資格を得る点は同じですが、住む街、キャンパスの配置、卒業後の動き方に違いが出ます。お金の面では、家賃と生活費の差がそのまま地方出身者の負担の差になります。国立の学費は低く抑えられていますが、一人暮らしの費用は市場の価格で決まるので、街によって総額が変わります。この違いも、志望校を選ぶときの条件として書いておきます。
6年間の流れ
- 1年次は教養教育。医師としての基本的な知識や倫理、人間性を学ぶ。大学によっては医学部とは別のキャンパスに通う
- 1年次から3年次にかけて基礎医学。解剖、生理、生化学など、医学の土台になる科目が続く
- 3年次から4年次にかけて臨床医学へ移る。診断や治療の講義と実技が始まる
- 4年次に共用試験(CBTと、臨床実習の前のOSCE)を受ける。合格するとスチューデント・ドクターの称号が与えられ、患者さんの診療に参加する臨床実習に進める
- 4年次の終わりから6年次にかけて臨床実習。病院の各診療科を回る。この時期に、卒業後の進路を決めていく
- 6年次に卒業試験と医師国家試験。ここまでが入学後の6年間
基礎医学の期間は、授業と試験が多く、覚える量が増えます。入試のあとにも、学びの山が3回あると考えておくとよいです。
学費と、旧帝大の立地
国立大学の医学部は、入学金が28万2000円、授業料は年53万5800円が標準で、6年間でおよそ350万円です。2025年度には東京大が授業料を年64万2960円に上げました。ほかに、教科書代、実習の費用、一人暮らしの家賃と生活費がかかります。一人暮らしの費用は、全国大学生協連の第60回調査(2024年秋)で、下宿生の家賃と共益費が月5万6090円が全国平均です。名古屋大の下宿生の住居費を月5万6110円とする生協の資料もありますが、年度は確認できていません。ほかの大学の街別の数字は確認できていません。
| 大学 | 医学科のある街 | わかっていること |
|---|---|---|
| 北海道大 | 札幌 | 北海道の中心都市。冬が長い。医学科は札幌キャンパスで、1年次は全学教育(教養)を受ける。2年次以降の移動の有無は記事のみで、確認していない |
| 東北大 | 仙台 | 1年次は川内北キャンパス(全学部共通)、2年次以降は星陵キャンパス(医・歯学部)。地下鉄で通える距離だが、キャンパスは別 |
| 東京大 | 東京 | 理科三類で入学し、2年生まで駒場キャンパスで教養学部の授業を受け、進学選択で医学部医学科に進む。医学部の在籍は3年生から、本郷キャンパス |
| 名古屋大 | 名古屋(鶴舞地区) | 医学科は鶴舞地区。保健学科は別の大幸地区にある |
| 京都大 | 京都 | 吉田キャンパスの中に、教養の吉田南構内と、医学部構内がある。医学科1年次の通学先は確認できていない |
| 大阪大 | 吹田(大阪府) | 1年次と2年次の前半は豊中キャンパス、2年次から吹田キャンパス。大学の受験情報の記載で、学生便覧では未確認 |
| 九州大 | 福岡 | 1年次は福岡市西区の伊都キャンパス、2年次からは福岡市東区の馬出の病院キャンパス。1年次と2年次以降で通学先が変わるので、住まいを選ぶときは注意が要る |
1年次の通うキャンパスや、住まいの探し方は大学ごとに違います。名古屋大の1年次の通学先だけ、確認できていません。
卒業後の進路
医学部を出た人の多くは、医師として働きます。医師免許を取ってすぐに、2年間の初期臨床研修を受けます。そのあと、専門の診療科を選んで、3年間の専門研修(専攻医)に進み、専門医の資格を目指します。つまり、卒業後の5年間は研修の期間で、一人前の専門医になるのは、入学から11年ほど先です。
- 初期研修の病院は、マッチングという仕組みで決まる。学生と病院が希望を出し合い、組み合わせが決まる。2025年は研修医8910人のうち、一般の臨床研修病院が64.8%、大学病院が35.2%だった。大学病院の割合は、近年は少しずつ下がっている
- つまり、母校の大学病院に残る人は3割台で、残りは市中の大きな病院で研修を受ける。旧帝大の大学病院でどれだけが自大学卒かは、下の表に書いた
- 専門研修のあとの働き方は、大学病院で診療と研究と教育を続ける、市中や地域の病院で診療に専念する、開業する、大学や研究機関で研究者になる、厚生労働省など行政で働く、製薬会社など企業で働く、などに分かれる
- 旧帝大の医学部は研究の場としての色が濃く、研究の道に進みたい人に向く環境があるとされるが、研究に進む人の割合は、数字では確かめていない
入学後の違い、確認できた範囲
母校の大学病院で初期研修を受ける人の割合、研究室に入る制度、留学の機会を、大学ごとに並べました。確認できたものだけを書き、できなかった欄は未確認としています。
| 大学 | 大学病院の研修医に占める自大学卒 | 研究室に入る制度 | 留学の機会 |
|---|---|---|---|
| 北海道大 | 約39%(5年分の平均) | 次世代基礎研究医の継続的養成プログラムがある。時期は未確認 | 5年次の選択臨床実習4週間で、ハンブルク大、シンガポール国立大、南洋理工大へ。2026年度は各校2名、計6名まで、1人あたり20万円まで補助。応募の目安はGPA3.0以上、CBT550以上、IELTS6.5など英語の成績 |
| 東北大 | 約38% | 世界で競い合うMD研究者育成プログラム。ほかに、3年次修了後に大学院に進むMD-MC-PhDコースが2015年度からある | 未確認 |
| 東京大 | 約19% | 未確認 | 未確認 |
| 名古屋大 | 約28% | MD・PhDコースがある。学部の配属は未確認 | 6年次の臨床実習を海外の提携校で受けられる。提携校は19校とされるが、掲載年が古い可能性がある |
| 京都大 | 約38% | MD研究者育成プログラムがある。時期は未確認 | 英語による医学・生物学の講義がある。留学制度は未確認 |
| 大阪大 | 約27% | 1年次前期は全員が基礎医学体験実習。1年次後期から希望者は学生研究員コース。3年次前期からMD研究者育成プログラムで研究室に所属し、6年次後期に修了発表。修了すると選択15単位。正規カリキュラムにも、3年次後期に3か月の基礎医学講座配属、5年次後期に2か月の研究室配属がある | MD研究者育成プログラムの参加者は、国内外の短期留学と学会参加を支援される |
| 九州大 | 約27% | MD-PhDコース。4年次修了後に休学して大学院で博士課程に進み、修了後に5年次へ戻る | 6年次に1か月、アジア、欧米の大学との交換留学がある。掲載年が古い可能性がある |
自大学卒の割合は、各大学病院がマッチングで採った研修医のうち、自大学の卒業生だった割合の、サイトに並ぶ5年分の平均です。卒業生のうち何割が母校に残るかではなく、分母が違います。1年ごとに10〜20ポイント動く病院もあり、年によってぶれます。北海道、東北、京都は4割弱で、東京は2割を切ります。東北大病院には全国のさまざまな大学の出身者が研修に来ています。
地方から旧帝大に進み、のちに地元に戻って働く道もあります。そのとき、地域枠の修学資金を借りた人は、卒業後の勤務先が決まっています。借りない場合は自分で選べますが、地元の病院の医師不足の話と、自分の専門を深められる環境のどちらを優先するかは、卒業の近づく臨床実習の頃に考えることになります。
まだ確かめられていないこと
- 7校の配点と科目は予備校の記事1件が元で、他の記事と数字が違う大学がある。募集要項で確認する必要がある
- 合格最低点の目安は年度によって変わる。上の数字は一つの年度のものとみられる
- 各大学の数学、英語、理科の出題傾向(形式、時間、頻出分野)は、このページではまだ書いていない。過去問を分析して、大学ごとのページにするのが次の作業
- 初期研修先は、大学ごとの内訳(市中病院のどこに行くか)を確認できていない。母校の割合も、卒業生の何割が残るかではなく、大学病院の研修医に占める割合
- 家賃と生活費は、全国平均と名古屋大の1件のみ。街別の差は未確認
- 名古屋大の1年次のキャンパス、東京大、京都大、名古屋大の研究室に入る制度の詳細、東北大、東京大、京都大の留学制度は未確認
- 北海道大と東北大の研究室に入る制度、九州大と名古屋大の留学制度は、大学の公式ページではなく、検索結果の要約で確認したもの
- 後期日程の有無、2027年度の入試方式の変更は未確認
- 学年ごとの進め方は、配点の構造と、これまでのページの調査から組んだもので、旧帝大の合格者の学習記録で検証したものではない
出典
- 医師臨床研修マッチング 2025年の結果(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001582971.pdf
- 九州大学 医学部の紹介(キャンパス配置) https://search.keinet.ne.jp/1405/outline/campus
- 名古屋大学 医学への道(キャンパス配置) https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/about/pdf/igakuhenomichi2027.pdf
- 国立医学部の学費(アガルート医学部) https://www.agaroot.jp/agaroot-medical/column/tuition/
- 医学部の6年間のカリキュラム(神戸大学医学部の資料ほか) https://www.med.kobe-u.ac.jp/education/sm/curriculum/docs/curriculum.pdf
- 大学病院(施設別)における自大学出身者の比率(C-MEC) https://c-mec.jp/square/matching_top/own-university-ratio/
- 大阪大学 MD研究者育成プログラム 令和4年度概要 https://www.med.osaka-u.ac.jp/wp-content/uploads/2022/05/MD_program_2022.pdf
- 北海道大学医学部 海外臨床実習派遣の説明会資料(2025年6月) https://edu.med.hokudai.ac.jp/international-relations/wp/wp-content/uploads/2025/06/250604海外派遣説明会.pdf
- 東北大学のキャンパス配置(河合塾Kei-Net) https://search.keinet.ne.jp/1050
- 大阪大学のキャンパス配置(河合塾Kei-Net) https://search.keinet.ne.jp/1295/outline/campus
- 第60回学生生活実態調査 概要報告(全国大学生協連) https://www.univcoop.or.jp/press/life/pdf/pdf_report60.pdf
- 名古屋大学医学部 国際交流(交換留学) https://www.med.nagoya-u.ac.jp/intlexch/japanese/education/index.html
- 旧帝大医学部の難易度と入りやすさ(2026年7月23日更新) https://shotosha.com/medical-school/information-by-university/teidai-med
- 共通テストと二次試験、どちらが重い?2027年度の旧帝大7校を配点で比較(2026年9月3日更新。医学部の表はなし) https://www.yotsuyagakuin.com/b_geneki/kyuteidai-common-test-second-exam-2027/
- 旧帝大対策完全ガイド https://onikanri.singeki.com/kyutei-guide/
- 国公立医学部合格最低点からわかる二次試験得点率 https://melurix.co.jp/blog/info/medical/c955
- 大阪大学医学部の科目別の入試傾向 https://www.pamda.info/newfront/med-expert-course/osaka-med-trends/