高校物理 要点・解法ノート
物理基礎・物理を、要点・例題・確認問題でまとめた持ち運び用ノート。ネット不要・この1ファイルだけで開ける。
すべての項目に3段階の線引き
必須共通テスト〜地方国公立の基本。ここが抜けると他が崩れる。
差がつく合格ラインを超えるための型。必須が固まってから。
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等加速度直線運動と落体
速度・加速度の定義、等加速度直線運動の3公式、v-tグラフの読み方、落体。すべての力学の土台になる単元。
速度と加速度
着眼点直線上ではまず「正の向き」を決める。速度と変位は向きを含む量(符号つき)、速さと道のりは向きを含まない量。
\bar v=\frac{\Delta x}{\Delta t}=\frac{x_2-x_1}{t_2-t_1}使う場面: 平均の速度を問われたとき。\Delta t を小さくした極限が瞬間の速度(x-tグラフの接線の傾き)。
平均の速さ=道のり÷時間。往復があると平均の速度とは一致しない。
例題
1東向きを正とする。物体が東へ 30\ \mathrm{m} を 10\ \mathrm{s} で進み、続けて西へ 10\ \mathrm{m} を 5.0\ \mathrm{s} で戻った。全体の平均の速度を有効数字2桁で求めよ。
解答
変位は +30-10=+20\ \mathrm{m}、時間は 15\ \mathrm{s}。\bar v=\frac{20}{15}=1.33\cdotsよって 東向きに 1.3\ \mathrm{m/s}
解答
道のりは 30+10=40\ \mathrm{m}。40/15=2.66\cdots より 2.7\ \mathrm{m/s}(平均の速度と違う値になる)
注意答えに向きを書き忘れない。「速度を求めよ」なら「東向きに〜」か符号つきで答える。
確認問題
1一周 400 m のトラックを 80 s で一周した。平均の速度の大きさは。
答え
0\ \mathrm{m/s}(変位が0だから。平均の速さは 5.0 m/s)
着眼点加速度は「速度の変化÷時間」。速度が減るとき、反対向きに動き出すときは負になる。
a=\frac{\Delta v}{\Delta t}=\frac{v_2-v_1}{t_2-t_1}単位は \mathrm{m/s^2}。v-tグラフの傾きにあたる。
例題
1一直線上を運動する物体の速度が、3.0\ \mathrm{s} 間で 2.0\ \mathrm{m/s} から 8.0\ \mathrm{m/s} になった(向きは同じ)。加速度を求めよ。
解答
a=\frac{8.0-2.0}{3.0}=2.0\ \mathrm{m/s^2}運動の向きに 2.0\ \mathrm{m/s^2}
2東向きに 12\ \mathrm{m/s} で動いていた物体が、2.0\ \mathrm{s} 後に西向きに 4.0\ \mathrm{m/s} で動いていた。この間の平均の加速度を求めよ。
解答
東向きを正とすると v_1=+12,\ v_2=-4.0。a=\frac{-4.0-12}{2.0}=-8.0\ \mathrm{m/s^2}西向きに 8.0\ \mathrm{m/s^2}
注意「減速=加速度が負」とは限らない。負の向きに進みながら減速していれば加速度は正。符号は正の向きとの比較で決まる。
着眼点与えられた量と求める量を見て、使わない量が入っていない式を選ぶ。時間が出てこないなら3本目。
v=v_0+atx=v_0t+\frac12at^2v^2-v_0^2=2ax導出の一言: 1本目は加速度の定義そのもの。2本目はv-tグラフの台形の面積。3本目は1・2本目から t を消したもの。
| 使わない量 | 使う式 |
|---|
| x(変位) | v=v_0+at |
| v(後の速度) | x=v_0t+\frac12at^2 |
| t(時間) | v^2-v_0^2=2ax |
例題
1初速度 4.0\ \mathrm{m/s}、加速度 2.0\ \mathrm{m/s^2}(同じ向き)で運動する物体の、3.0\ \mathrm{s} 後の速度と、その間の変位を求めよ。
解答
v=4.0+2.0\times3.0=10\ \mathrm{m/s}
x=4.0\times3.0+\frac12\times2.0\times3.0^2=12+9.0=21\ \mathrm{m}
速度 10\ \mathrm{m/s}、変位 21\ \mathrm{m}(検算: 平均の速度 (4+10)/2=7 に 3.0\ \mathrm{s} を掛けても 21\ \mathrm{m})
220\ \mathrm{m/s} で走る車がブレーキをかけ、一定の加速度の大きさ 5.0\ \mathrm{m/s^2} で減速して止まった。止まるまでに進む距離と時間を求めよ。
解答
進む向きを正にすると a=-5.0。時間がわからないので3本目: 0^2-20^2=2\times(-5.0)\times x\ \Rightarrow\ x=40\ \mathrm{m}時間は 0=20-5.0t より t=4.0\ \mathrm{s}。
40\ \mathrm{m}、4.0\ \mathrm{s}
注意減速は a を負で代入する。「加速度の大きさ 5.0」をそのまま +5.0 で入れると、止まらない計算になる。
確認問題
1静止から一定の加速度で動き出し、4.0\ \mathrm{s} で 16\ \mathrm{m} 進んだ。加速度は。
答え
16=\frac12a\times4.0^2 より a=2.0\ \mathrm{m/s^2}
210\ \mathrm{m/s} から 2.0\ \mathrm{m/s^2} で加速して 30\ \mathrm{m/s} になるまでの距離は。
答え
30^2-10^2=2\times2.0\times x より x=200\ \mathrm{m}(2.0\times10^2\ \mathrm{m})
着眼点v-tグラフが与えられたら、公式より先に「傾き」と「面積」を見る。t軸より下の面積は負の変位。
- 傾き=加速度(右上がりなら正)
- グラフとt軸の間の面積=変位(t軸より下は負)
- 道のりは、下側の面積も正として足す
- v=0 の点(t軸と交わる点)が折り返し点
例題
1静止から 4.0\ \mathrm{s} 間で一定の割合で 8.0\ \mathrm{m/s} まで加速し、そのまま 6.0\ \mathrm{s} 等速で進み、最後に 2.0\ \mathrm{s} で一定の割合で減速して止まった。各区間の加速度と、全体の移動距離を求めよ。
解答
グラフは台形になる。
加速度: 8.0/4.0=2.0\ \mathrm{m/s^2}、0、-8.0/2.0=-4.0\ \mathrm{m/s^2}
距離(面積): \frac12\times4.0\times8.0+6.0\times8.0+\frac12\times2.0\times8.0=16+48+8.0=72\ \mathrm{m}
2.0,\ 0,\ -4.0\ \mathrm{m/s^2}、72\ \mathrm{m}
2初速度 6.0\ \mathrm{m/s}、加速度 -2.0\ \mathrm{m/s^2} で運動する物体について、0\sim5.0\ \mathrm{s} の変位と道のりを求めよ。
解答
v-tグラフは (0,6.0) から傾き -2.0 の直線で、t=3.0\ \mathrm{s} で t軸と交わる(折り返し)。
0\sim3.0\ \mathrm{s} の面積: \frac12\times3.0\times6.0=9.0\ \mathrm{m}
3.0\sim5.0\ \mathrm{s} の面積: t=5.0 で v=-4.0 なので -\frac12\times2.0\times4.0=-4.0\ \mathrm{m}
変位 5.0\ \mathrm{m}、道のり 13\ \mathrm{m}(検算: x=6.0\times5.0-\frac12\times2.0\times5.0^2=30-25=5.0)
ポイント生徒にはまず手でv-tグラフを描かせる。式だけで解くより、折り返しに気づきやすい。
注意道のりを x=v_0t+\frac12at^2 で一気に出すと、折り返しがあるとき間違える(それは変位)。
着眼点x-tグラフは接線の傾き=速度。等加速度なら放物線で、頂点が折り返し点。a-tグラフは面積=速度の変化。
- x-t: 直線なら等速、放物線なら等加速度。下に凸なら a>0、上に凸なら a<0。
- v-t: 傾き=加速度、面積=変位。
- a-t: 面積=速度の変化。
グラフ間の変換は「傾きを取ると次へ(x→v→a)、面積を取ると戻る(a→v→x)」。
例題
1位置が x=8.0t-2.0t^2\ (\mathrm{m}) で表される運動の、初速度・加速度・折り返す時刻と位置を求めよ。
解答
x=v_0t+\frac12at^2 と見比べて v_0=8.0\ \mathrm{m/s}、\frac12a=-2.0 より a=-4.0\ \mathrm{m/s^2}。
折り返しは v=8.0-4.0t=0 より t=2.0\ \mathrm{s}、位置 x=16-8.0=8.0\ \mathrm{m}。
初速度 8.0\ \mathrm{m/s}、加速度 -4.0\ \mathrm{m/s^2}、t=2.0\ \mathrm{s}、x=8.0\ \mathrm{m}
注意t^2 の係数がそのまま加速度ではない(係数は \frac12a)。
落体の運動
着眼点初速度0、加速度 g の等加速度運動。下向きを正にすると3公式の v_0=0,\ a=g にするだけ。
v=gt,\quad y=\frac12gt^2,\quad v^2=2gy使う場面: 静かに手を放す、糸を切る、など「初速度0で落ちる」とき。質量によらず同じ運動になる(空気抵抗を無視)。
例題
1物体を静かに放した。3.0\ \mathrm{s} 後の速さと落下距離を求めよ。重力加速度の大きさを g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
v=9.8\times3.0=29.4、y=\frac12\times9.8\times3.0^2=44.1
速さ 29\ \mathrm{m/s}、落下距離 44\ \mathrm{m}
2高さ 19.6\ \mathrm{m} から物体を静かに放した。地面に達するまでの時間と、そのときの速さを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
19.6=\frac12\times9.8\times t^2 より t^2=4.0、t=2.0\ \mathrm{s}。
v=9.8\times2.0=19.6
2.0\ \mathrm{s}、20\ \mathrm{m/s}(検算: v^2=2gy=2\times9.8\times19.6=384.16、\sqrt{384.16}=19.6)
注意問題が g=10\ \mathrm{m/s^2} を指定していたらそちらを使う。答えの有効数字は与えられた数値の桁に合わせる。
着眼点上向きを正にして a=-g。最高点は v=0、投げた点に戻るのは y=0。地面が下にあれば y が負になる時刻を解く。
v=v_0-gt,\quad y=v_0t-\frac12gt^2,\quad v^2-v_0^2=-2gy最高点: t_1=\dfrac{v_0}{g}、高さ H=\dfrac{v_0^2}{2g}。投げた点に戻るのは 2t_1 後で、速さは v_0(向きは逆)。
例題
1地面から鉛直上向きに 19.6\ \mathrm{m/s} で小球を投げ上げた。最高点に達する時刻と最高点の高さを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
0=19.6-9.8t より t=2.0\ \mathrm{s}。
H=\dfrac{19.6^2}{2\times9.8}=19.6
2.0\ \mathrm{s}、20\ \mathrm{m}
2高さ 24.5\ \mathrm{m} のビルの屋上から、鉛直上向きに 19.6\ \mathrm{m/s} で小球を投げ上げた。地面に落ちるまでの時間を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
投げた点を原点、上向き正。地面は y=-24.5。-24.5=19.6t-4.9t^2両辺を 4.9 で割って t^2-4t-5=0、(t-5)(t+1)=0、t>0 より t=5。
5.0\ \mathrm{s}(検算: 19.6\times5-4.9\times25=98-122.5=-24.5)
注意最高点で速度は0だが、加速度は0ではない(ずっと下向きに g)。「最高点で力がつりあう」は誤り。
確認問題
1上の例1で、投げてから地面に戻るまでの時間と、そのときの速度は。
答え
4.0\ \mathrm{s}、下向きに 19.6\ \mathrm{m/s}(有効数字2桁で 20\ \mathrm{m/s})
着眼点下向きを正にして v_0 と a=g が同符号。自由落下に初速度を足しただけ。
v=v_0+gt,\quad y=v_0t+\frac12gt^2
例題
1鉛直下向きに 5.0\ \mathrm{m/s} で投げ下ろした小球の、2.0\ \mathrm{s} 後の速さと落下距離を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
v=5.0+9.8\times2.0=24.6、y=5.0\times2.0+\frac12\times9.8\times2.0^2=10+19.6=29.6
速さ 25\ \mathrm{m/s}、落下距離 30\ \mathrm{m}
着眼点両方とも加速度は同じ g なので、片方から見るともう片方は等速直線運動に見える。距離÷相対速度で一発。
高さ h からAを静かに放すと同時に、真下の地面からBを v_0 で投げ上げる。Aから見たBは速さ v_0 で近づくだけなので、出会う時刻は t=\dfrac{h}{v_0}。
例題
1高さ 20\ \mathrm{m} の点から小球Aを静かに放すと同時に、その真下の地面から小球Bを鉛直上向きに 20\ \mathrm{m/s} で投げ上げた。2球が出会う時刻と、その高さを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
相対速度で考えて t=20/20=1.0\ \mathrm{s}。
高さはBの式で: y=20\times1.0-\frac12\times9.8\times1.0^2=15.1
1.0\ \mathrm{s} 後、高さ 15\ \mathrm{m}(検算: Aは 20-4.9=15.1\ \mathrm{m} で一致)
ポイント式で解くなら、A: y_A=h-\frac12gt^2、B: y_B=v_0t-\frac12gt^2 を等しいとおくと t^2 の項が消える。生徒にはこの「消える」を見せると納得しやすい。
注意出会う前にBが地面に落ちていないかを確認する(t<\dfrac{2v_0}{g} が必要)。
着眼点抵抗力が速さに比例する(kv)とき、速度はやがて一定(終端速度)になる。
終端速度は「重力と抵抗力がつりあう」から mg=kv_f、v_f=\dfrac{mg}{k}。これは1行で出せるので覚えておく。
途中の速度の式 v(t) は微分方程式を解く必要がある。
ポイント後回しでよい理由: 途中の v(t) を求めるには微分方程式が要り、高校の標準的な問題ではまず問われない。例外: 難関大の発展問題では誘導つきで出ることがある。終端速度 mg/k だけはどこを受けても知っておく。
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平面運動・放物運動・相対速度
速度をベクトルとして合成・分解し、放物運動は「水平は等速・鉛直は等加速度」に分けて解く。時刻が水平と鉛直をつなぐ。
速度の合成と相対速度
着眼点平面上の速度はベクトル。直交する2方向に分けると、それぞれ独立に計算できる。
\vec v=\vec v_1+\vec v_2使う場面: 流れのある川を渡る船、風の中を飛ぶ飛行機。岸から見た速度=静水での船の速度+流れの速度。
横断にかかる時間は「岸に垂直な成分」だけで決まる。
例題
1川幅 40\ \mathrm{m}、流れの速さ 3.0\ \mathrm{m/s} の川を、静水での速さ 4.0\ \mathrm{m/s} の船が船首を対岸に垂直に向けて渡る。岸から見た船の速さ、渡るのにかかる時間、下流に流される距離を求めよ。
解答
速さ: \sqrt{4.0^2+3.0^2}=5.0\ \mathrm{m/s}
時間: 垂直成分 4.0\ \mathrm{m/s} だけで決まり 40/4.0=10\ \mathrm{s}
流される距離: 3.0\times10=30\ \mathrm{m}
5.0\ \mathrm{m/s}、10\ \mathrm{s}、30\ \mathrm{m}
2流れの速さ 2.0\ \mathrm{m/s}、川幅 40\ \mathrm{m} の川を、静水での速さ 4.0\ \mathrm{m/s} の船で真向かいの地点へ渡りたい。船首をどちらにどれだけ傾ければよいか。また渡るのにかかる時間を有効数字2桁で求めよ。
解答
船首を対岸の方向から上流側へ \theta 傾けると、上流向きの成分 4.0\sin\theta が流れを打ち消せばよい。4.0\sin\theta=2.0 より \theta=30^\circ。
横断方向の成分は 4.0\cos30^\circ=2\sqrt3\fallingdotseq3.46\ \mathrm{m/s}、時間 40/3.46=11.5\cdots
上流側へ 30^\circ、約 12\ \mathrm{s}
注意「最短時間で渡る」(船首を垂直に)と「最短距離で渡る」(真向かいへ着く)は向きが違う。どちらを聞かれているか先に確認。
着眼点「Aから見たBの速度」は \vec v_B-\vec v_A。見る側(A)を引く。
\vec v_{AB}=\vec v_B-\vec v_A導出の一言: Aと一緒に動く人には、すべての物体がAの速度ぶん逆向きにずれて見える。
平面ではベクトルの引き算=「\vec v_B と -\vec v_A を足す」と考えると作図しやすい。
例題
1東向きに 20\ \mathrm{m/s} で走る車Aから、西向きに 15\ \mathrm{m/s} で走る車Bを見ると、どの向きに何 m/s で動いて見えるか。
解答
東向き正: v_{AB}=v_B-v_A=-15-20=-35
西向きに 35\ \mathrm{m/s}
2無風で鉛直に 5.0\ \mathrm{m/s} で落ちてくる雨を、東向きに 5.0\ \mathrm{m/s} で走る電車の中から見た。雨の速さと向きを求めよ。
解答
雨の速度(下向き 5.0)+電車の逆向きの速度(西向き 5.0)。
大きさ \sqrt{5.0^2+5.0^2}=5.0\sqrt2\fallingdotseq7.1\ \mathrm{m/s}、向きは鉛直から西(電車の後方)へ 45^\circ 傾いた斜め下向き。
7.1\ \mathrm{m/s}、鉛直から後方へ 45^\circ
注意\vec v_A-\vec v_B と逆に引くと向きが反対になる。「見る人を引く」と唱えさせる。
確認問題
1北向きに 3.0\ \mathrm{m/s} で歩く人から、東向きに 4.0\ \mathrm{m/s} で走る自転車を見たときの速さは。
答え
\sqrt{4.0^2+3.0^2}=5.0\ \mathrm{m/s}(向きは東から南へ傾いた向き)
着眼点台の上の人が投げた物体の、地面から見た初速度=台の速度+台から見た初速度。水平方向は台と同じ速さで進み続ける。
等速で動く台車の上から鉛直に投げ上げると、地面からは放物運動に見えるが、水平方向の速度が台車と同じなので、台車の同じ位置に戻る。
例題
1水平に 2.0\ \mathrm{m/s} で等速運動する台車の上から、台車に対して鉛直上向きに 9.8\ \mathrm{m/s} で小球を投げた。小球が投げた高さに戻るまでの時間と、その間に小球が地面に対して水平に動いた距離を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
鉛直: 0=9.8t-4.9t^2 より t=2.0\ \mathrm{s}。
水平: 地面から見た水平の速さは台車と同じ 2.0\ \mathrm{m/s} なので 2.0\times2.0=4.0\ \mathrm{m}。台車も 4.0\ \mathrm{m} 進むので、小球は台車の投げた位置に戻る。
2.0\ \mathrm{s}、4.0\ \mathrm{m}
注意台車が加速しているときは同じ位置に戻らない(台車だけ速度が変わるため)。
放物運動
着眼点水平は等速 v_0、鉛直は自由落下。落下時間は高さだけで決まり、初速度によらない。
x=v_0t,\quad y=\frac12gt^2,\quad v_x=v_0,\quad v_y=gt(y は下向きを正にとる)
使う場面: 机の端から転がり落ちる、水平に投げる。手順は「高さから時間 → 時間から水平距離」。
例題
1高さ 19.6\ \mathrm{m} の崖から水平に 5.0\ \mathrm{m/s} で小球を投げた。地面に達するまでの時間、水平距離、地面に達するときの速さを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
19.6=4.9t^2 より t=2.0\ \mathrm{s}。水平距離 5.0\times2.0=10\ \mathrm{m}。
v_y=9.8\times2.0=19.6、速さ \sqrt{5.0^2+19.6^2}=\sqrt{409.16}\fallingdotseq20.2
2.0\ \mathrm{s}、10\ \mathrm{m}、20\ \mathrm{m/s}
2ある高さから水平に 9.8\ \mathrm{m/s} で投げた小球が、地面に対して 45^\circ の角をなして落ちた。投げた高さを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
45^\circ で当たる ⇔ v_y=v_x。9.8t=9.8 より t=1.0\ \mathrm{s}。
高さ \frac12\times9.8\times1.0^2=4.9
4.9\ \mathrm{m}
注意着地の速さを v_0 や v_y だけで答えない。成分を三平方で合わせる。角度は \tan\phi=v_y/v_x。
着眼点初速度を v_0\cos\theta(水平)と v_0\sin\theta(鉛直)に分ける。あとは水平は等速、鉛直は投げ上げ。
v_x=v_0\cos\theta,\quad v_y=v_0\sin\theta-gtx=v_0\cos\theta\cdot t,\quad y=v_0\sin\theta\cdot t-\frac12gt^2同じ高さに着地する場合: 最高点の時刻 \dfrac{v_0\sin\theta}{g}、高さ \dfrac{v_0^2\sin^2\theta}{2g}、水平到達距離 R=\dfrac{v_0^2\sin2\theta}{g}(45^\circ で最大)。
x と y から t を消すと軌道の式 y=x\tan\theta-\dfrac{g}{2v_0^2\cos^2\theta}x^2(放物線)。
例題
1水平な地面から、仰角 30^\circ、初速 19.6\ \mathrm{m/s} で小球を投げた。最高点の高さと水平到達距離を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\sqrt3=1.73 とする。
解答
v_y の初め 19.6\sin30^\circ=9.8、v_x=19.6\cos30^\circ=9.8\sqrt3。
最高点: t=9.8/9.8=1.0\ \mathrm{s}、高さ 9.8\times1.0-4.9\times1.0^2=4.9\ \mathrm{m}
着地は 2.0\ \mathrm{s} 後、距離 9.8\times1.73\times2.0=33.9\cdots
4.9\ \mathrm{m}、34\ \mathrm{m}(検算: R=v_0^2\sin60^\circ/g=19.6\times2\times0.865\fallingdotseq33.9)
2水平な地面から、初速 10\ \mathrm{m/s}、\sin\theta=0.60,\ \cos\theta=0.80 の向きに小球を投げた。水平に 4.0\ \mathrm{m} 離れた鉛直な壁に当たる時刻と高さを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
v_x=8.0,\ v_{y0}=6.0\ \mathrm{m/s}。壁までの時間 4.0/8.0=0.50\ \mathrm{s}。
高さ 6.0\times0.50-4.9\times0.50^2=3.0-1.225=1.775
0.50\ \mathrm{s}、1.8\ \mathrm{m}(このとき v_y=6.0-4.9=1.1>0 でまだ上昇中)
注意R=\dfrac{v_0^2\sin2\theta}{g} は「投げた高さと同じ高さに落ちる」ときだけ。高さの違う所に落ちる問題で使うと間違える。
確認問題
1同じ初速で仰角 30^\circ と 60^\circ で投げたとき、水平到達距離の関係は。
答え
等しい(\sin60^\circ=\sin120^\circ のため)。最高点は 60^\circ のほうが高い
必須「最高点は v_y=0、着地は y= 地面」で時刻を出す
着眼点放物運動はまず時刻を求める。条件を鉛直方向の式に入れて t を出し、それを水平方向の式に入れる。
| 条件 | 式 |
|---|
| 最高点 | v_y=0 |
| 着地(地面が投げた点より h 下) | y=-h(上向き正) |
| 壁に当たる(水平距離 L) | x=L |
| 斜面・地面に \phi で当たる | \tan\phi=|v_y|/v_x |
例題
1高さ 14.7\ \mathrm{m} の崖の上から、仰角 30^\circ、初速 19.6\ \mathrm{m/s} で小球を投げた。崖の下の地面に落ちるまでの時間と水平距離を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\sqrt3=1.73 とする。
解答
上向き正、投げた点が原点。地面は y=-14.7。-14.7=9.8t-4.9t^24.9 で割って t^2-2t-3=0、(t-3)(t+1)=0 より t=3.0\ \mathrm{s}。
水平距離 9.8\times1.73\times3.0=50.8\cdots
3.0\ \mathrm{s}、51\ \mathrm{m}(検算: 9.8\times3-4.9\times9=29.4-44.1=-14.7)
ポイント二次方程式の負の解は「投げる前」の時刻なので捨てる、と一言添える。
着眼点斜面上に落ちる条件は「落下点の y/x が斜面の \tan に等しい」。または斜面に沿った座標を取る。
傾斜角 \alpha の斜面の頂点から水平に v_0 で投げると、\dfrac{\frac12gt^2}{v_0t}=\tan\alpha より t=\dfrac{2v_0\tan\alpha}{g}。
例題
1傾斜角 45^\circ の斜面の頂点から、水平に 4.9\ \mathrm{m/s} で小球を投げた。斜面に落ちるまでの時間と、頂点から落下点までの斜面に沿った距離を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
t=\dfrac{2\times4.9\times1}{9.8}=1.0\ \mathrm{s}。
水平 x=4.9\ \mathrm{m}、落下 y=4.9\ \mathrm{m}、斜面に沿って 4.9\sqrt2\fallingdotseq6.9
1.0\ \mathrm{s}、6.9\ \mathrm{m}
ポイント「斜面から最も離れるとき」は、速度が斜面と平行になるとき(斜面に垂直な速度成分が0)。斜面に沿った座標をとると見通しがよい。
差がつく落ち始めた的に当てる(モンキーハンティング)
着眼点弾と的は同じ加速度 g で落ちるので、的が落ち始める瞬間に的の方向へ撃てば、(的が地面に着く前なら)必ず当たる。
例題
1水平距離 L、高さ H の位置にある的が、弾を撃つと同時に静かに落ち始める。弾を的の方向(\tan\theta=H/L)に初速 v_0 で撃つと当たることを示せ。
解答
弾が水平に L 進む時刻は t=\dfrac{L}{v_0\cos\theta}。
そのときの弾の高さ: v_0\sin\theta\cdot t-\frac12gt^2=L\tan\theta-\frac12gt^2=H-\frac12gt^2
的の高さも H-\frac12gt^2 で一致する。よって当たる(ただし H-\frac12gt^2\ge0、つまり的が地面に着く前であること)。
ポイント的から見ると、弾は重力の影響を受けずに一直線に飛んでくる(加速度の差が0)、と相対運動で説明すると速い。
着眼点一方から見た相対速度で考えると、もう一方は等速直線運動。最接近距離は「点と直線の距離」になる。
Aから見たBの相対速度 \vec v_B-\vec v_A を求め、Aを原点に固定して、Bの初めの位置からその向きへ引いた直線と原点の距離を求める。
ポイント後回しでよい理由: 相対速度と作図の両方が要る応用で、標準的な入試ではあまり見ない。例外: 難関大や、相対運動を詳しく扱う大学を受けるなら一度は解いておく。
⚖️
力とつりあい・剛体
力を見つけて描く、成分に分けてつりあいの式を立てる。剛体では「力のつりあい」に「モーメントのつりあい」が加わる。
力の種類と見つけ方
着眼点物体にはたらく力は「重力」と「触れているものから受ける力」だけ。触れているものを1つずつ指でたどらせる。
| 力 | 大きさ・向き | 受ける相手 |
|---|
| 重力 | mg、鉛直下向き | 地球(触れていなくてもはたらく) |
| 垂直抗力 | N、面に垂直で面から離れる向き | 接している面 |
| 張力 | T、糸に沿って物体から離れる向き(引く向き) | 糸 |
| 弾性力 | kx、自然長に戻る向き | ばね |
| 摩擦力 | 面に平行。静止摩擦は状況で決まる、動摩擦は \mu'N | 粗い面 |
| 浮力 | \rho Vg、鉛直上向き | 液体・気体 |
ポイント図に描く順番は「重力 → 触れているもの」。描いた力の数と触れているものの数+1が合うか確かめる。
注意「運動の向きに進む力」「遠心力(静止系で)」など、相手のいない力を描かない。力には必ず「何から受けたか」がある。
確認問題
1天井から糸でつるされ静止しているおもりにはたらく力は何と何か。
答え
重力(地球から)と張力(糸から)の2つ
2粗い斜面上で静止している物体にはたらく力をすべて挙げよ。
答え
重力、垂直抗力、静止摩擦力(斜面上向き)の3つ
着眼点弾性力の大きさは自然長からの伸び(縮み)に比例する。x は「ばねの長さ」ではなく「自然長からのずれ」。
F=kxk はばね定数(単位 \mathrm{N/m})。使う場面: ばねにおもりをつるす、ばねで押す・引く。
例題
1ばね定数 50\ \mathrm{N/m} のばねを 0.20\ \mathrm{m} 伸ばすのに必要な力の大きさを求めよ。
解答
F=50\times0.20=10
10\ \mathrm{N}
2ばねに質量 0.50\ \mathrm{kg} のおもりをつるすと 4.9\ \mathrm{cm} 伸びて静止した。ばね定数と、1.0\ \mathrm{kg} のおもりにかえたときの伸びを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
つりあいより kx=mg。k\times0.049=0.50\times9.8 より k=\dfrac{4.9}{0.049}=100\ \mathrm{N/m}。
1.0\ \mathrm{kg} では x=\dfrac{9.8}{100}=0.098\ \mathrm{m}
1.0\times10^2\ \mathrm{N/m}、9.8\ \mathrm{cm}
注意cm を m に直さずに k を出すミスが多い。4.9\ \mathrm{cm}=0.049\ \mathrm{m}。
着眼点直列は各ばねに同じ力、伸びは足し算。並列は伸びが同じ、力が足し算。
直列: \dfrac1k=\dfrac1{k_1}+\dfrac1{k_2} 並列: k=k_1+k_2
導出の一言: 直列は x=\dfrac F{k_1}+\dfrac F{k_2}、並列は F=k_1x+k_2x から。
例題
1ばね定数 20\ \mathrm{N/m} と 30\ \mathrm{N/m} のばねを直列につなぎ、0.60\ \mathrm{kg} のおもりをつるした。全体の伸びを求めよ。ばねの質量は無視し、g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
合成ばね定数 \dfrac1k=\dfrac1{20}+\dfrac1{30}=\dfrac5{60} より k=12\ \mathrm{N/m}。
伸び \dfrac{0.60\times9.8}{12}=0.49
0.49\ \mathrm{m}(検算: 各ばねの伸び 5.88/20=0.294 と 5.88/30=0.196 の和が 0.49)
注意電気抵抗の合成と式の形が逆(ばねの直列はコンデンサーの直列と同じ形)。混同しやすい。
着眼点作用・反作用は「2つの物体の間」で、別々の物体にはたらく。つりあいは「1つの物体」にはたらく力どうし。
- 作用・反作用: AがBを押す力とBがAを押す力。同じ大きさ・逆向き・同一直線上。物体が動いていても常に成り立つ。
- つりあい: 1つの物体にはたらく力の合力が0。静止または等速直線運動のときだけ。
例題
1机の上に本が静止している。(1) 本にはたらく重力とつりあう力、(2) 本にはたらく垂直抗力の反作用、をそれぞれ答えよ。
解答
(1) 机が本を押す力(垂直抗力)
(2) 本が机を押す力
重力の反作用は「本が地球を引く力」で、垂直抗力ではない。
注意「重力と垂直抗力は作用・反作用」は典型的な誤答。両方とも本にはたらいているので、作用・反作用ではありえない。
力のつりあい
着眼点斜面では、重力を「斜面に平行」と「斜面に垂直」に分ける。\sin と \cos のどちらかは、角度を 0 に近づけて確かめる。
斜面方向: mg\sin\theta 斜面に垂直: mg\cos\theta
確かめ方: \theta\to0(水平面)なら斜面方向の成分は0になるはずなので \sin\theta。
例題
1傾斜角 30^\circ の斜面上に質量 2.0\ \mathrm{kg} の物体がある。重力の斜面方向の成分と、斜面に垂直な成分の大きさを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\sqrt3=1.73 とする。
解答
mg=19.6\ \mathrm{N}。
斜面方向 19.6\sin30^\circ=9.8\ \mathrm{N}、垂直 19.6\cos30^\circ=19.6\times0.865=16.9\cdots
9.8\ \mathrm{N}、17\ \mathrm{N}
2水平から 60^\circ 上向きに 10\ \mathrm{N} の力で物体を引く。この力の水平成分と鉛直成分を求めよ。\sqrt3=1.73 とする。
解答
水平 10\cos60^\circ=5.0\ \mathrm{N}、鉛直 10\sin60^\circ=8.65
5.0\ \mathrm{N}、8.7\ \mathrm{N}
注意斜面上の垂直抗力は mg ではなく mg\cos\theta(他に斜面に垂直な力がなければ)。
着眼点静止(または等速直線運動)なら合力0。直交する2方向に分けて、それぞれ「+向きの力の和=-向きの力の和」で書く。
\sum F_x=0,\qquad \sum F_y=0軸の取り方: 未知の力ができるだけ軸に乗る向き(斜面なら斜面に平行・垂直)にとると式が簡単になる。
例題
1質量 1.0\ \mathrm{kg} のおもりを2本の糸でつるした。2本とも鉛直から 60^\circ 傾いて左右対称になっている。各糸の張力を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
鉛直方向: 2T\cos60^\circ=mg より T=mg=9.8
9.8\ \mathrm{N}(水平方向は対称なので自動的につりあう)
2質量 1.0\ \mathrm{kg} のおもりを、水平な糸1と、鉛直から 30^\circ 傾いた糸2で支えた。それぞれの張力を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\sqrt3=1.73 とする。
解答
鉛直: T_2\cos30^\circ=9.8 より T_2=\dfrac{9.8\times2}{1.73}=11.3\cdots
水平: T_1=T_2\sin30^\circ=5.66\cdots
T_1=5.7\ \mathrm{N}、T_2=11\ \mathrm{N}(検算: T_1=mg\tan30^\circ=9.8/1.73=5.66)
ポイント張力が mg より大きくなりうること(例1で角度を広げると張力が増える)を確認させると理解が深まる。
着眼点静止摩擦力は「つりあいから決まる」値で、\mu N は「その上限」。動いていなければ、まずつりあいの式で摩擦力を出す。
f\le f_{\max}=\mu N使う場面: 「動かない」「滑り出す直前」。滑り出す直前だけ f=\mu N とおける。
傾斜角を大きくしていって滑り出す角を \theta_0 とすると \tan\theta_0=\mu(導出: mg\sin\theta_0=\mu mg\cos\theta_0)。
例題
1水平な粗い床の上の 2.0\ \mathrm{kg} の物体を、水平に 5.0\ \mathrm{N} で押したが動かなかった。静止摩擦係数は 0.50。このときの摩擦力と最大静止摩擦力を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
最大静止摩擦力 \mu N=0.50\times2.0\times9.8=9.8\ \mathrm{N}。
押す力 5.0\ \mathrm{N} はこれより小さいので動かず、つりあいから摩擦力は 5.0\ \mathrm{N}。
摩擦力 5.0\ \mathrm{N}、最大静止摩擦力 9.8\ \mathrm{N}
2上の物体を、水平から 30^\circ 上向きの力 F で引く。滑り出すときの F を有効数字2桁で求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\sqrt3=1.73 とする。
解答
鉛直: N+F\sin30^\circ=19.6 より N=19.6-0.50F(斜め上に引くと垂直抗力が減る)。
水平(滑り出す直前): F\cos30^\circ=0.50N
0.865F=0.50(19.6-0.50F)、1.115F=9.8、F=8.78\cdots
8.8\ \mathrm{N}
注意動いていないのに摩擦力をいきなり \mu N とおくのが最多のミス。また N=mg と決めつけない(斜めに引く・斜面では変わる)。
剛体のつりあい
着眼点回転させるはたらき=力×腕の長さ。腕の長さは「回転軸から力の作用線までの垂直距離」。
M=Fl=Fr\sin\thetar は軸から作用点までの距離、\theta は r の向きと力のなす角。反時計回りを正などと決めて符号をつける。単位 \mathrm{N\cdot m}。
大きさが等しく逆向きで作用線がずれた2力(偶力)は、合力は0だが回転させる。偶力のモーメントはどの点のまわりでも F\times(作用線の間隔)。
例題
1長さ 0.20\ \mathrm{m} のスパナの端に、柄に垂直に 50\ \mathrm{N} の力を加えた。ボルトのまわりの力のモーメントの大きさを求めよ。
解答
M=50\times0.20=10
10\ \mathrm{N\cdot m}
2軸から 0.30\ \mathrm{m} の点に、棒と 30^\circ の角をなす向きに 40\ \mathrm{N} の力を加えた。力のモーメントの大きさを求めよ。
解答
腕の長さ 0.30\sin30^\circ=0.15\ \mathrm{m}。M=40\times0.15=6.0
6.0\ \mathrm{N\cdot m}
注意作用点までの距離をそのまま掛けない。力が斜めなら \sin\theta がつく。軸を通る力のモーメントは0。
着眼点①力のつりあい(合力0)②任意の点のまわりのモーメントの和が0。②の軸は「未知の力が多く集まる点」にとると未知数が減る。
\sum F_x=0,\quad \sum F_y=0,\quad \sum M=0剛体では、重力は重心に1本の力として描く(一様な棒なら中点)。
例題
1長さ 1.0\ \mathrm{m} の軽い棒の左端に 3.0\ \mathrm{kg}、右端に 1.0\ \mathrm{kg} のおもりをつるし、1点で支えて水平につりあわせた。支点は左端から何 m か。
解答
支点を左端から x とし、支点のまわりのモーメント: 3.0g\times x=1.0g\times(1.0-x)
4.0x=1.0 より x=0.25
0.25\ \mathrm{m}
2質量 10\ \mathrm{kg} の一様なはしごを、なめらかな鉛直の壁に立てかけ、粗い床と 60^\circ の角をなして静止させた。壁からの垂直抗力、床からの摩擦力と垂直抗力、および必要な静止摩擦係数の最小値を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\sqrt3=1.73 とする。
解答
はしごの長さを L、重さ W=98\ \mathrm{N}。壁の抗力 N_1(水平)、床の垂直抗力 N_2、摩擦 f(壁向き)。
鉛直: N_2=W=98\ \mathrm{N}、水平: f=N_1
床の接点のまわりのモーメント: N_1\cdot L\sin60^\circ=W\cdot\dfrac L2\cos60^\circ
N_1=\dfrac{W}{2\tan60^\circ}=\dfrac{98}{2\times1.73}=28.3\cdots
\mu\ge\dfrac{f}{N_2}=\dfrac{28.3}{98}=0.289\cdots
N_1=28\ \mathrm{N}、f=28\ \mathrm{N}、N_2=98\ \mathrm{N}、\mu\ge0.29
ポイントはしごは床の接点を軸にとると、N_2 と f の2つが一度に消える。
注意モーメントの腕の長さで、壁の抗力(水平)には L\sin60^\circ(高さ)、重力(鉛直)には \frac L2\cos60^\circ(水平距離)を使う。逆にしやすい。
着眼点重心は「質量で重みをつけた平均の位置」。くりぬいた物体は、くりぬいた部分を負の質量として扱う。
x_G=\frac{m_1x_1+m_2x_2+\cdots}{m_1+m_2+\cdots}導出の一言: 重心で支えたとき、重力のモーメントの和が0になる点として決まる。
例題
1長さ 0.60\ \mathrm{m}、質量 2.0\ \mathrm{kg} の一様な棒の右端に 1.0\ \mathrm{kg} のおもりをつけた。全体の重心は左端から何 m か。
解答
棒の重心は中点 0.30\ \mathrm{m}。x_G=\frac{2.0\times0.30+1.0\times0.60}{3.0}=\frac{1.2}{3.0}=0.400.40\ \mathrm{m}
2半径 R の一様な円板から、半径 \dfrac R2 の円を、もとの円に内接するように切り取った。残りの部分の重心は、もとの円の中心からどちら側にどれだけ離れているか。
解答
質量は面積に比例。もとの円板を 4m とすると切り取る部分は m、残りは 3m。中心を原点、切り取る円の中心を x=\dfrac R2 とする。
(残り)+(切り取る部分)=(もとの円板)なので 3m\cdot x_G+m\cdot\dfrac R2=4m\cdot0
x_G=-\dfrac R6
切り取った側と反対向きに \dfrac R6
着眼点倒れ始める瞬間、床からの垂直抗力と摩擦力は回転の軸になる底面の端に集まる。その端のまわりのモーメントで判定する。
直方体に横から力を加えるとき、「滑る」か「倒れる」かは、それぞれが起こる力の大きさを比べて小さいほうが先に起こる。
例題
1幅 0.40\ \mathrm{m}、高さ 1.0\ \mathrm{m}、質量 10\ \mathrm{kg} の一様な直方体が粗い水平な床に置いてある。上面の端に水平な力 F を加えて少しずつ大きくする。滑らないとすると、倒れ始めるときの F はいくらか。また、滑るより先に倒れるための静止摩擦係数の条件を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
倒れ始める瞬間、床からの力は押される向きの側の下端に集まる。その端のまわりのモーメント: F\times1.0=98\times0.20 より F=19.6\ \mathrm{N}。
滑らないためには F\le\mu\times98 が F=19.6 まで成り立てばよく、\mu\ge0.20。
F=20\ \mathrm{N}、\mu>0.20(で先に倒れる)
注意重力の腕は「重心から回転軸の端までの水平距離」=幅の半分。幅全体を使わない。
着眼点剛体に3つの力だけがはたらいてつりあうとき、3力の作用線は1点で交わる。未知の力(ちょうつがいの力など)の向きがこれで決まる。
例題
1重さ W、長さ L の一様な棒ABのA端を壁にちょうつがいで留め、B端に結んだ糸を壁の上方につないで、棒を水平に保った。糸と棒のなす角は 30^\circ。糸の張力と、ちょうつがいが棒に及ぼす力の向きを求めよ。
解答
Aのまわりのモーメント: T\sin30^\circ\times L=W\times\dfrac L2 より T=W。
ちょうつがいの力: 水平成分 T\cos30^\circ=\dfrac{\sqrt3}2W(壁から離れる向き)、鉛直成分 W-T\sin30^\circ=\dfrac W2(上向き)。向きは \tan\phi=\dfrac{W/2}{\sqrt3W/2}=\dfrac1{\sqrt3} より水平から 30^\circ 上向き。
(確認: 重力の作用線(中点の真上)と糸の作用線は、Aから水平に \frac L2、高さ \frac L2\tan30^\circ の点で交わり、ちょうつがいの力もそこを通る)
T=W、ちょうつがいの力は水平から 30^\circ 上向き
注意ちょうつがいの力は棒に沿った向きとは限らない。決めつけずに2成分で置く。
着眼点3力がつりあうとき、各力の大きさは「他の2力のなす角の正弦」に比例する。
\frac{F_1}{\sin\alpha}=\frac{F_2}{\sin\beta}=\frac{F_3}{\sin\gamma}(\alpha は F_2 と F_3 のなす角、など)
ポイント後回しでよい理由: 成分に分けてつりあいの式を立てれば必ず解け、覚える式が増えるだけ。例外: 角度が多い作図問題を速く解きたい人は、力の三角形に正弦定理を使う考え方として知っておくと便利。
🚀
運動方程式
力を描いて ma=F を立てる。斜面・摩擦・糸でつながれた物体・浮力まで、手順はすべて同じ。
運動方程式の立て方
着眼点①着目する物体を1つ決める ②力をすべて描く ③加速度の向きを正にとり ma=(その向きの力の和)。物体ごとに1本ずつ立てる。
ma=FF は物体にはたらく力の合力(ベクトルの和)。加速度は合力の向きに生じる。合力0なら加速度0(慣性の法則: 静止または等速直線運動を続ける)。
使う場面: 加速度・力・張力を求めるすべての問題。つりあいは a=0 の特別な場合。
例題
1なめらかな水平面上の質量 2.0\ \mathrm{kg} の物体に、水平に 6.0\ \mathrm{N} の力を加えた。加速度を求めよ。
解答
2.0a=6.0 より a=3.0
力の向きに 3.0\ \mathrm{m/s^2}
2質量 2.0\ \mathrm{kg} の物体に糸をつけ、鉛直上向きに 30\ \mathrm{N} で引き上げた。加速度を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
上向き正: 2.0a=30-2.0\times9.8=10.4 より a=5.2
上向きに 5.2\ \mathrm{m/s^2}
注意重力を忘れる、または描いた力の向きと式の符号が合っていないミスが多い。式を立てる前に、図の矢印と正の向きを指でさして確認させる。
確認問題
1等速で上昇しているエレベーターのロープの張力は、エレベーターの重力より大きいか。
答え
等しい(等速なので a=0、力はつりあっている)
着眼点斜面方向にはたらく力は mg\sin\theta だけ。加速度は質量によらず g\sin\theta。
ma=mg\sin\theta\ \Rightarrow\ a=g\sin\theta斜面に垂直な方向はつりあい: N=mg\cos\theta。
例題
1傾斜角 30^\circ のなめらかな斜面上で物体を静かに放した。加速度の大きさと、2.0\ \mathrm{s} 間に斜面に沿って進む距離を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
a=9.8\sin30^\circ=4.9\ \mathrm{m/s^2}。距離 \frac12\times4.9\times2.0^2=9.8
4.9\ \mathrm{m/s^2}、9.8\ \mathrm{m}
2同じ斜面の下端から、斜面に沿って上向きに 9.8\ \mathrm{m/s} で物体を打ち出した。止まるまでの時間と、上った距離を求めよ。
解答
上向き正で a=-4.9。0=9.8-4.9t より t=2.0\ \mathrm{s}。
0^2-9.8^2=2\times(-4.9)\times x より x=9.8\ \mathrm{m}
2.0\ \mathrm{s}、9.8\ \mathrm{m}
注意上っている間も下っている間も、なめらかな斜面なら加速度は同じ(斜面下向きに g\sin\theta)。
着眼点滑っている間の摩擦力は一定の \mu'N で、向きは「面に対して滑る向きと逆」。N はつりあいから先に出す。
f=\mu'N粗い水平面: a=-\mu'g。粗い斜面を滑り下りる: a=g(\sin\theta-\mu'\cos\theta)、滑り上がる: 斜面下向きに g(\sin\theta+\mu'\cos\theta)。
例題
1粗い水平面上を 4.9\ \mathrm{m/s} で滑り始めた物体が止まるまでに進む距離を求めよ。動摩擦係数 0.25、g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
ma=-\mu'mg より a=-0.25\times9.8=-2.45\ \mathrm{m/s^2}。
0-4.9^2=2\times(-2.45)x より x=\dfrac{24.01}{4.9}=4.9
4.9\ \mathrm{m}
2傾斜角 30^\circ の粗い斜面を物体が滑り下りている。動摩擦係数 0.20 のとき加速度の大きさを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\sqrt3=1.73 とする。
解答
N=mg\cos30^\circ。斜面下向き正: ma=mg\sin30^\circ-0.20\,mg\cos30^\circ
a=9.8\,(0.50-0.20\times0.865)=9.8\times0.327=3.20\cdots
3.2\ \mathrm{m/s^2}
注意物体が上っているか下っているかで摩擦力の向きが変わり、加速度も変わる。往きと帰りを同じ a で解かない。
着眼点糸がたるまなければ2物体の加速度の大きさは同じ。物体ごとに運動方程式を立てて連立し、張力 T を消す。
軽い糸の張力は糸のどこでも同じ大きさ(なめらかな軽い滑車をはさんでも同じ)。
速く a だけ出すには、2物体をひとまとめにして「(全質量) \times a = 動かす向きの外力の和」。T は内力なので消える。
例題
1なめらかな水平な机の上の質量 3.0\ \mathrm{kg} の物体Aに糸をつけ、机の端の滑車を通して質量 1.0\ \mathrm{kg} のおもりBをつるした。加速度と張力を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
A: 3.0a=T、B: 1.0a=1.0\times9.8-T。足して 4.0a=9.8、a=2.45。
T=3.0\times2.45=7.35
a=2.5\ \mathrm{m/s^2}、T=7.4\ \mathrm{N}(検算: B で 9.8-7.35=2.45=1.0\times2.45)
2天井の滑車に糸をかけ、両端に 3.0\ \mathrm{kg} と 2.0\ \mathrm{kg} のおもりをつるして静かに放した(アトウッドの器械)。加速度と張力を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
3.0\ \mathrm{kg} 側は下向き、2.0\ \mathrm{kg} 側は上向きに a。
3.0a=3.0\times9.8-T、2.0a=T-2.0\times9.8。足して 5.0a=9.8、a=1.96。
T=2.0\times(9.8+1.96)=23.52
a=2.0\ \mathrm{m/s^2}、T=24\ \mathrm{N}(検算: 3.0\times9.8-23.52=5.88=3.0\times1.96)
注意つるしたおもりの張力を mg としてしまうミスが多い。加速しているので T<mg(例1では 7.4<9.8)。
着眼点一緒に動くので加速度は同じ。全体で a を出し、片方だけの運動方程式で「押し合う力」を出す。
例題
1なめらかな水平面上に、質量 2.0\ \mathrm{kg} の物体Aと 3.0\ \mathrm{kg} の物体Bを接して並べ、Aを水平に 10\ \mathrm{N} で押した。加速度と、AがBを押す力を求めよ。
解答
全体: 5.0a=10 より a=2.0\ \mathrm{m/s^2}。
Bだけ: 3.0\times2.0=F_{AB} より F_{AB}=6.0\ \mathrm{N}
2.0\ \mathrm{m/s^2}、6.0\ \mathrm{N}(検算: A で 10-6.0=4.0=2.0\times2.0)
確認問題
1上の例で、逆にBの側から 10\ \mathrm{N} で押すと、押し合う力はいくらか。
答え
A だけで 2.0\times2.0=4.0\ \mathrm{N}(後ろの物体を押す力は、後ろの物体の質量で決まる)
着眼点浮力の大きさは「押しのけた液体の重さ」。物体の質量ではなく、液体中にある部分の体積で決まる。
p=p_0+\rho gh,\qquad F=\rho Vg導出の一言: 液体中の物体の上面と下面にかかる圧力の差が \rho g h。これに面積 S を掛けると \rho g(hS)=\rho Vg。
\rho は液体の密度、V は液体中にある部分の体積。
例題
1体積 2.0\times10^{-3}\ \mathrm{m^3}、質量 5.0\ \mathrm{kg} の物体を糸でつるし、全体を水中に沈めて静止させた。浮力と糸の張力を求めよ。水の密度 1.0\times10^3\ \mathrm{kg/m^3}、g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
浮力 1.0\times10^3\times2.0\times10^{-3}\times9.8=19.6\ \mathrm{N}
つりあい: T+19.6=5.0\times9.8=49 より T=29.4
浮力 20\ \mathrm{N}、張力 29\ \mathrm{N}
2密度 0.60\times10^3\ \mathrm{kg/m^3} の木片が水に浮いている。木片の体積のうち水面下にある割合を求めよ。水の密度 1.0\times10^3\ \mathrm{kg/m^3} とする。
解答
木片の体積 V、水面下の体積 V' とする。つりあい: 1.0\times10^3\,V'g=0.60\times10^3\,Vg
\dfrac{V'}{V}=0.60
60\ \%(密度の比がそのまま沈む割合になる)
注意浮力の V に物体全体の体積を入れるのは、全部沈んでいるときだけ。浮いている物体は水面下の部分だけ。
確認問題
1水深 10\ \mathrm{m} での圧力は。大気圧 1.0\times10^5\ \mathrm{Pa}、水の密度 1.0\times10^3\ \mathrm{kg/m^3}、g=9.8\ \mathrm{m/s^2}。
答え
1.0\times10^5+1.0\times10^3\times9.8\times10=1.98\times10^5 より 2.0\times10^5\ \mathrm{Pa}
応用の型
着眼点まず「一緒に動く」と仮定して必要な静止摩擦力を出し、\mu N を超えたら滑る。滑ったら動摩擦力で物体ごとに別の加速度。
例題
1なめらかな床の上に質量 2.0\ \mathrm{kg} の板を置き、その上に質量 1.0\ \mathrm{kg} の物体をのせた。板と物体の間の静止摩擦係数は 0.50。板を水平に引くとき、物体が板の上で滑らずに一緒に動ける最大の力を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
物体を動かす力は板からの静止摩擦力だけなので、物体の加速度の最大は \dfrac{0.50\times1.0\times9.8}{1.0}=4.9\ \mathrm{m/s^2}。
一緒に動くので全体: F=(2.0+1.0)\times4.9=14.7
15\ \mathrm{N}
2上の板を 20\ \mathrm{N} で引いた。板と物体の間の動摩擦係数を 0.40 として、物体と板それぞれの加速度を求めよ。
解答
20\ \mathrm{N}>14.7\ \mathrm{N} なので滑る。動摩擦力 0.40\times1.0\times9.8=3.92\ \mathrm{N}。
物体(前向きに摩擦を受ける): 1.0a_1=3.92、a_1=3.92
板(後ろ向きに摩擦を受ける): 2.0a_2=20-3.92、a_2=8.04
物体 3.9\ \mathrm{m/s^2}、板 8.0\ \mathrm{m/s^2}
注意摩擦力は作用・反作用で、物体と板に逆向きにはたらく。板にはたらく摩擦力を描き忘れやすい。
着眼点体重計の目盛りは垂直抗力 N。上向きに加速すれば N>mg、下向きに加速すれば N<mg。
ma=N-mg(上向きを正にとる)
慣性力を使う考え方は「円運動・慣性力」の単元で。どちらで解いても同じ答えになる。
例題
1質量 50\ \mathrm{kg} の人が、上向きに 2.0\ \mathrm{m/s^2} で加速しているエレベーターの中で体重計に乗っている。体重計が人を押す力を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
50\times2.0=N-50\times9.8 より N=50\times11.8=590
5.9\times10^2\ \mathrm{N}
注意「上昇している」と「上向きに加速している」は別。上昇しながら減速していれば加速度は下向き。
確認問題
1同じ人が、下向きに 2.0\ \mathrm{m/s^2} で加速しているエレベーターにいるときは。
答え
N=50\times(9.8-2.0)=390 より 3.9\times10^2\ \mathrm{N}
着眼点動滑車では2物体の加速度の大きさが違う。糸の長さが一定であることから、移動距離の比=加速度の比を先に決める。
例題
1なめらかな水平な机の上に質量 1.0\ \mathrm{kg} の物体Aを置き、Aにつけた糸を机の端の定滑車にかけて下ろし、軽い動滑車にかけて糸の端を天井に固定した。動滑車には質量 2.0\ \mathrm{kg} のおもりBをつるす。A、Bの加速度と糸の張力を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
Bが d 下がると、動滑車の両側の糸が d ずつ伸びるのでAは 2d 動く。よって a_A=2a_B。
A: 1.0\times a_A=T
B(動滑車は2本の糸で上に引かれる): 2.0a_B=2.0\times9.8-2T
T=2a_B を代入: 2.0a_B=19.6-4a_B、a_B=\dfrac{19.6}6=3.27
a_A=6.53、T=6.53
a_A=6.5\ \mathrm{m/s^2}、a_B=3.3\ \mathrm{m/s^2}、T=6.5\ \mathrm{N}(検算: B で 19.6-2\times6.53=6.53=2.0\times3.27)
注意加速度を両方 a とおくと必ず間違える。動滑車につるした物体には張力が2本ぶん(2T)かかる。
着眼点なめらかな床の上の斜面台に物体をのせると、台も後ろへ動く。台の加速度と、台に対する物体の加速度の両方が未知数になる。
解き方の骨組み: 床から見た運動方程式を物体(2方向)と台(水平)について立て、「物体は台の斜面から離れない」という条件を加えて連立する。台の上から見て慣性力を入れて解く方法もある。
ポイント後回しでよい理由: 未知数が多く連立が重いうえ、標準的な入試での出題は多くない。例外: 難関大志望なら、運動量保存(水平方向)とあわせて一度は通しておく。
🔋
仕事と力学的エネルギー
仕事の定義、運動エネルギーと仕事の関係、位置エネルギー、力学的エネルギー保存と、摩擦などの非保存力があるときの式。途中の様子を問わない問題はエネルギーで解くと速い。
仕事と運動エネルギー
着眼点仕事=力×(力の向きに動いた距離)。力と移動の向きが垂直なら0、逆向きなら負。
W=Fx\cos\theta\theta は力と移動の向きのなす角。単位 \mathrm{J}(=\mathrm{N\cdot m})。
使う場面: エネルギーの増減を計算するとき。垂直抗力・円運動の糸の張力は移動と垂直なので仕事0。動摩擦力は移動と逆向きなので負の仕事。
例題
1物体を水平面上で、水平から 30^\circ 上向きに 10\ \mathrm{N} の力で引き、水平に 2.0\ \mathrm{m} 動かした。この力のした仕事を求めよ。\sqrt3=1.73 とする。
解答
W=10\times2.0\times\cos30^\circ=20\times0.865=17.3
17\ \mathrm{J}
2質量 2.0\ \mathrm{kg} の物体が粗い水平面上を 3.0\ \mathrm{m} 滑った。動摩擦係数 0.30 のとき、動摩擦力のした仕事を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
動摩擦力 0.30\times2.0\times9.8=5.88\ \mathrm{N}、向きは移動と逆(\theta=180^\circ)。
W=5.88\times3.0\times(-1)=-17.64
-18\ \mathrm{J}
注意荷物を持って水平に歩くとき、手が荷物にする仕事は0(力は上向き、移動は水平)。「疲れる=仕事」ではない。
着眼点運動エネルギーの変化=物体がされた仕事の合計。途中の加速度を求めずに速さが出る。
K=\frac12mv^2,\qquad \frac12mv^2-\frac12mv_0^2=W導出の一言: v^2-v_0^2=2ax に \frac12m を掛け、ma=F を使うと \frac12mv^2-\frac12mv_0^2=Fx。
W には重力・摩擦力など、はたらくすべての力の仕事を入れる。
例題
1質量 2.0\ \mathrm{kg} の物体が 3.0\ \mathrm{m/s} で動いている。運動エネルギーを求めよ。
解答
K=\frac12\times2.0\times3.0^2=9.0
9.0\ \mathrm{J}
2粗い水平面上を 10\ \mathrm{m/s} で滑り始めた質量 1.0\ \mathrm{kg} の物体が止まるまでの距離を、仕事とエネルギーの関係で求めよ。動摩擦係数 0.50、g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
0-\frac12\times1.0\times10^2=-0.50\times1.0\times9.8\times x
50=4.9x より x=10.2
10\ \mathrm{m}(質量は両辺で消えるので結果は質量によらない)
着眼点仕事率は「1秒あたりの仕事」。一定の速さで動かすときは P=Fv が速い。
P=\frac Wt=Fv単位 \mathrm{W}(=\mathrm{J/s})。導出の一言: W=Fx を t で割ると x/t=v。
例題
1質量 50\ \mathrm{kg} の荷物を、一定の速さで 10\ \mathrm{s} かけて 4.0\ \mathrm{m} 持ち上げた。仕事率を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
W=50\times9.8\times4.0=1960\ \mathrm{J}、P=1960/10=196
2.0\times10^2\ \mathrm{W}
2抵抗力 300\ \mathrm{N} を受けながら、一定の速さ 2.0\ \mathrm{m/s} で進む台車を引く力の仕事率を求めよ。
解答
等速なので引く力=抵抗力=300\ \mathrm{N}。P=300\times2.0=600
6.0\times10^2\ \mathrm{W}
位置エネルギーと力学的エネルギー保存
着眼点重力の位置エネルギーは基準の高さを自分で決めてよい(差だけが意味をもつ)。弾性力の位置エネルギーの基準は必ず自然長。
U_g=mgh,\qquad U_k=\frac12kx^2導出の一言: mgh は持ち上げるのに要る仕事。\frac12kx^2 は F=kx のグラフ(三角形)の面積。
例題
1基準面から高さ 5.0\ \mathrm{m} にある質量 2.0\ \mathrm{kg} の物体の重力による位置エネルギーを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
U=2.0\times9.8\times5.0=98
98\ \mathrm{J}
2ばね定数 200\ \mathrm{N/m} のばねを 0.10\ \mathrm{m} 縮めたときの弾性力による位置エネルギーを求めよ。
解答
U=\frac12\times200\times0.10^2=1.0
1.0\ \mathrm{J}
注意基準より下では mgh は負。弾性エネルギーは伸びでも縮みでも正(x^2)。
着眼点「はじめの K+U = あとの K+U」。途中の経路や斜面の形がわからなくても、高さと速さだけで解ける。
\frac12mv_1^2+mgh_1+\frac12kx_1^2=\frac12mv_2^2+mgh_2+\frac12kx_2^2使う場面: なめらかな面・曲面、振り子、ばねで打ち出す、など「速さと高さ(伸び)」の関係を問われたとき。
例題
1高さ 5.0\ \mathrm{m} の点から、なめらかな曲面を静かに滑り下りた物体の、最下点での速さを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
mg\times5.0=\frac12mv^2 より v^2=98、v=9.89\cdots
9.9\ \mathrm{m/s}(曲面の形によらない)
2なめらかな水平面上で、ばね定数 100\ \mathrm{N/m} のばねを 0.20\ \mathrm{m} 縮め、質量 0.50\ \mathrm{kg} の物体を押し当てて放した。ばねを離れたときの速さと、その後なめらかな斜面を上る最高の高さを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
ばねのエネルギー \frac12\times100\times0.20^2=2.0\ \mathrm{J}。
2.0=\frac12\times0.50\times v^2 より v^2=8.0、v=2.82\cdots
2.0=0.50\times9.8\times h より h=0.408\cdots
2.8\ \mathrm{m/s}、0.41\ \mathrm{m}
ポイント式を書く前に「はじめ」と「あと」の状態を図に2つ描き、それぞれの K・U を書き出させると漏れがない。
着眼点重力・弾性力(保存力)以外の力が仕事をしなければ保存する。垂直抗力・振り子の糸の張力は運動の向きと垂直なので仕事0。
- 保存する: なめらかな面、振り子、ばね、放物運動(空気抵抗なし)
- 保存しない: 摩擦・空気抵抗がある、人が押し続ける、物体どうしが非弾性衝突する
例題
1長さ 0.80\ \mathrm{m} の糸につけたおもりを、糸が鉛直と 60^\circ をなす位置から静かに放した。最下点での速さを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
張力は仕事をしないので保存。落差 h=0.80\,(1-\cos60^\circ)=0.40\ \mathrm{m}。
v=\sqrt{2\times9.8\times0.40}=\sqrt{7.84}=2.8
2.8\ \mathrm{m/s}
注意落差を L\cos\theta としてしまうミスが多い。支点から測った深さが L\cos\theta なので、最下点との差は L(1-\cos\theta)。
着眼点力学的エネルギーの変化=非保存力(摩擦・人の力など)のした仕事。摩擦があれば、その仕事の分だけ減る。
(K_2+U_2)-(K_1+U_1)=W_{\text{nc}}動摩擦力の仕事は -\mu'N\times(滑った距離)。減った力学的エネルギーは熱になる。
例題
1傾斜角 30^\circ、長さ 2.0\ \mathrm{m} の粗い斜面の上端から、質量 1.0\ \mathrm{kg} の物体を静かに放した。動摩擦係数 0.20 のとき、下端での速さを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\sqrt3=1.73 とする。
解答
高さ 2.0\sin30^\circ=1.0\ \mathrm{m}、位置エネルギーの減少 1.0\times9.8\times1.0=9.8\ \mathrm{J}。
摩擦の仕事 -0.20\times1.0\times9.8\times0.865\times2.0=-3.39\ \mathrm{J}
\frac12\times1.0\times v^2=9.8-3.39=6.41、v^2=12.8、v=3.58\cdots
3.6\ \mathrm{m/s}(検算: 運動方程式から a=3.20\ \mathrm{m/s^2}、v^2=2\times3.20\times2.0=12.8 で一致)
注意摩擦力の N は斜面では mg\cos\theta。また距離は「高さ」ではなく「斜面に沿って滑った長さ」。
着眼点重力の位置エネルギーとばねの弾性エネルギーの両方を入れる。自然長で静かに放すと、最大の伸びはつりあいの伸びの2倍。
例題
1ばね定数 49\ \mathrm{N/m} のばねの下端に質量 0.20\ \mathrm{kg} のおもりをつけ、ばねが自然長の位置で静かに放した。ばねの最大の伸びと、つりあいの位置での伸びを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
最下点(速さ0)で伸び x: 自然長の位置を基準に 0=-mgx+\frac12kx^2
x=\dfrac{2mg}k=\dfrac{2\times0.20\times9.8}{49}=0.080\ \mathrm{m}
つりあい: kx_0=mg より x_0=\dfrac{1.96}{49}=0.040\ \mathrm{m}
最大の伸び 8.0\ \mathrm{cm}、つりあい 4.0\ \mathrm{cm}
注意最下点で力がつりあうと考えるのは誤り。最下点は速さ0だが、ばねの力が重力より大きく上向きに加速している。
着眼点力が位置によって変わるときは、F-xグラフの面積で仕事を求める。
例題
1なめらかな水平面上で静止している質量 2.0\ \mathrm{kg} の物体に、運動の向きに力を加えた。力は x=0\sim2.0\ \mathrm{m} で 10\ \mathrm{N} 一定、x=2.0\sim4.0\ \mathrm{m} で 10\ \mathrm{N} から 0 まで一定の割合で減った。x=4.0\ \mathrm{m} での速さを求めよ。
解答
面積: 長方形 10\times2.0=20 と三角形 \frac12\times2.0\times10=10 で W=30\ \mathrm{J}。
\frac12\times2.0\times v^2=30 より v^2=30、v=5.47\cdots
5.5\ \mathrm{m/s}
ポイントばねの弾性エネルギー \frac12kx^2 も、F=kx の三角形の面積として導ける。
着眼点張力は2物体に逆向きの仕事をして打ち消し合うので、系全体の力学的エネルギーは保存する(摩擦がなければ)。
例題
1天井の滑車に糸をかけ、両端に 3.0\ \mathrm{kg} と 2.0\ \mathrm{kg} のおもりをつるして静かに放した。1.0\ \mathrm{m} 動いたときの速さを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
3.0\ \mathrm{kg} が 1.0\ \mathrm{m} 下がり、2.0\ \mathrm{kg} が 1.0\ \mathrm{m} 上がる。
位置エネルギーの減少 (3.0-2.0)\times9.8\times1.0=9.8\ \mathrm{J}
\frac12\times(3.0+2.0)v^2=9.8 より v^2=3.92、v=1.97\cdots
2.0\ \mathrm{m/s}(検算: 運動方程式で a=1.96、v^2=2\times1.96\times1.0=3.92)
注意片方の物体だけで保存の式を立てると間違える(張力が仕事をする)。物体1つなら張力の仕事を入れる。
着眼点W=\displaystyle\int F\,dx。位置エネルギーは保存力の仕事から U=-\displaystyle\int F\,dx として定義される。
例: F=-kx を積分すると \frac12kx^2、万有引力 -\dfrac{GMm}{r^2} を積分すると -\dfrac{GMm}r。
ポイント後回しでよい理由: 入試で出る位置エネルギーは mgh・\frac12kx^2・-\frac{GMm}r の3つでほぼ足り、F-xグラフの面積で代わりになる。例外: 数学Ⅲを使う難関大の物理では、積分で仕事を書かせる誘導がまれにある。
🎱
運動量と力積
運動量の変化=力積。外力がなければ運動量は保存し、衝突は「運動量保存+反発係数」の連立で解く。エネルギー保存とどちらが使えるかの見極めが山場。
運動量と力積
着眼点運動量の変化=受けた力積。向きを含むベクトルなので、1次元でも正の向きを決めて符号をつける。
\vec p=m\vec v,\qquad m\vec v'-m\vec v=\vec F\Delta t導出の一言: ma=F の a を \dfrac{v'-v}{\Delta t} と書いて両辺に \Delta t を掛けたもの。単位は \mathrm{kg\cdot m/s}=\mathrm{N\cdot s}。
使う場面: 打つ・はね返る・受け止めるなど、短い時間に大きな力がはたらくとき(平均の力を問われる)。
例題
1質量 0.15\ \mathrm{kg} のボールが 40\ \mathrm{m/s} で飛んできて、バットで逆向きに 30\ \mathrm{m/s} で打ち返された。ボールが受けた力積の大きさと、接触時間が 0.010\ \mathrm{s} のときの平均の力の大きさを求めよ。
解答
打ち返した向きを正: 初め -40、後 +30。
力積 0.15\times30-0.15\times(-40)=0.15\times70=10.5
平均の力 10.5/0.010=1050
11\ \mathrm{N\cdot s}、1.1\times10^3\ \mathrm{N}
2質量 2.0\ \mathrm{kg} の物体の速度が、東向き 3.0\ \mathrm{m/s} から北向き 4.0\ \mathrm{m/s} に変わった。受けた力積の大きさを求めよ。
解答
成分で引く。東向き成分: 0-2.0\times3.0=-6.0、北向き成分: 2.0\times4.0-0=8.0。
大きさ \sqrt{6.0^2+8.0^2}=10
10\ \mathrm{N\cdot s}(向きは西向き成分と北向き成分をもつ北西寄り)
注意はね返りで速さの差(40-30)を使う誤りが多い。逆向きなら符号が変わるので 40+30 になる。
着眼点衝突中の力は一定ではない。力の時間変化がグラフで与えられたら、面積が力積。
例題
1静止していた質量 0.10\ \mathrm{kg} のボールを蹴った。ボールが受けた力は 0.020\ \mathrm{s} の間に0から最大 200\ \mathrm{N} まで一定の割合で増え、また一定の割合で0に戻った(三角形のグラフ)。蹴られた直後の速さを求めよ。
解答
力積=三角形の面積 \frac12\times0.020\times200=2.0\ \mathrm{N\cdot s}。
0.10v-0=2.0 より v=20
20\ \mathrm{m/s}(平均の力は 2.0/0.020=100\ \mathrm{N} で、最大値の半分)
着眼点物体系に外力がはたらかない(または外力の力積が無視できる)なら、全運動量は一定。内力(衝突で押し合う力)は打ち消し合う。
m_1v_1+m_2v_2=m_1v_1'+m_2v_2'導出の一言: 衝突中、AがBから受ける力積とBがAから受ける力積は作用・反作用で大きさが等しく逆向き。足すと0になる。
摩擦・重力などの外力があっても、衝突の一瞬はその力積が小さいので衝突前後では使ってよい。
例題
1なめらかな水平面上で、3.0\ \mathrm{m/s} で進む質量 2.0\ \mathrm{kg} の台車が、静止している 1.0\ \mathrm{kg} の台車に衝突して一体になった。衝突後の速さを求めよ。
解答
2.0\times3.0+0=(2.0+1.0)v より v=2.0
2.0\ \mathrm{m/s}
2右向きに 3.0\ \mathrm{m/s} で進む 2.0\ \mathrm{kg} の物体と、左向きに 4.0\ \mathrm{m/s} で進む 1.0\ \mathrm{kg} の物体が正面衝突して一体になった。衝突後の速度を求めよ。
解答
右向き正: 2.0\times3.0+1.0\times(-4.0)=3.0v より v=\dfrac{2.0}{3.0}=0.666\cdots
右向きに 0.67\ \mathrm{m/s}
注意運動量は保存しても、運動エネルギーは一般に保存しない(例1では 9.0\ \mathrm{J} が 6.0\ \mathrm{J} に減る)。
着眼点e=(離れる速さ)÷(近づく速さ)。e=1 弾性衝突、0<e<1 非弾性衝突、e=0 完全非弾性(一体になる)。
e=-\frac{v_1'-v_2'}{v_1-v_2}\qquad(0\le e\le1)床(動かない)との衝突なら e=-\dfrac{v'}{v}、つまり速さが e 倍になってはね返る。
例題
1小球が速さ 10\ \mathrm{m/s} で床に垂直に衝突した。反発係数 0.50 のとき、はね返る速さを求めよ。
解答
v'=0.50\times10=5.0
5.0\ \mathrm{m/s}
2高さ 2.0\ \mathrm{m} から静かに落とした小球が床ではね返った。反発係数 0.60 のとき、はね上がる高さを求めよ。
解答
床に当たる速さ v=\sqrt{2gh}、はね返る速さ ev。上がる高さは \dfrac{(ev)^2}{2g}=e^2h。
0.60^2\times2.0=0.72
0.72\ \mathrm{m}(g の値によらない)
注意マイナスを忘れると e が負になる。「近づく速さ」「離れる速さ」と言葉で置けば符号ミスが減る。
着眼点未知数は衝突後の2つの速度。運動量保存と反発係数の2式で決まる。
例題
1速さ 4.0\ \mathrm{m/s} の小球Aが、静止している同じ質量の小球Bに弾性衝突(e=1)した。衝突後の速度を求めよ。
解答
m\times4.0=mv_A'+mv_B'、v_B'-v_A'=1\times4.0。
足して 2v_B'=8.0 より v_B'=4.0、v_A'=0
Aは止まり、Bが 4.0\ \mathrm{m/s} で進む(等質量の弾性衝突は速度の交換)
2右向きに 3.0\ \mathrm{m/s} で進む 2.0\ \mathrm{kg} の小球Aが、静止している 1.0\ \mathrm{kg} の小球Bに衝突した。反発係数 0.50 のとき、衝突後の速度をそれぞれ求めよ。
解答
運動量: 2.0\times3.0=2.0v_A'+1.0v_B' … ①
反発: v_B'-v_A'=0.50\times3.0=1.5 … ②
②より v_B'=v_A'+1.5 を①へ: 6.0=3.0v_A'+1.5、v_A'=1.5、v_B'=3.0
A: 右向き 1.5\ \mathrm{m/s}、B: 右向き 3.0\ \mathrm{m/s}(検算: 2.0\times1.5+1.0\times3.0=6.0)
ポイント答えが出たら「後ろの物体が前の物体を追い越していないか(v_A'\le v_B')」を確認させる。
着眼点静止していた物体が分かれるとき、運動量の和は0のまま。軽いほうが速く、逆向きに動く。
0=m_1v_1+m_2v_2\ \Rightarrow\ \frac{v_1}{v_2}=-\frac{m_2}{m_1}
例題
1静止していた質量 3.0\ \mathrm{kg} の物体が、内部の力で 1.0\ \mathrm{kg} と 2.0\ \mathrm{kg} に分裂した。1.0\ \mathrm{kg} のほうが 4.0\ \mathrm{m/s} で動き出したとき、2.0\ \mathrm{kg} のほうの速度を求めよ。
解答
0=1.0\times4.0+2.0v より v=-2.0
逆向きに 2.0\ \mathrm{m/s}
2なめらかな床の上に静止している質量 40\ \mathrm{kg} の台車から、質量 60\ \mathrm{kg} の人が、台車に対して 5.0\ \mathrm{m/s} の速さで水平に飛び降りた。床に対する人と台車の速度を求めよ。
解答
人の向きを正。床に対する人の速度 v、台車の速度 V。
運動量: 0=60v+40V
相対速度: v-V=5.0
v=5.0+V を代入: 60(5.0+V)+40V=0、V=-3.0、v=2.0
人は 2.0\ \mathrm{m/s}、台車は逆向きに 3.0\ \mathrm{m/s}
注意「台車に対して 5.0\ \mathrm{m/s}」をそのまま床に対する速度として運動量保存に入れない。保存則に入れるのは必ず床(静止系)から見た速度。
着眼点なめらかな面は面に垂直な力しか及ぼさないので、面に平行な成分は変わらない。垂直な成分だけ e 倍になって反転する。
例題
1小球がなめらかな床に、床と 30^\circ の角をなす向きに速さ 10\ \mathrm{m/s} で衝突した。反発係数 0.50 のとき、はね返った直後の速さを有効数字2桁で求めよ。
解答
平行成分 10\cos30^\circ=5\sqrt3\ \mathrm{m/s}(そのまま)。垂直成分 10\sin30^\circ=5.0 → 0.50\times5.0=2.5\ \mathrm{m/s}。
速さ \sqrt{(5\sqrt3)^2+2.5^2}=\sqrt{75+6.25}=\sqrt{81.25}=9.01\cdots
9.0\ \mathrm{m/s}(床となす角 \phi は \tan\phi=e\tan30^\circ で、入射より浅くなる)
注意速さ全体に e を掛けない。e が掛かるのは面に垂直な成分だけ。
応用の型
着眼点e<1 の衝突では運動エネルギーが減る。衝突前後の K をそれぞれ計算して引くのが基本。
\Delta K=\frac12\cdot\frac{m_1m_2}{m_1+m_2}(v_1-v_2)^2(1-e^2)検算用の式。e=1 なら損失0、e=0(一体化)で損失が最大。
例題
13.0\ \mathrm{m/s} で進む 2.0\ \mathrm{kg} の台車が、静止している 1.0\ \mathrm{kg} の台車と一体になった。失われた運動エネルギーを求めよ。
解答
衝突後の速さは 2.0\ \mathrm{m/s}(運動量保存)。
前 \frac12\times2.0\times3.0^2=9.0\ \mathrm{J}、後 \frac12\times3.0\times2.0^2=6.0\ \mathrm{J}
3.0\ \mathrm{J}(検算: \frac12\times\frac{2.0}{3.0}\times9.0\times1=3.0)
着眼点運動量はベクトルなので、x 方向と y 方向でそれぞれ保存の式を立てる。
例題
1なめらかな水平面上で、東向きに 4.0\ \mathrm{m/s} で進む 1.0\ \mathrm{kg} の物体と、北向きに 4.0\ \mathrm{m/s} で進む 1.0\ \mathrm{kg} の物体が衝突して一体になった。衝突後の速さと向きを求めよ。
解答
東: 1.0\times4.0=2.0v_x より v_x=2.0。北: 1.0\times4.0=2.0v_y より v_y=2.0。
速さ \sqrt{2.0^2+2.0^2}=2\sqrt2=2.82\cdots
北東向き(東から 45^\circ)に 2.8\ \mathrm{m/s}
ポイント等質量の弾性衝突で一方がはじめ静止なら、衝突後の2物体は直角の向きに進む(正面衝突を除く)。
着眼点外力がなければ重心の速度は一定。はじめ静止なら重心は動かないので、人が進んだ分だけ台車が逆に動く。
v_G=\frac{m_1v_1+m_2v_2}{m_1+m_2}(全運動量÷全質量)
例題
1なめらかな床の上に静止している長さ 4.0\ \mathrm{m}、質量 150\ \mathrm{kg} の台車の一端に、質量 50\ \mathrm{kg} の人が立っている。人が他端まで歩いたとき、台車は床に対してどれだけ動くか。
解答
床に対する人の変位 x_p、台車の変位 x_c。重心が動かないので 50x_p+150x_c=0。
台車に対して人は 4.0\ \mathrm{m} 進むので x_p-x_c=4.0。
x_p=4.0+x_c を代入: 200+200x_c=0、x_c=-1.0
人と逆向きに 1.0\ \mathrm{m}(人は床に対して 3.0\ \mathrm{m} 進む)
差がつく動く台の上を滑る物体(水平方向だけ運動量保存)
着眼点なめらかな床の上の台では、水平方向には外力がないので水平方向の運動量が保存する。鉛直方向は重力・垂直抗力があるので保存しない。摩擦がなければ力学的エネルギーも保存。
例題
1なめらかな床の上に、なめらかな曲面をもつ質量 2.0\ \mathrm{kg} の台が静止している。曲面上の高さ 0.30\ \mathrm{m} の点から質量 1.0\ \mathrm{kg} の小物体を静かに放した。小物体が曲面の下端(水平)から離れるときの、小物体と台の速さを求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
水平の運動量: 0=1.0v+2.0V より v=-2V。
エネルギー: 1.0\times9.8\times0.30=\frac12\times1.0v^2+\frac12\times2.0V^2
2.94=2V^2+V^2=3V^2、V^2=0.98、|V|=0.989\cdots、|v|=1.97\cdots
小物体 2.0\ \mathrm{m/s}、台 0.99\ \mathrm{m/s}(逆向き)
注意台が固定されているとき(v=\sqrt{2gh}\fallingdotseq2.4\ \mathrm{m/s})と答えが違う。台が動けば台も運動エネルギーをもつ分、小物体は遅くなる。
着眼点ガスを噴き出すたびに、噴き出したガスと残りの本体の間で運動量が保存する。
1回だけ噴射する問題は「分裂」と同じ。連続的に噴射し続ける問題は、微小な質量ごとに保存則を立てて積分する必要がある。
ポイント後回しでよい理由: 連続噴射の式は積分が必要で、標準的な入試では1回の分裂として出るのがほとんど。例外: 難関大の発展問題で誘導つきで出ることがある。
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円運動・慣性力・万有引力
等速円運動は「中心向きの合力=mv^2/r」。加速する観測者から見るときは慣性力を加える。万有引力では人工衛星の円運動・ケプラーの法則・エネルギーを組み合わせる。
等速円運動
着眼点1周 2\pi ラジアンを周期 T で回る。v=r\omega が速さと角速度をつなぐ。
\omega=\frac{2\pi}T,\qquad v=r\omega=\frac{2\pi r}T,\qquad n=\frac1T\omega の単位は \mathrm{rad/s}、回転数 n の単位は \mathrm{Hz}(1秒あたりの回転数)。
例題
1半径 0.50\ \mathrm{m} の円周上を周期 2.0\ \mathrm{s} で等速円運動する物体の、角速度と速さを求めよ。\pi=3.14 とする。
解答
\omega=\dfrac{2\pi}{2.0}=\pi=3.14\ \mathrm{rad/s}、v=0.50\times3.14=1.57
3.1\ \mathrm{rad/s}、1.6\ \mathrm{m/s}
確認問題
答え
n=0.50\ \mathrm{Hz}、\omega=2\pi\times0.50=\pi\fallingdotseq3.1\ \mathrm{rad/s}
着眼点等速円運動の加速度は中心向きで v^2/r。「向心力」という新しい力はなく、重力・張力・摩擦力などの合力の中心向き成分がその役をする。
a=\frac{v^2}r=r\omega^2,\qquad m\frac{v^2}r=F(F は物体にはたらく力の合力の中心向き成分)
導出の一言: 速さは一定でも向きが変わるので加速度がある。微小時間 \Delta t に速度は中心向きに v\omega\Delta t 変わるので a=v\omega=v^2/r。
使う場面: 円運動する物体の運動方程式は「中心向き」を正にとって立てる。
例題
1なめらかな水平面上で、長さ 0.50\ \mathrm{m} の糸につけた質量 0.20\ \mathrm{kg} の小球を、速さ 2.0\ \mathrm{m/s} で等速円運動させた。糸の張力を求めよ。
解答
張力が中心向きの力: T=0.20\times\dfrac{2.0^2}{0.50}=1.6
1.6\ \mathrm{N}
2自動車が半径 50\ \mathrm{m} の水平なカーブを 10\ \mathrm{m/s} で曲がる。滑らないために必要な、タイヤと路面の間の静止摩擦係数の最小値を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
中心向きの力は静止摩擦力: m\dfrac{v^2}r\le\mu mg
\mu\ge\dfrac{v^2}{rg}=\dfrac{100}{50\times9.8}=0.204\cdots
0.20
注意力の図に「向心力」を別の矢印として描き足さない。描くのは重力・張力・抗力・摩擦力だけで、その合力が mv^2/r になる。
着眼点鉛直方向はつりあい、水平方向(中心向き)は円運動の運動方程式。張力を2方向に分ける。
糸の長さ L、鉛直となす角 \theta、半径 r=L\sin\theta。
T\cos\theta=mg,\qquad T\sin\theta=mr\omega^2\ \Rightarrow\ \omega=\sqrt{\frac g{L\cos\theta}}例題
1長さ 0.50\ \mathrm{m} の糸に質量 0.10\ \mathrm{kg} のおもりをつけ、糸が鉛直と 60^\circ をなすように水平面内で等速円運動させた。角速度と張力を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
鉛直: T\cos60^\circ=mg より T=2mg=2\times0.10\times9.8=1.96\ \mathrm{N}
水平: T\sin60^\circ=m(0.50\sin60^\circ)\omega^2 より T=0.50m\omega^2、\omega^2=\dfrac{1.96}{0.050}=39.2、\omega=6.26\cdots
6.3\ \mathrm{rad/s}、2.0\ \mathrm{N}(検算: \sqrt{g/(L\cos\theta)}=\sqrt{9.8/0.25}=\sqrt{39.2})
注意半径を糸の長さ L にしない。半径は L\sin\theta。
着眼点速さが場所で変わるので「エネルギー保存で速さ → 中心向きの運動方程式で張力・垂直抗力」の2段構え。糸がたるむ・面から離れるのは張力・抗力が0になるとき。
最高点(糸の長さ L): m\dfrac{v^2}L=T+mg。T\ge0 より、一周するには最高点で v^2\ge gL。
例題
1長さ 0.50\ \mathrm{m} の糸の先のおもりに、最下点で水平に初速 v_0 を与える。糸がたるまずに一周するための v_0 の最小値を求めよ。g=10\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
最高点の速さ v: エネルギー保存 \frac12mv_0^2=\frac12mv^2+mg\times2L
最高点の運動方程式 m\dfrac{v^2}L=T+mg、T\ge0 より v^2\ge gL。
よって v_0^2=v^2+4gL\ge5gL=5\times10\times0.50=25
5.0\ \mathrm{m/s}
2半径 0.30\ \mathrm{m} のなめらかな半球面(凸面)の頂上から、小物体が静かに滑り出した。面から離れるのは、球の中心から高さいくらの点か。
解答
鉛直から \theta の位置で、速さはエネルギー保存より v^2=2gR(1-\cos\theta)。
中心向き: mg\cos\theta-N=m\dfrac{v^2}R。離れるのは N=0 のとき: g\cos\theta=2g(1-\cos\theta)、\cos\theta=\dfrac23
高さ R\cos\theta=0.30\times\dfrac23=0.20
中心から 0.20\ \mathrm{m} の高さ(g にも質量にもよらない)
注意最高点で v=0 でよいと考えるのは誤り(棒で支える場合は v\ge0 でよいが、糸では v^2\ge gL が必要)。
慣性力
着眼点加速度 \vec a で動く観測者から見ると、すべての物体に -m\vec a(加速度と逆向き)の慣性力がはたらいているように見える。慣性力を加えれば、その観測者の中でつりあいの式が使える。
\vec F_{\mathrm{i}}=-m\vec a使う場面: 加速する電車・エレベーターの中の現象。地上から運動方程式で解いても同じ答えになるので、楽なほうを選ぶ。
例題
1水平に 2.0\ \mathrm{m/s^2} で加速している電車の天井からおもりをつるすと、糸は鉛直から傾いて静止して見えた。傾きの角 \theta について \tan\theta を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
電車内から見ると、重力 mg(下)、慣性力 ma(後ろ向き)、張力がつりあう。
\tan\theta=\dfrac{ma}{mg}=\dfrac{2.0}{9.8}=0.204\cdots
\tan\theta=0.20(後ろ向きに傾く)
2上向きに 2.0\ \mathrm{m/s^2} で加速するエレベーター内で、質量 50\ \mathrm{kg} の人が体重計に乗っている。慣性力を使って体重計の目盛り(押す力)を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
エレベーター内から見ると、重力 490\ \mathrm{N} と慣性力 50\times2.0=100\ \mathrm{N}(下向き)、垂直抗力 N がつりあう。
N=490+100=590
5.9\times10^2\ \mathrm{N}(地上からの運動方程式と同じ結果)
注意慣性力は加速する観測者から見るときだけ入れる。地上から運動方程式を立てるときに慣性力も入れると二重に数えることになる。
着眼点円運動する物体と一緒に回る観測者から見ると、中心から外向きに mr\omega^2 の慣性力(遠心力)がはたらき、つりあって見える。
F=mr\omega^2=m\frac{v^2}r
例題
1水平な回転円板の上、中心から 0.20\ \mathrm{m} の位置に小物体を置いた。静止摩擦係数が 0.40 のとき、小物体が滑らずに円板と一緒に回れる角速度の最大値を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
円板上から見て、遠心力と静止摩擦力のつりあい: mr\omega^2\le\mu mg
\omega\le\sqrt{\dfrac{0.40\times9.8}{0.20}}=\sqrt{19.6}=4.42\cdots
4.4\ \mathrm{rad/s}
注意地上(静止系)から見るときに遠心力を描くのは誤り。どちらの立場で式を立てるか、最初に宣言させる。
万有引力
着眼点万有引力は距離の2乗に反比例。地表では mg=\dfrac{GMm}{R^2} なので、GM=gR^2 と置きかえられる(G や M が与えられないとき)。
F=G\frac{Mm}{r^2},\qquad GM=gR^2r は地球の中心からの距離(地表からの高さではない)。
例題
1地表から地球の半径 R と同じ高さの位置では、物体が受ける万有引力は地表の何倍か。
解答
中心からの距離は 2R。\left(\dfrac{R}{2R}\right)^2=\dfrac14
\dfrac14 倍
2地表すれすれを等速円運動する人工衛星の速さ(第1宇宙速度)を求めよ。地球の半径 6.4\times10^6\ \mathrm{m}、g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
解答
m\dfrac{v^2}R=mg より v=\sqrt{gR}=\sqrt{9.8\times6.4\times10^6}=\sqrt{6.27\times10^7}=7.9\times10^3
7.9\times10^3\ \mathrm{m/s}
注意高さ h の位置では距離を R+h にする。h だけを入れるミスが多い。
着眼点万有引力が向心力の役をする。軌道半径が大きいほど遅く、周期は長い。
m\frac{v^2}r=G\frac{Mm}{r^2}\ \Rightarrow\ v=\sqrt{\frac{GM}r},\qquad T=\frac{2\pi r}v=2\pi\sqrt{\frac{r^3}{GM}}
例題
1人工衛星の円軌道の半径を4倍にすると、速さと周期はそれぞれ何倍になるか。
解答
v\propto\dfrac1{\sqrt r} より \dfrac12 倍。T\propto r^{3/2} より 4^{3/2}=8 倍。
速さ \dfrac12 倍、周期 8 倍
2地表すれすれを回る人工衛星の周期を有効数字2桁で求めよ。地球の半径 6.4\times10^6\ \mathrm{m}、g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\pi=3.14 とする。
解答
GM=gR^2 を使うと T=2\pi\sqrt{\dfrac{R}{g}}=2\times3.14\times\sqrt{\dfrac{6.4\times10^6}{9.8}}=6.28\times808=5.07\times10^3
5.1\times10^3\ \mathrm{s}(約85分)
着眼点第2法則(面積速度一定)は近い点ほど速いこと、第3法則(T^2\propto a^3)は軌道の大きさと周期の関係。
導出の一言: 円軌道なら T=2\pi\sqrt{r^3/GM} を2乗して T^2/r^3=4\pi^2/GM(一定)。
| 法則 | 内容 | 使う場面 |
|---|
| 第1法則 | 惑星は太陽を1つの焦点とする楕円軌道を回る | 軌道の形の確認 |
| 第2法則 | 面積速度 \frac12rv\sin\theta が一定。近日点・遠日点では r_1v_1=r_2v_2 | 近い点と遠い点の速さの比 |
| 第3法則 | \dfrac{T^2}{a^3} が一定(a は半長軸) | 周期と軌道の大きさの比 |
例題
1彗星の近日点距離が r、遠日点距離が 3r で、近日点での速さが v である。遠日点での速さを求めよ。
解答
近日点・遠日点では速度と動径が垂直なので rv=3r\cdot v'
\dfrac v3
2太陽のまわりを回る小惑星の軌道の半長軸が地球の軌道半径の 4.0 倍である。この小惑星の公転周期は何年か。
解答
T^2\propto a^3 より T=1\times4.0^{3/2}=8.0
8.0 年
注意第3法則の a は半長軸(長軸の半分)。近日点と遠日点の距離の和の半分であって、どちらか一方ではない。
着眼点無限遠を基準に U=-\dfrac{GMm}r(常に負)。無限遠まで飛んでいくには、力学的エネルギーが0以上であればよい。
U=-G\frac{Mm}r,\qquad \frac12mv^2-G\frac{Mm}r=E\ (\mathrm{const.})
例題
1地表から打ち出した物体が地球の引力圏から脱出するための最小の速さ(第2宇宙速度)を求めよ。地球の半径 6.4\times10^6\ \mathrm{m}、g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。空気抵抗と地球の自転は無視する。
解答
\frac12mv^2-\dfrac{GMm}R\ge0 より v\ge\sqrt{\dfrac{2GM}R}=\sqrt{2gR}
\sqrt{2\times9.8\times6.4\times10^6}=\sqrt{1.254\times10^8}=1.12\times10^4
1.1\times10^4\ \mathrm{m/s}(第1宇宙速度の \sqrt2 倍)
注意地表付近の mgh はこの式の近似。高さが地球の半径と比べて無視できないときは mgh を使わない。
差がつく楕円軌道の速さ(面積速度+エネルギーの連立)
着眼点近地点と遠地点の速さは、面積速度一定(r_1v_1=r_2v_2)と力学的エネルギー保存の2式で決まる。
例題
1地球(質量 M)を焦点とする楕円軌道で、近地点距離 r、遠地点距離 3r の人工衛星がある。近地点での速さ v_1 を G,M,r で表せ。
解答
面積速度: rv_1=3rv_2 より v_2=\dfrac{v_1}3
エネルギー: \frac12mv_1^2-\dfrac{GMm}r=\frac12m\dfrac{v_1^2}9-\dfrac{GMm}{3r}
\frac12v_1^2\cdot\dfrac89=\dfrac{2GM}{3r} より v_1^2=\dfrac{3GM}{2r}
v_1=\sqrt{\dfrac{3GM}{2r}}(半径 r の円軌道の速さ \sqrt{GM/r} より速い)
着眼点自転する地球上では、万有引力に遠心力が加わった合力が「重力」になる。赤道上で遠心力が最大。
赤道上の遠心力による加速度は R\omega^2。\omega=\dfrac{2\pi}{24\times3600}\fallingdotseq7.3\times10^{-5}\ \mathrm{rad/s}、R=6.4\times10^6\ \mathrm{m} とすると R\omega^2\fallingdotseq0.034\ \mathrm{m/s^2} で、g の1%に満たない。
ポイント後回しでよい理由: 入試の大半は自転を無視する設定で、遠心力の効果も小さい。例外: 遠心力の理解を問う難関大の問題や、緯度による g の違いを問う問題では使う。
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単振動
復元力 F=-Kx がはたらけば単振動で、周期は 2\pi\sqrt{m/K}。振動の中心はつりあいの位置。ばね振り子・単振り子・浮きまで同じ型で解ける。
単振動の式
着眼点単振動は等速円運動の影を見たもの。速さは中心で最大 A\omega、加速度は端で最大 A\omega^2 で、常に中心向き。
x=A\sin\omega t,\quad v=A\omega\cos\omega t,\quad a=-A\omega^2\sin\omega t=-\omega^2xA 振幅、\omega 角振動数、周期 T=\dfrac{2\pi}\omega。
使う場面: a=-\omega^2x の形が出てきたら単振動と判定し、\omega を読み取る。
| 位置 | 速さ | 加速度の大きさ |
|---|
| 振動の中心(x=0) | 最大 A\omega | 0 |
| 振動の端(x=\pm A) | 0 | 最大 A\omega^2 |
例題
1振幅 0.10\ \mathrm{m}、周期 2.0\ \mathrm{s} の単振動の、速さの最大値と加速度の大きさの最大値を求めよ。\pi=3.14 とする。
解答
\omega=\dfrac{2\pi}{2.0}=\pi。
v_{\max}=A\omega=0.10\times3.14=0.314、a_{\max}=A\omega^2=0.10\times3.14^2=0.986\cdots
0.31\ \mathrm{m/s}、0.99\ \mathrm{m/s^2}
注意端で速さ0だが加速度は最大。「止まっている=力が0」ではない。
着眼点位置から時間を求めるときは、半径 A の円を描いて回転角を読む。回転角÷2\pi×周期=時間。
中心から \dfrac A2 まで: 回転角 \dfrac\pi6、時間 \dfrac T{12}。端から \dfrac A2 まで: 回転角 \dfrac\pi3、時間 \dfrac T6。
例題
1周期 1.2\ \mathrm{s} の単振動で、振動の中心から x=\dfrac A2 の位置まで移動する最短時間を求めよ。
解答
A\sin\omega t=\dfrac A2 より \omega t=\dfrac\pi6。t=\dfrac{1}{12}T=\dfrac{1.2}{12}=0.10
0.10\ \mathrm{s}
2同じ単振動で、振動の端(x=A)から x=\dfrac A2 の位置まで移動する最短時間を求めよ。
解答
端から測ると x=A\cos\omega t。\cos\omega t=\dfrac12 より \omega t=\dfrac\pi3、t=\dfrac T6=0.20
0.20\ \mathrm{s}(距離は同じ \frac A2 でも、端の近くは遅いので時間が倍かかる)
注意時間は距離に比例しない。\frac A2 動くのに \frac T8(\frac14 周期の半分)としてしまうミスが多い。
着眼点つりあいの位置からのずれ x に対して、合力が F=-Kx の形になれば単振動。K を読み取れば周期が出る。
ma=-Kx\ \Rightarrow\ \omega=\sqrt{\frac Km},\qquad T=2\pi\sqrt{\frac mK}手順: ①つりあいの位置を求める ②そこから x ずらした位置での合力を書く ③-Kx の形にして K を読む。振動の中心は必ずつりあいの位置。
例題
1傾斜角 30^\circ のなめらかな斜面上で、ばね定数 20\ \mathrm{N/m} のばねに質量 0.20\ \mathrm{kg} の物体をつけて振動させた。周期を求めよ。\pi=3.14 とする。
解答
つりあいの位置(kx_0=mg\sin30^\circ)から斜面下向きに x ずらすと、合力は mg\sin30^\circ-k(x_0+x)=-kx。よって K=k。
T=2\pi\sqrt{\dfrac{0.20}{20}}=2\times3.14\times0.10=0.628
0.63\ \mathrm{s}(傾斜角によらない。重力はつりあいの位置をずらすだけ)
ばね振り子と単振り子
着眼点周期は質量とばね定数だけで決まり、振幅によらない。引いて放した距離がそのまま振幅。
T=2\pi\sqrt{\frac mk}
例題
1なめらかな水平面上で、ばね定数 50\ \mathrm{N/m} のばねに質量 0.50\ \mathrm{kg} の物体をつけた。周期を求めよ。\pi=3.14 とする。
解答
\omega=\sqrt{\dfrac{50}{0.50}}=10\ \mathrm{rad/s}、T=\dfrac{2\times3.14}{10}=0.628
0.63\ \mathrm{s}
2上のばね振り子を、自然長から 0.10\ \mathrm{m} 引いて静かに放した。速さの最大値と、それが生じる位置を答えよ。
解答
振幅 A=0.10\ \mathrm{m}、v_{\max}=A\omega=0.10\times10=1.0
自然長の位置(振動の中心)で 1.0\ \mathrm{m/s}(検算: \frac12kA^2=0.25\ \mathrm{J}=\frac12\times0.50\times1.0^2)
注意T=2\pi\sqrt{k/m} と分母分子を逆にしやすい。「重いほどゆっくり」で確かめる。
着眼点振動の中心は自然長ではなく、つりあいの位置(kx_0=mg)。周期は水平のときと同じ 2\pi\sqrt{m/k}。
例題
1ばね定数 49\ \mathrm{N/m} のばねに質量 0.20\ \mathrm{kg} のおもりをつけ、ばねが自然長の位置で静かに放した。振幅と周期を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\pi=3.14 とする。
解答
つりあいの伸び x_0=\dfrac{0.20\times9.8}{49}=0.040\ \mathrm{m}。自然長(速さ0)は端なので振幅 0.040\ \mathrm{m}。
T=2\pi\sqrt{\dfrac{0.20}{49}}=6.28\times0.0639=0.401\cdots
振幅 4.0\ \mathrm{cm}、周期 0.40\ \mathrm{s}(最大の伸びは 2x_0=8.0\ \mathrm{cm})
注意振幅を「自然長からの最大の伸び」としない。振幅は中心(つりあいの位置)から端までの距離。
着眼点振れ幅が小さいとき単振動とみなせる。周期は糸の長さと g だけで決まり、おもりの質量にも振幅にもよらない。
T=2\pi\sqrt{\frac Lg}導出の一言: 円弧に沿った復元力は -mg\sin\theta。\theta が小さいと \sin\theta\fallingdotseq\theta=\dfrac xL なので F=-\dfrac{mg}Lx、K=\dfrac{mg}L。
例題
1長さ 1.0\ \mathrm{m} の単振り子の周期を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\pi=3.14 とする。
解答
T=2\times3.14\times\sqrt{\dfrac{1.0}{9.8}}=6.28\times0.319=2.00\cdots
2.0\ \mathrm{s}
2同じ振り子を重力加速度が地球の \dfrac16 の天体に持っていくと、周期は何倍になるか。また、地球上で周期を2倍にするには糸の長さを何倍にすればよいか。
解答
T\propto\dfrac1{\sqrt g} より \sqrt6\fallingdotseq2.4 倍。T\propto\sqrt L より長さは 4 倍。
約 2.4 倍、4 倍
注意振れ幅が大きいと周期の式は成り立たない(近似が崩れる)。「小さく振らせる」という条件を確認する。
着眼点振動中、運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定で \frac12KA^2。任意の位置の速さが周期を使わずに出る。
\frac12mv^2+\frac12Kx^2=\frac12KA^2\ \Rightarrow\ v=\omega\sqrt{A^2-x^2}x はつりあいの位置(振動の中心)からの変位。鉛直ばねでも、中心を基準にとればこの形で重力をまとめて扱える。
例題
1ばね定数 50\ \mathrm{N/m}、質量 0.50\ \mathrm{kg}、振幅 0.10\ \mathrm{m} の水平ばね振り子で、中心から 0.060\ \mathrm{m} の位置での速さを求めよ。
解答
\frac12\times0.50v^2+\frac12\times50\times0.060^2=\frac12\times50\times0.10^2
v^2=100\times(0.010-0.0036)=0.64、v=0.80
0.80\ \mathrm{m/s}
応用の型
着眼点慣性力を重力に合わせた「見かけの重力加速度 g'」で g を置きかえる。
上向きに加速度 a: g'=g+a。下向きに a: g'=g-a。水平に a: g'=\sqrt{g^2+a^2}(傾いた向きに)。
T=2\pi\sqrt{\frac L{g'}}例題
1上向きに 2.2\ \mathrm{m/s^2} で加速しているエレベーター内で、長さ 1.0\ \mathrm{m} の単振り子の周期を求めよ。g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\pi=3.14 とする。
解答
g'=9.8+2.2=12\ \mathrm{m/s^2}。T=6.28\times\sqrt{\dfrac{1.0}{12}}=6.28\times0.289=1.81\cdots
1.8\ \mathrm{s}(静止時の 2.0\ \mathrm{s} より短い)
注意ばね振り子の周期 2\pi\sqrt{m/k} は g を含まないので、エレベーターが加速しても変わらない(つりあいの位置がずれるだけ)。
差がつく2本のばねではさむ・浮きの振動(K を読み取る)
着眼点公式を覚えるのではなく、x ずらしたときの合力を書いて K を読む。両側のばねなら K=k_1+k_2、液体に浮く柱なら K=\rho Sg。
例題
1なめらかな水平面上で、質量 0.50\ \mathrm{kg} の物体を、ばね定数 30\ \mathrm{N/m} と 20\ \mathrm{N/m} のばねで両側からつないだ。周期を求めよ。\pi=3.14 とする。
解答
右に x ずらすと、両方のばねが左向きの力を及ぼし F=-(30+20)x。K=50\ \mathrm{N/m}。
T=2\pi\sqrt{\dfrac{0.50}{50}}=6.28\times0.10=0.628
0.63\ \mathrm{s}
2断面積 1.0\times10^{-3}\ \mathrm{m^2}、質量 0.40\ \mathrm{kg} の一様な円柱が水に鉛直に浮いている。少し押し下げて放したときの周期を求めよ。水の密度 1.0\times10^3\ \mathrm{kg/m^3}、g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\pi=3.14 とする。
解答
つりあいから x 沈めると、浮力が \rho Sxg 増え、合力は -\rho Sg\,x。K=1.0\times10^3\times1.0\times10^{-3}\times9.8=9.8\ \mathrm{N/m}。
T=2\pi\sqrt{\dfrac{0.40}{9.8}}=6.28\times0.202=1.26\cdots
1.3\ \mathrm{s}(水の抵抗は無視)
注意両側からはさむつなぎ方は「並列」と同じ K=k_1+k_2。直列の式と混同しない。
差がつく放し方で式の形を決める(sin か cos か)
着眼点端で静かに放したら x=A\cos\omega t、中心で速さを与えたら x=A\sin\omega t。t=0 の位置と速度で決める。
例題
1周期 2.0\ \mathrm{s} のばね振り子を、中心から 0.10\ \mathrm{m} 引いて t=0 で静かに放した。位置 x を t の式で表し、t=\dfrac13\ \mathrm{s} での位置を求めよ。
解答
t=0 で x=A(端)なので x=0.10\cos\pi t。
t=\dfrac13: x=0.10\cos\dfrac\pi3=0.050
x=0.10\cos\pi t、中心から 0.050\ \mathrm{m}(引いた側)
ポイントx-tグラフが与えられたら、t=0 の値(0か \pm A か)と、その直後に増えるか減るかを見て式を選ぶ。
差がつく途中で振動が切り替わる(釘にかかる振り子)
着眼点半周期ごとに別の単振動になるなら、それぞれの半周期を足す。
例題
1長さ 1.0\ \mathrm{m} の単振り子の支点の真下 0.75\ \mathrm{m} の位置に釘があり、おもりが最下点を通って片側に振れるときは糸が釘にかかる。この振り子の周期を求めよ。振れ幅は小さく、g=9.8\ \mathrm{m/s^2}、\pi=3.14 とする。
解答
釘のない側: 長さ 1.0\ \mathrm{m} の半周期 \pi\sqrt{\dfrac{1.0}{9.8}}。釘のある側: 長さ 0.25\ \mathrm{m} の半周期 \pi\sqrt{\dfrac{0.25}{9.8}}=\dfrac12\pi\sqrt{\dfrac{1.0}{9.8}}。
合計 1.5\pi\sqrt{\dfrac{1.0}{9.8}}=1.5\times3.14\times0.319=1.50\cdots
1.5\ \mathrm{s}
ポイントばねから離れる・ばねに当たる問題も同じ考え方。単振動の区間と等速直線運動の区間に分けて時間を足す。
着眼点抵抗があると振幅がしだいに小さくなる(減衰振動)。外から周期的な力を加えると、固有振動数に近いとき振幅が大きくなる(共振)。
ポイント後回しでよい理由: 力学として式で解かせる問題は高校範囲ではまれ。例外: 共振の考え方は波動(弦・気柱の固有振動)や交流回路でも使うので、言葉の意味だけは押さえる。
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熱と気体
熱量の保存、熱力学第1法則、状態方程式、4つの状態変化、熱効率、分子運動論。気体の問題は「pV・内部エネルギー・仕事・熱」の4つを表で整理すれば崩れない。
熱量と比熱
着眼点比熱は「1 g(または1 kg)あたり」、熱容量は「その物体まるごと」。どちらが与えられているかで式が変わる。
Q=mc\Delta T,\qquad C=mc,\qquad Q=C\Delta T
m 質量、c 比熱 [\mathrm{J/(g\cdot K)}]、C 熱容量 [\mathrm{J/K}]、\Delta T 温度変化。温度差は ℃ でも K でも同じ数値。
例題
120 ℃ の水 200 g を 50 ℃ にするのに必要な熱量を求めよ。水の比熱を 4.2\ \mathrm{J/(g\cdot K)} とする。
解答
Q=200\times4.2\times(50-20)=25200\ \mathrm{J}
答 2.5\times10^4\ \mathrm{J}
2熱容量 80\ \mathrm{J/K} の容器に水 150 g が入っており、全体が 20 ℃ である。ここに熱量 2.3\times10^4\ \mathrm{J} を与えると全体は何 ℃ になるか。水の比熱を 4.2\ \mathrm{J/(g\cdot K)} とし、熱は外に逃げないとする。
解答
全体の熱容量は 80+150\times4.2=80+630=710\ \mathrm{J/K}。
\Delta T=\dfrac{2.3\times10^4}{710}=32.4\ \mathrm{K}
答 20+32=52 ℃(有効数字2桁で 52 ℃)
注意比熱の単位が \mathrm{J/(g\cdot K)} か \mathrm{J/(kg\cdot K)} かを必ず見る。質量の単位をそろえないと1000倍ずれる。
確認問題
1熱容量 50\ \mathrm{J/K} の金属球の温度を 10 K 上げる熱量は。
答え
Q=C\Delta T=500\ \mathrm{J}
着眼点高温側が失った熱量=低温側が得た熱量。未知の最終温度を t とおき、両辺とも正の量で書く。
(\text{高温側が失った熱量})=(\text{低温側が得た熱量})
状態変化の途中は温度が一定で、融解熱(蒸発熱)×質量 の熱が出入りする。
例題
180 ℃ の金属 100 g(比熱 0.40\ \mathrm{J/(g\cdot K)})を 20 ℃ の水 200 g に入れた。最終温度を求めよ。水の比熱 4.2\ \mathrm{J/(g\cdot K)}、容器の熱容量と熱の出入りは無視する。
解答
最終温度を t とする。
100\times0.40\times(80-t)=200\times4.2\times(t-20)
3200-40t=840t-16800
880t=20000、t=22.7
答 23 ℃
20 ℃ の氷 50 g を 40 ℃ の水 200 g に入れた。最終温度を求めよ。氷の融解熱 3.3\times10^2\ \mathrm{J/g}、水の比熱 4.2\ \mathrm{J/(g\cdot K)} とし、外との熱の出入りは無視する。
解答
まず氷が全部融けるか判定する。融かすのに 50\times330=16500\ \mathrm{J}。水が 0 ℃ まで下がって出せる熱は 200\times4.2\times40=33600\ \mathrm{J} なので全部融ける。
最終温度を t とすると
200\times4.2\times(40-t)=16500+50\times4.2\times t
33600-840t=16500+210t
1050t=17100、t=16.3
答 16 ℃
ポイント氷が絡むときは「全部融けるか」を先に判定する。融けきらないなら最終温度は 0 ℃ で、未知数は融けた質量になる。
注意(t-80) のように負になる書き方を片側だけにすると符号を誤る。両辺とも「高い温度−低い温度」で書く。
熱力学第1法則と仕事
着眼点内部エネルギーの増加 = 吸収した熱 + 外からされた仕事。「した仕事」か「された仕事」かを最初に決める。
\Delta U=Q+W
Q: 気体が吸収した熱(放出なら負)、W: 気体が外部からされた仕事。気体が外部にした仕事を W' とすると W=-W' で、Q=\Delta U+W' とも書ける。
例題
1気体に 500\ \mathrm{J} の熱を与えたところ、気体は膨張して外部に 200\ \mathrm{J} の仕事をした。内部エネルギーの変化を求めよ。
解答
Q=500\ \mathrm{J}、された仕事 W=-200\ \mathrm{J}。
\Delta U=500+(-200)=300\ \mathrm{J}
答 3.0\times10^2\ \mathrm{J} 増加
2熱を通さない容器の中の気体をピストンで圧縮し、外部から 150\ \mathrm{J} の仕事をした。内部エネルギーの変化と温度の変化を答えよ。
解答
断熱なので Q=0、W=+150\ \mathrm{J}。
\Delta U=0+150=150\ \mathrm{J}
答 内部エネルギーは 1.5\times10^2\ \mathrm{J} 増え、温度は上がる。
注意教科書・問題によって W を「された仕事」とするものと「した仕事」とするものがある。問題文の定義に合わせ、自分の答案では最初に「W: 気体がされた仕事」と書いておく。
確認問題
1気体が 300\ \mathrm{J} の熱を放出し、外部から 100\ \mathrm{J} の仕事をされた。\Delta U は。
答え
\Delta U=-300+100=-200\ \mathrm{J}(減少)
着眼点定圧なら W'=p\Delta V。圧力が変わるなら p-V グラフの下の面積。
W'=p\Delta V\quad(\text{定圧}),\qquad W'=\text{p-V グラフとV軸の間の面積}
膨張(V 増加)なら W'>0、圧縮なら W'<0。1サイクルで右回り(時計回り)なら、囲まれた面積だけ気体が正味の仕事をする。
例題
1圧力 1.0\times10^5\ \mathrm{Pa} 一定で、気体の体積が 2.0\times10^{-3}\ \mathrm{m^3} から 5.0\times10^{-3}\ \mathrm{m^3} になった。気体がした仕事を求めよ。
解答
W'=1.0\times10^5\times(5.0-2.0)\times10^{-3}=3.0\times10^2\ \mathrm{J}
答 3.0\times10^2\ \mathrm{J}
2p-V グラフ上で、状態 A(1.0\times10^5\ \mathrm{Pa}、1.0\times10^{-3}\ \mathrm{m^3})から状態 B(3.0\times10^5\ \mathrm{Pa}、3.0\times10^{-3}\ \mathrm{m^3})まで直線に沿って変化させた。気体がした仕事を求めよ。
解答
グラフの下は台形。
W'=\dfrac{(1.0+3.0)\times10^5}{2}\times(3.0-1.0)\times10^{-3}=2.0\times10^5\times2.0\times10^{-3}=4.0\times10^2\ \mathrm{J}
答 4.0\times10^2\ \mathrm{J}
注意体積を L のまま p\Delta V に入れない。1\ \mathrm{L}=1.0\times10^{-3}\ \mathrm{m^3}。
理想気体の状態変化
着眼点物質量が一定なら \frac{pV}{T} 一定。物質量が変わる・求めたいときは pV=nRT。温度は必ず絶対温度。
pV=nRT,\qquad \frac{pV}{T}=\text{一定}\ (n\ \text{一定})
絶対温度 T [K] = セルシウス温度 t [℃] + 273。
例題
11.0 mol の理想気体が 300 K、1.0\times10^5\ \mathrm{Pa} のときの体積を求めよ。気体定数 R=8.3\ \mathrm{J/(mol\cdot K)}。
解答
V=\dfrac{nRT}{p}=\dfrac{1.0\times8.3\times300}{1.0\times10^5}=2.49\times10^{-2}\ \mathrm{m^3}
答 2.5\times10^{-2}\ \mathrm{m^3}
227 ℃、1.0\times10^5\ \mathrm{Pa}、3.0 L の気体を、127 ℃、2.0 L にした。圧力を求めよ(物質量は一定)。
解答
T_1=300\ \mathrm{K}、T_2=400\ \mathrm{K}。
\dfrac{1.0\times10^5\times3.0}{300}=\dfrac{p\times2.0}{400}
p=1.0\times10^5\times\dfrac{3.0}{2.0}\times\dfrac{400}{300}=2.0\times10^5\ \mathrm{Pa}
答 2.0\times10^5\ \mathrm{Pa}
注意ボイル・シャルルの比の式では体積は L のままでよいが、pV=nRT に R=8.3 を使うなら \mathrm{Pa} と \mathrm{m^3} にそろえる。
着眼点内部エネルギーは温度だけで決まる。単原子分子なら U=\frac32nRT。どの変化でも \Delta U=nC_V\Delta T。
\text{単原子分子}:\ U=\frac32nRT,\quad C_V=\frac32R,\quad C_p=\frac52R
C_p=C_V+R\quad(\text{マイヤーの関係})
二原子分子(常温)は C_V=\frac52R。問題に指定がなければ与えられた値を使う。
例題
1単原子分子理想気体 2.0 mol の温度が 10 K 上がった。内部エネルギーの増加を求めよ。R=8.3\ \mathrm{J/(mol\cdot K)}。
解答
\Delta U=\frac32\times2.0\times8.3\times10=249\ \mathrm{J}
答 2.5\times10^2\ \mathrm{J}
2単原子分子理想気体 1.0 mol を、圧力一定で温度を 20 K 上げた。吸収した熱、気体がした仕事、内部エネルギーの増加を求めよ。R=8.3\ \mathrm{J/(mol\cdot K)}。
解答
W'=p\Delta V=nR\Delta T=1.0\times8.3\times20=166\ \mathrm{J}
\Delta U=\frac32nR\Delta T=249\ \mathrm{J}
Q=\Delta U+W'=415\ \mathrm{J}(=\frac52nR\Delta T と一致)
答 Q=4.2\times10^2\ \mathrm{J}、W'=1.7\times10^2\ \mathrm{J}、\Delta U=2.5\times10^2\ \mathrm{J}
ポイント定圧変化では p\Delta V=nR\Delta T と置き換えると、体積を出さずに仕事が求まる。
注意\Delta U=nC_V\Delta T は定積変化に限らず、どの変化でも使える(内部エネルギーは温度だけで決まるから)。「定圧だから C_p で \Delta U」は誤り。
着眼点どの変化かを決めたら、0 になる量を1つ見つけて第1法則に入れる。
| 変化 | 0 になる量 | 関係 | 熱 Q |
|---|
| 定積 | W=0 | p/T 一定 | Q=\Delta U=nC_V\Delta T |
| 定圧 | なし | V/T 一定 | Q=nC_p\Delta T、W'=nR\Delta T |
| 等温 | \Delta U=0 | pV 一定 | Q=W' |
| 断熱 | Q=0 | pV^{\gamma} 一定 | \Delta U=-W' |
例題
1理想気体を等温で膨張させたところ、気体は外部に 300\ \mathrm{J} の仕事をした。気体が吸収した熱を求めよ。
解答
等温なので \Delta U=0。Q=\Delta U+W'=0+300
答 3.0\times10^2\ \mathrm{J} 吸収
2単原子分子理想気体 1.0 mol を体積一定で 300 K から 400 K にした。吸収した熱を求めよ。R=8.3\ \mathrm{J/(mol\cdot K)}。
解答
定積なので W'=0、Q=\Delta U=\frac32\times1.0\times8.3\times100=1245\ \mathrm{J}
答 1.2\times10^3\ \mathrm{J}
ポイントp-V グラフ上で、等温線は双曲線、断熱線はそれより急な曲線。同じ点から膨張させると断熱のほうが圧力が早く下がる。
確認問題
答え
下がる。Q=0 で気体が正の仕事をするので \Delta U=-W'<0
着眼点圧力はピストンの力のつりあいから出す。「なめらかに動くピストン+ゆっくり加熱」なら定圧変化。
鉛直に立てたシリンダー、上向きの開口部にピストン(質量 M、断面積 S)、外は大気圧 p_0 のとき、ピストンにはたらく力のつりあいより
pS=p_0S+Mg例題
1断面積 1.0\times10^{-2}\ \mathrm{m^2}、質量 10 kg のピストンで気体を閉じ込めた(シリンダーは開口部が上)。大気圧 1.0\times10^5\ \mathrm{Pa}、g=9.8\ \mathrm{m/s^2} として気体の圧力を求めよ。
解答
p=p_0+\dfrac{Mg}{S}=1.0\times10^5+\dfrac{98}{1.0\times10^{-2}}=1.0\times10^5+9.8\times10^3=1.098\times10^5\ \mathrm{Pa}
答 1.1\times10^5\ \mathrm{Pa}
2前問の状態で、気体の温度は 300 K、ピストンの底からの高さは 0.20 m だった。ゆっくり加熱して 360 K にしたときのピストンの高さと、気体がした仕事を求めよ。
解答
圧力は一定(つりあいの式が変わらない)なので V/T 一定。
h=0.20\times\dfrac{360}{300}=0.24\ \mathrm{m}
W'=pS\Delta h=1.098\times10^5\times1.0\times10^{-2}\times0.04=43.9\ \mathrm{J}
答 高さ 0.24\ \mathrm{m}、仕事 44\ \mathrm{J}
注意シリンダーが横向きならピストンの重さは圧力に関係しない(p=p_0)。逆さ(開口部が下)なら pS+Mg=p_0S。図の向きを言葉で確認してから式を立てる。
着眼点断熱では Q=0 なので仕事と内部エネルギーが直結する。体積比から温度を出すときはポアソンの式。
pV^{\gamma}=\text{一定},\qquad TV^{\gamma-1}=\text{一定},\qquad \gamma=\frac{C_p}{C_V}
単原子分子では \gamma=\frac53。断熱圧縮で温度上昇、断熱膨張で温度低下。
例題
1単原子分子理想気体 1.0 mol が断熱膨張し、温度が 300 K から 250 K になった。気体がした仕事を求めよ。R=8.3\ \mathrm{J/(mol\cdot K)}。
解答
\Delta U=\frac32\times1.0\times8.3\times(-50)=-622.5\ \mathrm{J}
Q=0 より W'=-\Delta U=622.5\ \mathrm{J}
答 6.2\times10^2\ \mathrm{J}
2300 K の単原子分子理想気体を断熱圧縮して、体積を \frac18 にした。温度を求めよ。
解答
TV^{\frac23} 一定より T'=T\left(\dfrac{V}{V'}\right)^{\frac23}=300\times8^{\frac23}=300\times4=1200\ \mathrm{K}
答 1.2\times10^3\ \mathrm{K}
ポイントポアソンの式は問題文で与えられることが多い。与えられていなければ、まず第1法則(W'=-\Delta U)で解けないか考える。
着眼点効率の分母は「吸収した熱の合計」だけ。放出した熱は分母に入れない。各過程の Q の符号を表にする。
e=\frac{W'_{\text{正味}}}{Q_{\text{吸収}}}=\frac{Q_{\text{吸収}}-Q_{\text{放出}}}{Q_{\text{吸収}}}
1サイクルで元の状態に戻るので \Delta U=0、正味の仕事=正味の熱。
例題
1ある熱機関が1サイクルで高温部から 1000\ \mathrm{J} を吸収し、低温部へ 700\ \mathrm{J} を放出した。熱効率を求めよ。
解答
W'=1000-700=300\ \mathrm{J}、e=\dfrac{300}{1000}=0.30
答 0.30(30 %)
2単原子分子理想気体を A(p_0,V_0) → B(2p_0,V_0) → C(2p_0,2V_0) → D(p_0,2V_0) → A と変化させた(AB・CD は定積、BC・DA は定圧)。熱効率を求めよ。
解答
nR\Delta T=\Delta(pV) を使う。
A→B(定積): Q=\frac32\Delta(pV)=\frac32(2p_0V_0-p_0V_0)=\frac32p_0V_0(吸収)
B→C(定圧): Q=\frac52\Delta(pV)=\frac52(4p_0V_0-2p_0V_0)=5p_0V_0(吸収)
C→D、D→A は温度が下がるので放出。
正味の仕事=長方形の面積 =p_0V_0。
e=\dfrac{p_0V_0}{\frac32p_0V_0+5p_0V_0}=\dfrac{2}{13}=0.154
答 0.15
注意効率の分母に放出した熱(負の Q)を足し込むミスが多い。また e<1 を必ず確かめる。
気体分子運動論
差がつく気体分子運動論(圧力と分子の運動エネルギー)
着眼点1個の分子が壁に与える力積 → 単位時間の衝突回数 → 圧力、の3段で導く。結論は「分子の平均運動エネルギーは絶対温度に比例」。
1辺 L の立方体容器、質量 m の分子 N 個の場合、x 方向の壁1回の衝突で与える力積は 2mv_x、単位時間の衝突回数は \frac{v_x}{2L}。これと \overline{v_x^2}=\frac13\overline{v^2} から
pV=\frac13Nm\overline{v^2},\qquad \frac12m\overline{v^2}=\frac32kT,\qquad k=\frac{R}{N_A}
\sqrt{\overline{v^2}}=\sqrt{\frac{3RT}{M}}\quad(M:\text{モル質量}\ [\mathrm{kg/mol}])例題
1理想気体の絶対温度を 300 K から 1200 K にすると、分子の二乗平均速度 \sqrt{\overline{v^2}} は何倍になるか。
解答
\sqrt{\overline{v^2}}\propto\sqrt T なので \sqrt{1200/300}=\sqrt4=2
答 2 倍
2300 K のヘリウム(モル質量 4.0\times10^{-3}\ \mathrm{kg/mol})の \sqrt{\overline{v^2}} を求めよ。R=8.3\ \mathrm{J/(mol\cdot K)}。
解答
\sqrt{\dfrac{3\times8.3\times300}{4.0\times10^{-3}}}=\sqrt{1.8675\times10^6}=1.37\times10^3\ \mathrm{m/s}
答 1.4\times10^3\ \mathrm{m/s}
注意モル質量を g/mol のまま入れると \sqrt{1000} 倍ずれる。\mathrm{kg/mol} に直す。
確認問題
1同じ温度の水素分子と酸素分子で、平均運動エネルギーはどちらが大きいか。
答え
等しい(温度だけで決まる)。速さは軽い水素のほうが大きい
着眼点熱は自然には低温から高温へ移らない。熱をすべて仕事に変える熱機関(効率1)はつくれない。
摩擦による発熱、熱の伝導、気体の拡散などは、自然には元に戻らない不可逆変化。熱効率は必ず e<1。
ポイント計算問題になることはほぼなく、正誤問題の1文として出る程度なので後回しでよい。ただし共通テストや文章で答えさせる大学を受けるなら、上の2文だけは言えるようにする。
🌊
波の性質
v=f\lambda、波形図と振動図、横波・縦波、波の式、重ね合わせと定常波、反射、ホイヘンスの原理と屈折、2波源の干渉。音と光はすべてこの単元の応用。
波の基本
着眼点1周期 T の間に波は1波長 \lambda 進む。これだけで v=\lambda/T=f\lambda が出る。
v=f\lambda=\frac{\lambda}{T},\qquad f=\frac1T
A 振幅、\lambda 波長(山から次の山まで)、T 周期、f 振動数。媒質の各点はその場で振動するだけで、波と一緒に移動しない。
例題
1振動数 50 Hz、波長 0.40 m の波の速さと周期を求めよ。
解答
v=50\times0.40=20\ \mathrm{m/s}、T=\dfrac1{50}=0.020\ \mathrm{s}
答 20\ \mathrm{m/s}、2.0\times10^{-2}\ \mathrm{s}
2波長 2.0 m、速さ 4.0 m/s の波がある。3.0 s の間に波が進む距離と、その間に媒質のある1点が振動する回数を求めよ。
解答
距離 4.0\times3.0=12\ \mathrm{m}。
f=\dfrac{v}{\lambda}=\dfrac{4.0}{2.0}=2.0\ \mathrm{Hz} なので回数は 2.0\times3.0=6.0 回。
答 12\ \mathrm{m}、6 回
注意振幅は山の高さ(中心から山まで)。山から谷までの長さを振幅としない。
必須波形図(y-x)と振動図(y-t)・媒質の速度の向き
着眼点まず横軸が x か t かを見る。波形図で媒質の動く向きは「波を進行方向に少しずらして描き、各点がどちらへ動いたか」で判断する。
- y-x グラフ(波形図): ある時刻の波の形。山と山の間隔が \lambda。
- y-t グラフ(振動図): ある1点の変位の時間変化。山と山の間隔が T。
- 波形図で、山・谷の点の速度は 0、変位 0 の点の速さが最大。
例題
1x 軸正の向きに進む正弦波の、時刻 0 の波形を考える。原点で変位 0、そのすぐ右(x>0 側)が山になっている。原点の媒質はこの瞬間どちら向きに動いているか。
解答
波を右へ少しずらすと、原点には左側にあった部分(谷側)が来る。
右側が山なら左側は谷なので、原点の変位は負へ向かう。
答 -y 向き(下向き)
2静止していたひもの原点 x=0 が、時刻 0 に変位 0 から +y 向きに振動を始めた。波は x 軸正の向きに速さ 2.0 m/s、波長 4.0 m で進む。x=1.0\ \mathrm{m} の点が振動を始める時刻と、時刻 1.0 s でのその点の変位を答えよ(振幅 A)。
解答
x=1.0\ \mathrm{m} の点は原点と同じ振動を、波が届くまでの時間だけ遅れて行う。
振動を始める時刻 \dfrac{1.0}{2.0}=0.50\ \mathrm{s}。
周期 T=\dfrac{4.0}{2.0}=2.0\ \mathrm{s}。時刻 1.0 s ではその点が振動を始めて 0.50\ \mathrm{s}=\dfrac T4 たったので、変位 0 から +y に動いて山に達している。
答 0.50\ \mathrm{s}、変位 +A
注意振動図(横軸 t)で「少しずらす」方法を使わない。振動図は1点の時間変化なので、そのまま次の時刻の値を読む。
着眼点縦波は変位を90°回して横波のように描く(+x 方向の変位を +y に描く)。密は「左右の媒質が寄ってくる点」。
- 横波: 媒質の振動方向が進行方向に垂直(弦の波、光)。
- 縦波(疎密波): 振動方向が進行方向と平行(音波)。
- 横波表示のグラフで、y が正から負へ下がりながら x 軸を横切る点が密、負から正へ上がりながら横切る点が疎。
例題
1縦波を横波表示したグラフで、変位 y が正(+x 向きの変位)の山と、その右隣の谷の間にある変位 0 の点は、密か疎か。
解答
その点の左側の媒質は +x 向き(右)に、右側の媒質は -x 向き(左)にずれている。両側から寄ってくるので密。
答 密
ポイント密・疎の点はどちらも変位 0 の点。変位が最大の点は密でも疎でもない(ふつうの密度)。
着眼点波の進行方向に \lambda 離れた2点は同位相、\frac{\lambda}2 離れた2点は逆位相。
\text{距離}\ \Delta x\ \text{離れた2点の位相差}=2\pi\frac{\Delta x}{\lambda}
同位相: 常に同じ変位・同じ速度。逆位相: 常に変位も速度も逆。
例題
1波長 0.60 m の波で、0.90 m 離れた2点の位相差を求め、同位相・逆位相のどちらか答えよ。
解答
2\pi\times\dfrac{0.90}{0.60}=3\pi。\pi の奇数倍なので逆位相。
答 3\pi、逆位相
確認問題
1波長 2.0 m の波で、互いに逆位相になる2点の最短距離は。
答え
1.0\ \mathrm{m}(\lambda/2)
着眼点「原点の振動の式」を作り、位置 x の点は波が届くまでの時間 \frac{x}{v} だけ遅れる、として t を t-\frac{x}{v} に置き換える。
原点の振動が y=A\sin\dfrac{2\pi}{T}t で、波が +x 向きに速さ v で進むとき
y=A\sin\frac{2\pi}{T}\left(t-\frac{x}{v}\right)=A\sin2\pi\left(\frac{t}{T}-\frac{x}{\lambda}\right)
-x 向きに進むなら t+\frac{x}{v}(符号が +)。
例題
1y=0.20\sin\pi(4.0t-0.50x)(単位は m、s)で表される波の振幅・周期・波長・速さと進む向きを求めよ。
解答
2\pi\left(\dfrac tT-\dfrac x\lambda\right) と比べる。
\dfrac{2\pi}{T}=4.0\pi より T=0.50\ \mathrm{s}、\dfrac{2\pi}{\lambda}=0.50\pi より \lambda=4.0\ \mathrm{m}。
v=\dfrac{\lambda}{T}=8.0\ \mathrm{m/s}。t と x の符号が逆なので +x 向き。
答 振幅 0.20\ \mathrm{m}、周期 0.50\ \mathrm{s}、波長 4.0\ \mathrm{m}、速さ 8.0\ \mathrm{m/s}、+x 向き
2x=0 の点の変位が y=A\sin\dfrac{2\pi}{T}t で、波は -x 向きに速さ v で進む。位置 x\ (x<0) の点の変位の式を求めよ。
解答
波は原点から -x 向きに進むので、位置 x\ (<0) には距離 |x|=-x を進む時間 \dfrac{-x}{v} だけ遅れて届く。
y=A\sin\dfrac{2\pi}{T}\left(t-\dfrac{-x}{v}\right)=A\sin\dfrac{2\pi}{T}\left(t+\dfrac{x}{v}\right)
答 y=A\sin2\pi\left(\dfrac tT+\dfrac x\lambda\right)
注意原点の振動が \sin でなく -\sin や \cos で始まることもある。時刻 0 の原点の変位と動く向きを問題文から確かめてから式を作る。
重ね合わせ・定常波・反射
着眼点重なった点の変位は、それぞれの波の変位の和。すれ違った後は、それぞれ元の形のまま進む。
y=y_1+y_2
例題
1高さ 2.0 cm の山のパルスと、深さ 3.0 cm の谷のパルスが逆向きから来て、ちょうど重なった。重なった点の変位を求めよ。
解答
y=2.0+(-3.0)=-1.0\ \mathrm{cm}
答 -1.0\ \mathrm{cm}(深さ 1.0 cm の谷)
ポイント作図では、2つの波を別々に描いてから、各位置で縦に足す。目盛りの整数点ごとに足すと崩れにくい。
着眼点同じ振幅・波長の波が逆向きに進んで重なると定常波。節と節の間隔は \frac{\lambda}{2}、腹と隣の節は \frac{\lambda}{4}。
- 節: まったく振動しない点。腹: 最も大きく振動する点(振幅はもとの波の2倍)。
- 定常波の波形は進まない。隣り合う腹どうしは逆位相で振動する。
例題
1振動数 10 Hz、速さ 4.0 m/s の同じ振幅の波が逆向きに進んで定常波ができた。隣り合う節の間隔を求めよ。
解答
\lambda=\dfrac{4.0}{10}=0.40\ \mathrm{m}、節の間隔は \dfrac{\lambda}{2}=0.20\ \mathrm{m}
答 0.20\ \mathrm{m}
2y_1=A\sin2\pi\left(\dfrac tT-\dfrac x\lambda\right) と y_2=A\sin2\pi\left(\dfrac tT+\dfrac x\lambda\right) の合成波を求め、節の位置を答えよ。
解答
和積の公式 \sin\alpha+\sin\beta=2\sin\dfrac{\alpha+\beta}2\cos\dfrac{\alpha-\beta}2 より
y=2A\cos\dfrac{2\pi x}{\lambda}\sin\dfrac{2\pi t}{T}
節は \cos\dfrac{2\pi x}{\lambda}=0 の点: \dfrac{2\pi x}{\lambda}=\dfrac\pi2+m\pi
答 x=\dfrac{\lambda}{4}+m\dfrac{\lambda}{2}(m は整数)。x=0 は腹。
注意定常波の振幅は場所によって違う(腹で 2A、節で 0)。「定常波の振幅は 2A」と一言で書かない。
着眼点自由端はそのまま折り返す(端が腹)。固定端は上下を反転して折り返す(端が節)。
| 自由端 | 固定端 |
|---|
| 反射波の作図 | 端の先まで描いた入射波を、端で左右に折り返す | 端の先まで描いた入射波を上下反転し、端で左右に折り返す |
| 位相 | 変わらない | \pi ずれる(逆位相) |
| 定常波の端 | 腹 | 節 |
例題
1波長 0.80 m の波が固定端で反射して定常波ができた。端から近い順に3つの節の位置を、端からの距離で答えよ。
解答
固定端は節。節の間隔は \dfrac\lambda2=0.40\ \mathrm{m}。
答 0\ \mathrm{m}、0.40\ \mathrm{m}、0.80\ \mathrm{m}
2同じ波が自由端で反射した場合、端に最も近い節の位置は端から何 m か。
解答
自由端は腹。腹から隣の節までは \dfrac\lambda4。
答 0.20\ \mathrm{m}
ポイント連続した波の反射の作図は「端の向こう側へ仮想的に延長→(固定端なら上下反転)→折り返す→入射波と足す」の順。
着眼点反射点までの往復の距離を、入射波の式の x に入れて作る。固定端なら全体に -1 を掛ける。
入射波 y_i=A\sin2\pi\left(\dfrac tT-\dfrac x\lambda\right) が x=L の固定端で反射すると、位置 x\ (x<L) の反射波は、原点から L+(L-x)=2L-x 進んだ波を逆位相にしたもの。
y_r=-A\sin2\pi\left(\frac tT-\frac{2L-x}{\lambda}\right)
x=L で y_i+y_r=0 となり、端が節であることと合う。自由端なら先頭の - をとる。
ポイント共通テストや地方国公立では作図・節の位置で問われることがほとんどで、式まで立てさせるのは一部の難関大。波の式が扱える段階になってから見ればよい。
平面上の波
着眼点屈折しても振動数は変わらない。変わるのは速さと波長で、両者は同じ比で変わる。
ホイヘンスの原理: 波面上の各点から素元波が出て、それらに共通に接する面が次の波面になる。これから反射の法則(入射角=反射角)と屈折の法則が導ける。
\frac{\sin i}{\sin r}=\frac{v_1}{v_2}=\frac{\lambda_1}{\lambda_2}=n_{12}
n_{12}: 媒質1に対する媒質2の屈折率。角は波面ではなく射線と法線のなす角。
例題
1媒質1での速さ 2.0 m/s の水面波が、入射角 30° で媒質2との境界に入射した。媒質2での速さが 1.0 m/s のとき、屈折角の正弦 \sin r を求めよ。
解答
\dfrac{\sin30^\circ}{\sin r}=\dfrac{2.0}{1.0} より \sin r=\dfrac{0.50}{2.0}=0.25
答 \sin r=0.25
2媒質1で波長 0.30 m、媒質1に対する媒質2の屈折率が 1.5 の波がある。媒質2での波長と、振動数が 5.0 Hz のときの媒質2での速さを求めよ。
解答
\lambda_2=\dfrac{\lambda_1}{n_{12}}=\dfrac{0.30}{1.5}=0.20\ \mathrm{m}
振動数は変わらないので v_2=5.0\times0.20=1.0\ \mathrm{m/s}
答 0.20\ \mathrm{m}、1.0\ \mathrm{m/s}
注意図で波面(山の線)が描かれているとき、波面と境界のなす角は、射線と法線のなす角に等しい。どちらの角を測っているか言葉で確認する。
着眼点波源からの距離の差(経路差)が波長の何倍かで決まる。波源が同位相か逆位相かで、強め合い・弱め合いの条件が入れかわる。
同位相の2波源 A、B から点 P までの距離を l_1, l_2 とすると(m=0,1,2,\dots)
|l_1-l_2|=m\lambda\ (\text{強め合う}),\qquad |l_1-l_2|=\left(m+\frac12\right)\lambda\ (\text{弱め合う})例題
1同位相で振動する波源 A、B から波長 2.0 cm の波が出ている。AP = 10 cm、BP = 16 cm の点 P は強め合うか弱め合うか。
解答
経路差 16-10=6.0\ \mathrm{cm}=3\lambda。波長の整数倍なので強め合う。
答 強め合う
2同位相の波源 A、B(AB = 5.0 cm)から波長 2.0 cm の波が出ている。線分 AB 上(両端を除く)に、弱め合う点はいくつあるか。
解答
AB 上の点では経路差 l_1-l_2 は -5.0 cm より大きく 5.0 cm より小さい値をとる。
弱め合う条件 |l_1-l_2|=(m+\frac12)\times2.0=1.0,\ 3.0,\ 5.0,\dots のうち 5.0 未満は 1.0 と 3.0。
正負があるので \pm1.0,\ \pm3.0 の4点。
答 4 個
注意波源が逆位相なら、m\lambda で弱め合い、(m+\frac12)\lambda で強め合う(同位相のときと逆)。最初に波源の位相を確認する。
着眼点波長がすき間や障害物の大きさと同じ程度か、それより長いと回折が目立つ。
回折: 波が障害物の裏側やすき間の先に回り込む現象。すき間を狭くするか、波長を長くすると、回り込みは大きくなる。
例題
1塀の向こう側の人の声は聞こえるが、姿は見えない。これを回折と波長の大小で説明せよ。
解答
音波の波長(数十 cm〜数 m 程度)は塀の大きさと同程度なので大きく回折して届く。光の波長(10^{-7}\ \mathrm{m} 程度)は塀に比べて非常に短いので、ほとんど回り込まない。
確認問題
1水面波をすき間に通すとき、回折を大きくするには波長をどうするか。
答え
長くする(すき間の幅に近づける)
🔊
音
音の三要素と音速、うなり、弦・閉管・開管の固有振動、開口端補正、ドップラー効果(反射・風を含む)。弦と気柱は「端が腹か節か」から図を描けば式は自動で出る。
音の性質
着眼点音は空気中を伝わる縦波。高さ=振動数、大きさ=振幅、音色=波形。空気中の音速は気温で変わる。
V=331.5+0.6t\ [\mathrm{m/s}]
t は気温(℃)。
人が聞こえる音の振動数はおよそ 20 Hz〜20000 Hz。音も反射・屈折・回折・干渉をする。真空中は伝わらない。
例題
1気温 15 ℃ の空気中の音速を、V=331.5+0.6t を用いて求めよ。
解答
V=331.5+0.6\times15=340.5\ \mathrm{m/s}
答 3.4\times10^2\ \mathrm{m/s}
2雷が光ってから 3.0 s 後に音が聞こえた。音速を 340 m/s とし、光が届く時間は無視して、雷までの距離を求めよ。
解答
340\times3.0=1020\ \mathrm{m}
答 1.0\times10^3\ \mathrm{m}
注意音が別の媒質に入っても振動数は変わらない。変わるのは速さと波長。
着眼点振動数がわずかに違う2つの音を同時に聞くと、1秒あたり |f_1-f_2| 回うなる。
\text{1秒あたりのうなりの回数}\ =|f_1-f_2|
例題
1440 Hz と 443 Hz のおんさを同時に鳴らした。1秒あたりのうなりの回数を求めよ。
解答
|443-440|=3
答 3 回
2振動数 440 Hz のおんさ A と未知のおんさ B を同時に鳴らすと、1秒に2回うなった。B に小さな粘土をつける(振動数がわずかに下がる)と、うなりは1秒に3回になった。B のもとの振動数を求めよ。
解答
B は 440\pm2、つまり 438 Hz か 442 Hz。
442 Hz なら、少し下がると 440 Hz に近づきうなりは減るはず。
438 Hz なら、下がると 440 Hz から離れうなりは増える。結果と合うのはこちら。
答 438 Hz
ポイント「振動数を少し変えたらうなりが増えたか減ったか」で、2つの候補のどちらかを決める。この型は定番。
弦と気柱の振動
着眼点両端が節。長さ L に半波長 \frac\lambda2 がちょうど整数個入る。
L=m\frac{\lambda_m}{2},\qquad f_m=\frac{mv}{2L}\quad(m=1,2,3,\dots),\qquad v=\sqrt{\frac{S}{\rho}}
m は腹の数。S 弦の張力、\rho 線密度(1 m あたりの質量 [kg/m])。m=1 が基本振動、m のとき m 倍振動。
例題
1長さ 0.50 m の弦を伝わる波の速さが 200 m/s のとき、基本振動数と2倍振動の振動数を求めよ。
解答
f_1=\dfrac{200}{2\times0.50}=200\ \mathrm{Hz}、f_2=2f_1=400\ \mathrm{Hz}
答 2.0\times10^2\ \mathrm{Hz}、4.0\times10^2\ \mathrm{Hz}
2線密度 1.0\times10^{-3}\ \mathrm{kg/m} の弦を張力 40 N で張り、長さ 0.50 m の両端を固定した。腹が3つの定常波の振動数を求めよ。
解答
v=\sqrt{\dfrac{40}{1.0\times10^{-3}}}=\sqrt{4.0\times10^4}=200\ \mathrm{m/s}
腹3つなので L=\dfrac32\lambda、\lambda=\dfrac{2\times0.50}{3}=\dfrac13\ \mathrm{m}
f=\dfrac{v}{\lambda}=200\times3=600\ \mathrm{Hz}
答 6.0\times10^2\ \mathrm{Hz}
注意弦の波の速さ v と、弦の音が空気中を伝わる音速 V は別物。弦の振動数はそのまま空気中の音の振動数になるが、波長は違う。
着眼点f=\dfrac{m}{2L}\sqrt{\dfrac S\rho} を比で使う。張力を4倍にして初めて振動数が2倍。
f\propto\frac{1}{L}\sqrt{\frac{S}{\rho}}\quad(\text{腹の数一定})
おんさにつないだ弦では、弦の振動数はおんさの振動数に等しい。張力を変えると v が変わり、腹の数が変わる。
例題
1弦の張力を4倍にすると、基本振動数は何倍になるか。
解答
f\propto\sqrt S なので \sqrt4=2
答 2 倍
2振動数一定のおんさで両端固定の弦を振動させたところ、腹が4つの定常波ができた。弦の長さはそのままで、腹を2つにするには張力を何倍にすればよいか。
解答
f=\dfrac{mv}{2L} で f、L が一定なので v\propto\dfrac1m。腹 4→2 で v は2倍。
v\propto\sqrt S より張力は 2^2=4 倍。
答 4 倍
着眼点閉じた端が節、開いた端が腹。長さに \frac\lambda4 が奇数個入るので、奇数倍振動しかない。
L=(2m-1)\frac{\lambda}{4},\qquad f=\frac{(2m-1)V}{4L}\quad(m=1,2,3,\dots)
例題
1長さ 0.17 m の閉管の基本振動数と、その次に高い固有振動数を求めよ。音速 340 m/s、開口端補正は無視する。
解答
基本振動: \lambda=4L=0.68\ \mathrm{m}、f_1=\dfrac{340}{0.68}=500\ \mathrm{Hz}
次は3倍振動 f_3=3f_1=1500\ \mathrm{Hz}
答 5.0\times10^2\ \mathrm{Hz}、1.5\times10^3\ \mathrm{Hz}
2同じ長さの閉管と開管で、基本振動数の比(閉管:開管)を求めよ。開口端補正は無視する。
解答
閉管 \lambda=4L、開管 \lambda=2L。振動数は波長に反比例するので \dfrac{V}{4L}:\dfrac{V}{2L}=1:2
答 1:2
注意閉管で「2倍振動」は存在しない。閉管の次の固有振動は3倍振動。
着眼点両端が腹。弦と同じく半波長が整数個入るので、すべての整数倍振動がある。
L=m\frac{\lambda}{2},\qquad f=\frac{mV}{2L}\quad(m=1,2,3,\dots)
例題
1長さ 0.34 m の開管の基本振動数を求めよ。音速 340 m/s、開口端補正は無視する。
解答
\lambda=2L=0.68\ \mathrm{m}、f=\dfrac{340}{0.68}=500\ \mathrm{Hz}
答 5.0\times10^2\ \mathrm{Hz}
2前問の開管の一端をふさぐと、基本振動数はいくらになるか。
解答
閉管になり \lambda=4L=1.36\ \mathrm{m}、f=\dfrac{340}{1.36}=250\ \mathrm{Hz}
答 2.5\times10^2\ \mathrm{Hz}
ポイント弦・閉管・開管とも、まず基本振動の図(端が腹か節か)を言葉で描き、長さと波長の関係を作ってから f=V/\lambda に入れる。公式の暗記に頼らない。
着眼点定常波の腹は管口より少し外にある。隣り合う共鳴位置の差は、開口端補正に関係なく \frac\lambda2。
おんさを管口に置き、水面を下げていくと、管の長さが l_1、l_2 … のとき共鳴する。
l_2-l_1=\frac{\lambda}{2},\qquad \Delta=\frac{\lambda}{4}-l_1\ (\text{開口端補正})例題
1振動数 500 Hz のおんさを使い、水面を下げていくと、管口から 0.16 m と 0.50 m の位置で共鳴した。音速と開口端補正を求めよ。
解答
\dfrac\lambda2=0.50-0.16=0.34 より \lambda=0.68\ \mathrm{m}、V=500\times0.68=340\ \mathrm{m/s}
\Delta=\dfrac{0.68}{4}-0.16=0.17-0.16=0.010\ \mathrm{m}
答 音速 3.4\times10^2\ \mathrm{m/s}、開口端補正 1.0\times10^{-2}\ \mathrm{m}
2前問で、3回目に共鳴する水面の位置は管口から何 m か。
解答
0.50+\dfrac\lambda2=0.50+0.34=0.84\ \mathrm{m}
答 0.84\ \mathrm{m}
注意1回目の共鳴の長さ l_1 から \lambda=4l_1 とすると、開口端補正の分だけずれる。波長は必ず差 l_2-l_1 から出す。
ドップラー効果
着眼点音源が動くと波長が変わる。観測者が動くと、観測者から見た音の速さが変わる(波長は変わらない)。
音源が速さ v_s で動くと、1秒間に出た f 個の波が V-v_s(前方)の長さに詰まる。
\lambda_{\text{前}}=\frac{V-v_s}{f},\qquad \lambda_{\text{後}}=\frac{V+v_s}{f}
観測者が音源に向かって v_o で動くと、1秒間に受け取る波の長さは V+v_o。f'=\dfrac{V+v_o}{\lambda}。
例題
1振動数 500 Hz の音源が 40 m/s で動いている。音源の前方と後方の音の波長を求めよ。音速 340 m/s。
解答
前方 \dfrac{340-40}{500}=0.60\ \mathrm{m}、後方 \dfrac{340+40}{500}=0.76\ \mathrm{m}
答 前方 0.60\ \mathrm{m}、後方 0.76\ \mathrm{m}
ポイント公式を忘れたら「波長は音源の動きで決まる」「受ける回数は観測者から見た音の速さ÷波長」の2段で組み立てられる。
着眼点「音源→観測者」の向きを正とし、音源の速度 v_s・観測者の速度 v_o をその向きの成分で入れる。
f'=\frac{V-v_o}{V-v_s}\,f
近づくと高く、遠ざかると低く聞こえる。
例題
1振動数 640 Hz の音源が、静止した観測者に向かって 20 m/s で近づく。観測者が聞く振動数を求めよ。音速 340 m/s。
解答
v_s=+20、v_o=0。
f'=\dfrac{340}{340-20}\times640=\dfrac{340}{320}\times640=680\ \mathrm{Hz}
答 6.8\times10^2\ \mathrm{Hz}
2静止した 500 Hz の音源から、観測者が 17 m/s で遠ざかる。観測者が聞く振動数を求めよ。音速 340 m/s。
解答
観測者は音源→観測者の向きに動くので v_o=+17、v_s=0。
f'=\dfrac{340-17}{340}\times500=0.95\times500=475\ \mathrm{Hz}
答 4.8\times10^2\ \mathrm{Hz}
注意符号は「音源から観測者へ向かう向きが正」。音源が観測者に近づく → v_s>0(分母が小さくなり高くなる)。観測者が音源に近づく → v_o<0(分子が大きくなり高くなる)。答えを出したら「近づくなら高い」と合っているか必ず確かめる。
確認問題
1音源と観測者が互いに近づくとき、v_s と v_o の符号は。
答え
v_s>0、v_o<0(どちらも高くなる側)
着眼点2段階に分ける。①反射板を「観測者」として受ける振動数、②反射板を「その振動数の音源」として送り返す振動数。
各段階で「音源→観測者」の向きを正に取り直す。1段目と2段目で正の向きが逆になる。
例題
1静止した 500 Hz の音源に向かって、反射板が 17 m/s で近づいている。音源の位置で聞く反射音の振動数と、直接音とのうなりの回数(1秒あたり)を求めよ。音速 340 m/s。
解答
① 反射板が受ける: 正の向きは音源→反射板。反射板は音源に近づくので v_o=-17。
f_1=\dfrac{340+17}{340}\times500=525\ \mathrm{Hz}
② 反射板が送り返す: 正の向きは反射板→音源。反射板は音源へ近づくので v_s=+17。
f_2=\dfrac{340}{340-17}\times525=\dfrac{178500}{323}=552.6\ \mathrm{Hz}
うなり 552.6-500=52.6
答 反射音 5.5\times10^2\ \mathrm{Hz}、うなり 1秒に約53回
注意反射板を一度に「動く鏡」として1つの式にしようとしない。必ず受ける側・出す側の2段に分ける。
着眼点風速 w が音源→観測者の向きなら、公式の V をすべて V+w に置き換える(逆向きなら V-w)。
f'=\frac{(V+w)-v_o}{(V+w)-v_s}\,f
音源も観測者も止まっていれば、風が吹いても振動数は変わらない(波長と音の速さが同じ割合で変わる)。
例題
1振動数 620 Hz の音源が、静止した観測者に向かって 20 m/s で近づく。風が観測者から音源の向きに 10 m/s で吹いている。無風時の音速を 340 m/s として、観測者が聞く振動数を求めよ。
解答
風は音源→観測者と逆向きなので、音の速さは 340-10=330\ \mathrm{m/s}。
f'=\dfrac{330}{330-20}\times620=\dfrac{330}{310}\times620=660\ \mathrm{Hz}
答 6.6\times10^2\ \mathrm{Hz}
注意風の向きの符号も「音源→観測者が正」。向かい風(観測者→音源)なら V-w。
着眼点音源と観測者を結ぶ直線方向の速度成分だけを公式に入れる。
f'=\frac{V}{V-v\cos\theta}\,f\quad(\theta:\ \text{音源の速度と、音源→観測者の向きのなす角})
速度は「音を出した瞬間の音源の位置」から観測者へ向かう方向の成分で考える。
例題
1振動数 646 Hz の音源が 34 m/s で動いている。音を出した瞬間、音源から観測者へ向かう向きと速度のなす角は 60° だった。静止した観測者が聞く振動数を求めよ。音速 340 m/s。
解答
成分 34\cos60^\circ=17\ \mathrm{m/s}。
f'=\dfrac{340}{340-17}\times646=\dfrac{340}{323}\times646=680\ \mathrm{Hz}
答 6.8\times10^2\ \mathrm{Hz}
ポイント共通テストや地方国公立の標準問題では一直線上の場合がほとんどで、斜めの場合は難関大の誘導つき問題で出る程度。一直線上の公式と符号が完全に使えるようになってからでよい。
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光
屈折の法則と全反射、レンズの式と作図、光路長、ヤングの実験・回折格子・薄膜とくさびの干渉。干渉は「光路差」と「反射での位相のずれの回数」の2つで条件が決まる。
光の速さ・反射・屈折
着眼点絶対屈折率 n の媒質中では、速さも波長も真空中の \frac1n。振動数(色)は変わらない。
n=\frac{c}{v},\qquad \lambda=\frac{\lambda_0}{n},\qquad n_1\sin\theta_1=n_2\sin\theta_2
真空中の光の速さ c=3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}(空気の屈折率はほぼ1)。反射では入射角=反射角。
例題
1空気中から屈折率 \sqrt3 のガラスに、入射角 60° で光が入射した。屈折角を求めよ。空気の屈折率は 1 とする。
解答
1\times\sin60^\circ=\sqrt3\sin\theta_2 より \sin\theta_2=\dfrac{\sqrt3/2}{\sqrt3}=\dfrac12
答 30^\circ
2真空中での波長が 6.0\times10^{-7}\ \mathrm{m} の光が屈折率 1.5 のガラスに入った。ガラス中の速さ・波長・振動数を求めよ。c=3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}。
解答
v=\dfrac{3.0\times10^8}{1.5}=2.0\times10^8\ \mathrm{m/s}
\lambda=\dfrac{6.0\times10^{-7}}{1.5}=4.0\times10^{-7}\ \mathrm{m}
振動数は真空中と同じ f=\dfrac{3.0\times10^8}{6.0\times10^{-7}}=5.0\times10^{14}\ \mathrm{Hz}
注意入射角・屈折角は境界面ではなく法線から測る。図で境界面からの角が与えられたら 90° から引く。
着眼点屈折率の大きい側から小さい側へ進むときだけ起こる。屈折角が 90° になる入射角が臨界角。
\sin\theta_c=\frac{n_2}{n_1}\quad(n_1>n_2)
入射角が \theta_c より大きいと、光はすべて反射する(光ファイバーはこれを利用)。
例題
1屈折率 2.0 のガラスから空気(屈折率 1.0)へ光が出るときの臨界角を求めよ。
解答
\sin\theta_c=\dfrac{1.0}{2.0}=0.50
答 30^\circ
2水(屈折率 \frac43)の深さ 1.0 m の底に点光源がある。水面から光が出てくるのは、光源の真上を中心とする円の内側だけである。この円の半径を求めよ。
解答
\sin\theta_c=\dfrac34、\cos\theta_c=\dfrac{\sqrt7}{4}、\tan\theta_c=\dfrac{3}{\sqrt7}。
円の縁は入射角がちょうど \theta_c の光が水面に当たる点なので
r=1.0\times\tan\theta_c=\dfrac{3}{\sqrt7}=1.13\ \mathrm{m}
答 1.1\ \mathrm{m}
注意空気からガラスへ(小→大)入るときは全反射は起こらない。臨界角の式も分母が大きいほうの屈折率。
着眼点真上近くから見るとき、\sin\theta\approx\tan\theta と近似して、深さが \frac1n 倍に見える。
h'=\frac{h}{n}\quad(\text{真上から見る場合、空気の屈折率 1})
例題
1深さ 0.60 m の水の底を真上から見ると、深さは何 m に見えるか。水の屈折率を \frac43 とする。
解答
h'=0.60\times\dfrac34=0.45\ \mathrm{m}
答 0.45\ \mathrm{m}
2厚さ 3.0 cm、屈折率 1.5 のガラス板の下にある文字を真上から見た。文字は実際より何 cm 浮き上がって見えるか。
解答
見かけの深さ \dfrac{3.0}{1.5}=2.0\ \mathrm{cm}。浮き上がりは 3.0-2.0=1.0\ \mathrm{cm}
答 1.0\ \mathrm{cm}
ポイント導出は「同じ水面上の点を、実際の深さ h と見かけの深さ h' から見込む」と考え、\tan の比 \frac{h}{h'} を \sin の比 n に近似する。
着眼点屈折率 n の中の距離 l は、真空中の距離 nl に相当する。干渉では光路長の差を真空中の波長と比べる。
\text{光路長}=nl
屈折率 n の媒質中で l 進む間の波の数は \dfrac{l}{\lambda_0/n}=\dfrac{nl}{\lambda_0} なので、真空中で nl 進むのと同じ。
例題
1ヤングの実験で、一方のスリットの直後に厚さ 1.0\times10^{-5}\ \mathrm{m}、屈折率 1.5 の薄いガラス板を置いた。波長 5.0\times10^{-7}\ \mathrm{m} の光のとき、明線は何本分ずれるか。また、どちら向きにずれるか。
解答
光路長の増加 (1.5-1)\times1.0\times10^{-5}=5.0\times10^{-6}\ \mathrm{m}
\dfrac{5.0\times10^{-6}}{5.0\times10^{-7}}=10
ガラス板を通る側の光路が長くなったので、光路差 0 の点は、そのスリットからの幾何学的な距離が短い側、つまりガラス板を置いたスリットの側へ移る。
答 10 本分、ガラス板を置いたスリットの側へずれる
着眼点回転する歯車のすき間を通った光が、遠くの鏡で反射して戻るまでに、歯車が「すき間→歯」に回ると光が見えなくなる。
歯車と鏡の距離 L、歯の数 N、毎秒の回転数 n のとき、初めて光が見えなくなる条件は、往復時間 \dfrac{2L}{c} が歯車が半歯分(\dfrac{1}{2N} 回転)回る時間 \dfrac{1}{2Nn} に等しいこと。
c=4LNnポイント測定法そのものを計算させる問題はまれで、共通テストの知識問題で名前が出る程度。光の速さの値(3.0\times10^8\ \mathrm{m/s})と、媒質中では \frac cn になることを優先する。
レンズ
着眼点b>0 ならレンズの後ろに実像(倒立)、b<0 ならレンズの前に虚像(正立)。物体が焦点の内側なら虚像。
\frac1a+\frac1b=\frac1f,\qquad \text{倍率}\ m=\left|\frac ba\right|
a: レンズから物体まで、b: レンズから像まで(後ろ側を正)、f: 焦点距離(凸レンズは正、凹レンズは負)。
例題
1焦点距離 10 cm の凸レンズの前方 30 cm に物体を置いた。像の位置・倍率・種類を答えよ。
解答
\dfrac1b=\dfrac1{10}-\dfrac1{30}=\dfrac{2}{30} より b=15\ \mathrm{cm}
倍率 \dfrac{15}{30}=0.50
答 レンズの後方 15 cm に、倍率 0.50 の倒立実像
2焦点距離 10 cm の凸レンズの前方 5.0 cm に物体を置いた。像の位置・倍率・種類を答えよ。
解答
\dfrac1b=\dfrac1{10}-\dfrac1{5.0}=-\dfrac1{10} より b=-10\ \mathrm{cm}
b<0 なのでレンズの前方 10 cm に虚像。倍率 \dfrac{10}{5.0}=2.0
答 レンズの前方 10 cm に、倍率 2.0 の正立虚像(虫めがねの使い方)
注意物体を焦点の位置に置くと \frac1b=0 で像はできない(光は平行に出る)。b の符号を見て像の種類を必ず言葉で書く。
着眼点3本の決まった光線のうち2本を描けば像が決まる。凹レンズの像はいつも正立の虚像で、物体より小さい。
| 光線 | 凸レンズ | 凹レンズ |
|---|
| 光軸に平行に入る | 後ろの焦点を通る | 前の焦点から出たように広がる |
| レンズの中心を通る | 直進 | 直進 |
| 焦点に向かって(から)入る | 前の焦点を通ってきた光は光軸に平行に出る | 後ろの焦点に向かう光は光軸に平行に出る |
例題
1焦点距離 20 cm の凹レンズの前方 20 cm に物体を置いた。像の位置・倍率・種類を答えよ。
解答
凹レンズなので f=-20\ \mathrm{cm}。
\dfrac1b=-\dfrac1{20}-\dfrac1{20}=-\dfrac1{10} より b=-10\ \mathrm{cm}
倍率 \dfrac{10}{20}=0.50
答 レンズの前方 10 cm に、倍率 0.50 の正立虚像
ポイント作図は「平行に入る光」と「中心を通る光」の2本で十分。虚像のときは、レンズを出た光を点線で前側に延長し、その交点が像。
注意凹レンズで f に正の値を入れるミスが多い。レンズの式を使う前に「凹なら f<0」と書いてから代入する。
着眼点1枚目の像を、2枚目にとっての物体とみなして、もう一度レンズの式を使う。全体の倍率は掛け算。
例題
1焦点距離 10 cm の凸レンズ L_1 の前方 15 cm に物体を置き、L_1 の後方 50 cm に焦点距離 10 cm の凸レンズ L_2 を置いた。最終的な像の位置・倍率・向きを答えよ。
解答
L_1: \dfrac1{b_1}=\dfrac1{10}-\dfrac1{15}=\dfrac1{30}、b_1=30\ \mathrm{cm}(倒立実像、倍率 2.0)
L_2 にとっての物体距離 a_2=50-30=20\ \mathrm{cm}
\dfrac1{b_2}=\dfrac1{10}-\dfrac1{20}=\dfrac1{20}、b_2=20\ \mathrm{cm}(倍率 1.0、さらに倒立)
全体の倍率 2.0\times1.0=2.0、倒立を2回で正立。
答 L_2 の後方 20 cm に、倍率 2.0 の正立実像
注意1枚目の像が2枚目のレンズより後ろにできる場合は、2枚目にとって物体距離が負(虚物体)になる。符号に自信がなければ作図で確認する。
着眼点レンズと同じ式が使える。焦点距離は半径の半分。像は鏡の前にできれば実像。
\frac1a+\frac1b=\frac1f,\qquad f=\frac R2
凹面鏡は f>0、凸面鏡は f<0。b>0 なら鏡の前(物体側)に実像、b<0 なら鏡の後ろに虚像。
ポイント入試での出題はまれで、主に一部の大学の小問で出る程度。レンズの式と作図が固まっていれば、符号の約束を読むだけで対応できる。
光の干渉
着眼点経路差は \dfrac{dx}{L}(L\gg d,\ x の近似)。明線の間隔 \Delta x=\dfrac{L\lambda}{d} はよく使うので結論も覚える。
スリット間隔 d、スリットからスクリーンまで L、スクリーン中央からの位置 x として
\text{経路差}\ \approx\frac{dx}{L},\qquad \frac{dx}{L}=m\lambda\ (\text{明線}),\qquad \frac{dx}{L}=\left(m+\frac12\right)\lambda\ (\text{暗線})
\Delta x=\frac{L\lambda}{d}例題
1スリット間隔 0.20 mm、スリットとスクリーンの距離 1.0 m、波長 6.0\times10^{-7}\ \mathrm{m} の光で実験した。明線の間隔を求めよ。
解答
\Delta x=\dfrac{1.0\times6.0\times10^{-7}}{0.20\times10^{-3}}=3.0\times10^{-3}\ \mathrm{m}
答 3.0\ \mathrm{mm}
2前問の装置全体を屈折率 1.5 の液体の中に入れると、明線の間隔はいくらになるか。
解答
液体中の波長は \dfrac{\lambda}{1.5} になるので、間隔も \dfrac1{1.5} 倍。
\dfrac{3.0}{1.5}=2.0\ \mathrm{mm}
答 2.0\ \mathrm{mm}
注意mm と m をそろえる。また、「明線の間隔」と「中央から m 番目の明線の位置」を取り違えない。
着眼点隣り合うスリットからの経路差は d\sin\theta。これが波長の整数倍の方向に鋭い明線が出る。
d\sin\theta=m\lambda\quad(m=0,1,2,\dots)
d: 格子定数(隣り合うスリットの間隔)。1 cm あたり N 本なら d=\dfrac{1}{N}\ \mathrm{cm}。
例題
11 cm あたり 500 本の溝がある回折格子に、波長 6.0\times10^{-7}\ \mathrm{m} の光を垂直に当てた。1次の明線の方向 \theta について \sin\theta を求めよ。
解答
d=\dfrac{1}{500}\ \mathrm{cm}=2.0\times10^{-5}\ \mathrm{m}
\sin\theta=\dfrac{6.0\times10^{-7}}{2.0\times10^{-5}}=3.0\times10^{-2}
答 \sin\theta=0.030
2前問の回折格子で、観測できる明線は正面(0次)を含めて全部で何本か。
解答
\sin\theta<1 より m<\dfrac d\lambda=\dfrac{2.0\times10^{-5}}{6.0\times10^{-7}}=33.3、最大 m=33。
左右に33本ずつと正面1本で 33\times2+1=67
答 67 本
注意ヤングの実験の近似式 \frac{dx}{L} は角度が小さいときだけ。回折格子は角度が大きくなるので d\sin\theta のまま使う。
着眼点屈折率の小さい側から大きい側に向かって反射すると位相が \pi ずれる(固定端反射と同じ)。ずれが2つの反射光で何回あるかで条件が入れかわる。
厚さ d、屈折率 n の膜(屈折角 r)で、上面と下面で反射した光の光路差は
2nd\cos r\quad(\text{垂直入射なら}\ 2nd)
位相のずれが片方だけのとき: 2nd\cos r=\left(m+\frac12\right)\lambda で強め合い、m\lambda で弱め合う。
ずれが両方ともある・両方ともないとき: m\lambda で強め合い、\left(m+\frac12\right)\lambda で弱め合う。
例題
1空気中にある屈折率 1.5 の薄膜に、波長 6.0\times10^{-7}\ \mathrm{m} の光を垂直に当てた。反射光が強め合う最小の膜の厚さを求めよ。
解答
上面(空気→膜、小→大)で位相がずれ、下面(膜→空気、大→小)ではずれない。ずれは片方だけ。
強め合い: 2nd=\left(m+\frac12\right)\lambda、最小は m=0。
d=\dfrac{\lambda}{4n}=\dfrac{6.0\times10^{-7}}{4\times1.5}=1.0\times10^{-7}\ \mathrm{m}
答 1.0\times10^{-7}\ \mathrm{m}
2屈折率 1.5 のガラスの表面に屈折率 1.25 の膜をつけ、空気中で波長 6.0\times10^{-7}\ \mathrm{m} の光の反射を弱めたい(反射防止膜)。垂直入射として、最小の膜の厚さを求めよ。
解答
上面(空気 1 → 膜 1.25)も下面(膜 1.25 → ガラス 1.5)も小→大なので、両方で位相がずれ、差し引きずれなし。
弱め合い: 2nd=\left(m+\frac12\right)\lambda、最小は m=0。
d=\dfrac{6.0\times10^{-7}}{4\times1.25}=1.2\times10^{-7}\ \mathrm{m}
答 1.2\times10^{-7}\ \mathrm{m}
注意条件式を丸暗記せず、毎回「上面は小→大か」「下面は小→大か」を書き出して、ずれの回数を数える。透過光で見る場合は反射光と明暗が逆になる。
着眼点空気層の厚さを位置の関数で表し、薄膜と同じ条件に入れる。空気層ではガラス→空気(ずれなし)、空気→ガラス(ずれあり)で、ずれは片方だけ。
くさび: 2枚のガラスの一端を接触させ、距離 L の位置に厚さ D のものをはさむ。位置 x の空気層の厚さは \dfrac{Dx}{L}。上から見た反射光の暗線は 2\dfrac{Dx}{L}=m\lambda。
\text{暗線の間隔}\ \Delta x=\frac{L\lambda}{2D}
ニュートンリング: 半径 R の平凸レンズを平面ガラスにのせると、中心から r の空気層の厚さは d\approx\dfrac{r^2}{2R}。反射光の暗環は r=\sqrt{mR\lambda}。
例題
1長さ 0.10 m の2枚のガラスの一端を接触させ、他端に厚さ 2.0\times10^{-5}\ \mathrm{m} の紙をはさんだ。真上から波長 6.0\times10^{-7}\ \mathrm{m} の光を当てて反射光を見たときの、暗線の間隔を求めよ。
解答
\Delta x=\dfrac{0.10\times6.0\times10^{-7}}{2\times2.0\times10^{-5}}=1.5\times10^{-3}\ \mathrm{m}
答 1.5\ \mathrm{mm}
2曲率半径 1.0 m の平凸レンズでニュートンリングをつくり、波長 6.0\times10^{-7}\ \mathrm{m} の光の反射光で見た。中心の暗点を除いて、内側から1番目の暗環の半径を求めよ。
解答
暗環 2d=m\lambda、d=\dfrac{r^2}{2R} より r^2=mR\lambda。m=1 として
r=\sqrt{1\times1.0\times6.0\times10^{-7}}=7.7\times10^{-4}\ \mathrm{m}
答 7.7\times10^{-4}\ \mathrm{m}
注意接触点(厚さ 0)は反射光では暗い(ずれが片方だけなので)。透過光で見ると明暗が逆になり、接触点は明るい。
⚡
静電気力・電場・電位・コンデンサー
クーロンの法則から電場・電位へ進み、コンデンサーの容量・エネルギー・接続と誘電体まで。電場はベクトル、電位はスカラーと区別するのが出発点。
静電気力と電場
着眼点力の大きさは電気量の積に比例し、距離の2乗に反比例する。向きは同符号なら斥力、異符号なら引力。
F = k\frac{q_1 q_2}{r^2}k はクーロンの法則の比例定数(真空中で約 9.0\times10^9\ \mathrm{N\cdot m^2/C^2})。電荷が3つ以上あるときは、2つずつの力を求めてベクトルで足す。
例題
1真空中で 0.30\ \mathrm{m} 離れた点電荷 +2.0\times10^{-6}\ \mathrm{C} と +3.0\times10^{-6}\ \mathrm{C} の間にはたらく力の大きさと向きを求めよ。k=9.0\times10^9\ \mathrm{N\cdot m^2/C^2} とする。
解答
F = 9.0\times10^9\times\frac{2.0\times10^{-6}\times3.0\times10^{-6}}{0.30^2} = \frac{5.4\times10^{-2}}{9.0\times10^{-2}} = 0.60\ \mathrm{N}同符号なので斥力、0.60\ \mathrm{N}。
2x軸上の原点に +4.0\times10^{-6}\ \mathrm{C}、x=0.30\ \mathrm{m} に +1.0\times10^{-6}\ \mathrm{C} の点電荷がある。第3の点電荷を置いたとき、それが受ける合力が0になる位置を求めよ。
解答
両方とも正なので、合力が0になれるのは2つの間(0<x<0.30)だけ。第3の電荷を q として、左右からの力の大きさが等しい条件はk\frac{4.0\times10^{-6}q}{x^2} = k\frac{1.0\times10^{-6}q}{(0.30-x)^2}両辺の平方根をとって \dfrac{2}{x} = \dfrac{1}{0.30-x}、0.60-2x = x より x = 0.20\ \mathrm{m}。q の符号・大きさによらない。
ポイントつり合いの位置は「電気量の大きいほうから遠い側」に寄る。同符号なら間、異符号なら外側(小さいほうの外)を探す。
注意q_1q_2 に符号ごと代入して向きを決めようとすると混乱しやすい。大きさは絶対値で計算し、向きは図で決める。
確認問題
12つの点電荷の距離を半分にすると、力は何倍になるか。
答え
4倍(距離の2乗に反比例)
着眼点電場は「+1\ \mathrm{C} を置いたら受ける力」。正電荷から出て負電荷に入る向き。複数の電荷があればベクトルで重ね合わせる。
\vec{F} = q\vec{E},\qquad E = k\frac{Q}{r^2}\ \ (\text{点電荷 } Q \text{ から距離 } r)単位は \mathrm{N/C}(=\mathrm{V/m})。
例題
1点電荷 +2.0\times10^{-9}\ \mathrm{C} から 0.30\ \mathrm{m} 離れた点の電場の強さを求めよ。k=9.0\times10^9\ \mathrm{N\cdot m^2/C^2} とする。
解答
E = 9.0\times10^9\times\frac{2.0\times10^{-9}}{0.30^2} = \frac{18}{0.090} = 2.0\times10^2\ \mathrm{N/C}向きは電荷から遠ざかる向き。
2x軸上の x=-0.10\ \mathrm{m} に +1.0\times10^{-9}\ \mathrm{C}、x=+0.10\ \mathrm{m} に -1.0\times10^{-9}\ \mathrm{C} がある。原点の電場の強さと向きを求めよ。k=9.0\times10^9\ \mathrm{N\cdot m^2/C^2} とする。
解答
各電荷がつくる電場の強さはk\frac{Q}{r^2} = 9.0\times10^9\times\frac{1.0\times10^{-9}}{0.10^2} = 9.0\times10^2\ \mathrm{N/C}正電荷による電場は正電荷から離れる向き(+x)、負電荷による電場は負電荷に向かう向き(+x)。同じ向きなので足して 1.8\times10^3\ \mathrm{N/C}、+x 向き。
ポイント電場の向きは「その点に正の試験電荷を置いたらどちらへ押されるか」で決める。
注意負電荷が受ける力は電場と逆向き。電子の運動を考えるときに向きを取り違えやすい。
確認問題
1電場 3.0\times10^3\ \mathrm{N/C} の中に -2.0\times10^{-6}\ \mathrm{C} を置いた。力の大きさと向きは。
答え
6.0\times10^{-3}\ \mathrm{N}、電場と逆向き
着眼点電荷 Q からは 4\pi kQ 本(=Q/\varepsilon_0 本)の電気力線が出る。電場の強さ=面を垂直に貫く電気力線の密度。
点電荷: 半径 r の球面を貫く本数 E\cdot4\pi r^2 = 4\pi kQ から E = kQ/r^2 が出る。
広い平面に面密度 \sigma で一様に電荷: 両側に半分ずつ出るので E = 2\pi k\sigma = \dfrac{\sigma}{2\varepsilon_0}。
+\sigma と -\sigma の平行板: 板の間で重なって E = \dfrac{\sigma}{\varepsilon_0}、外側では打ち消して 0。
関係: k = \dfrac{1}{4\pi\varepsilon_0}。
例題
1+1.0\times10^{-9}\ \mathrm{C} の点電荷から出る電気力線の本数を求めよ。k=9.0\times10^9\ \mathrm{N\cdot m^2/C^2}、\pi=3.14 とする。
解答
4\pi kQ = 4\times3.14\times9.0\times10^9\times1.0\times10^{-9} = 113.04よって 約 1.1\times10^2 本。
2面積 S の平行板に +Q、-Q を与えた。板の間の電場を \varepsilon_0、Q、S で表し、間隔 d のときの電位差から電気容量を求めよ(端の乱れは無視)。
解答
\sigma = Q/S なので E = \dfrac{Q}{\varepsilon_0 S}。電位差 V = Ed = \dfrac{Qd}{\varepsilon_0 S}。C = \dfrac{Q}{V} = \boldsymbol{\dfrac{\varepsilon_0 S}{d}}。
ポイント平行板コンデンサーの公式を忘れても、この流れ(本数→電場→電位差→容量)で必ず作り直せる。
確認問題
1平行板コンデンサーで、板の外側の電場はいくらか。
答え
0(両板の電場が打ち消し合う)
着眼点+q と -q が近接したもの。遠方での電場・電位の近似式は高校範囲の典型問題にはほとんど出ない。
考え方は重ね合わせだけ。軸上や垂直二等分線上で、2つの点電荷の電場・電位を足せば求まる。
例題
1x=\pm a に +q、-q を置いたとき、y軸上(垂直二等分線上)の電位はいくらか。
解答
y軸上の点は両電荷から等距離なので、k\dfrac{q}{r} + k\dfrac{-q}{r} = 0。電場は0ではない(-x 向き成分が残る)。
ポイント不要の理由: 近似式を使う問題は難関大の一部に限られ、重ね合わせができれば対応できる。例外: 東大・京大・医学部の難問対策では近似((1+x)^n \approx 1+nx)の練習として扱うことがある。
電位と導体
着眼点電位は「+1\ \mathrm{C} あたりの位置エネルギー」でスカラー。足し算は符号つきの数として足すだけ。
V = k\frac{Q}{r}\ \ (\text{無限遠を基準}),\qquad U = qVW_{\text{外力}} = q(V_B - V_A)\ \ (\text{A から B へゆっくり運ぶ})静電気力がする仕事は q(V_A - V_B)(外力の仕事と符号が逆)。
例題
1点電荷 +3.0\times10^{-9}\ \mathrm{C} から 0.10\ \mathrm{m} の点の電位を求めよ(無限遠を基準)。k=9.0\times10^9\ \mathrm{N\cdot m^2/C^2} とする。
解答
V = 9.0\times10^9\times\frac{3.0\times10^{-9}}{0.10} = 2.7\times10^2\ \mathrm{V}
2上と同じ点電荷について、+2.0\times10^{-9}\ \mathrm{C} の電荷を距離 0.30\ \mathrm{m} の点から 0.10\ \mathrm{m} の点までゆっくり運ぶのに必要な外力の仕事を求めよ。
解答
V(0.30) = 9.0\times10^9\times3.0\times10^{-9}/0.30 = 90\ \mathrm{V}、V(0.10) = 270\ \mathrm{V}。W = 2.0\times10^{-9}\times(270-90) = 3.6\times10^{-7}\ \mathrm{J}
ポイント電荷が複数あれば電位は各電荷の kQ/r を符号ごと足すだけ。電場のようにベクトル分解しなくてよい。
注意負電荷は電位の高いほうへ力を受ける。U=qV の q には符号ごと代入する(ここは電場の計算と違い、符号を入れる)。
着眼点平行板の間は一様な電場で V = Ed。電位差 V で加速された粒子は qV の運動エネルギーを得る。
V = Ed,\qquad qV = \frac12 mv^2 - \frac12 m v_0^2
例題
1間隔 2.0\times10^{-2}\ \mathrm{m} の平行板に 1.0\times10^2\ \mathrm{V} をかけた。板の間の電場の強さと、電子が受ける力の大きさを求めよ。電気素量 e=1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C}。
解答
E = V/d = 100/0.020 = 5.0\times10^3\ \mathrm{V/m}。F = eE = 1.6\times10^{-19}\times5.0\times10^3 = 8.0\times10^{-16}\ \mathrm{N}。
2静止していた電子を 1.0\times10^2\ \mathrm{V} の電位差で加速した。電子の速さを求めよ。e=1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C}、電子の質量 m=9.1\times10^{-31}\ \mathrm{kg} とする。
解答
eV = \frac12 mv^2 よりv = \sqrt{\frac{2eV}{m}} = \sqrt{\frac{2\times1.6\times10^{-19}\times100}{9.1\times10^{-31}}} = \sqrt{3.52\times10^{13}} \approx 5.9\times10^6\ \mathrm{m/s}
ポイント板に垂直に入らない粒子は「電場方向は等加速度、垂直方向は等速」の放物運動。力学の水平投射と同じに解く。
注意電子は負電荷なので、電場と逆向き(電位の高い板の側)に加速される。
確認問題
1電位差を4倍にすると、加速後の速さは何倍か(初速0)。
答え
2倍(v \propto \sqrt{V})
着眼点静電平衡の導体は「内部の電場0」「全体が等電位」「電荷は表面だけ」。等電位面と電気力線は直交する。
- 導体に帯電体を近づけると、近い側に異符号、遠い側に同符号の電荷が現れる(静電誘導)。
- 中空の導体の内側の空洞には、外の電荷による電場が入らない(静電遮蔽)。
- 導体を接地すると、導体の電位が0になるように電荷が出入りする。
例題
1帯電していない箔検電器の金属板に正の帯電体を近づけた。箔はどうなるか、理由とともに答えよ。
解答
静電誘導で金属板に負、箔に正の電荷が現れる。2枚の箔が同符号に帯電するので箔は開く。
2上の状態のまま金属板に指を触れ(接地し)、指を離してから帯電体を遠ざけた。箔はどうなるか。
解答
指を触れると箔の正電荷が逃げて箔は閉じる(金属板の負電荷は帯電体に引かれて残る)。指を離してから帯電体を遠ざけると、残った負電荷が全体に広がり、箔は負に帯電して開く。
ポイント「導体内部は等電位」をコンデンサーの極板・金属板挿入の問題でそのまま使う。
着眼点接地した広い導体平面から距離 a の点電荷 q は、平面の反対側に -q があるのと同じ力を受ける。
F = k\frac{q^2}{(2a)^2}\ \ (\text{平面に引かれる})
ポイント不要の理由: 高校の教科書の範囲外の考え方で、出題されても誘導がつく。例外: 難関大・医学部の一部で誘導つきで出ることがある。
コンデンサー
着眼点Q=CV と C=\varepsilon S/d。極板間隔を変える問題は「電池につないだまま(V 一定)」か「切り離した(Q 一定)」かを最初に決める。
Q = CV,\qquad C = \varepsilon_0\frac{S}{d},\qquad E = \frac{V}{d}
| 操作(間隔を2倍) | C | Q | V | E |
|---|
| 電池につないだまま | \frac12 倍 | \frac12 倍 | 一定 | \frac12 倍 |
| 電池から切り離して | \frac12 倍 | 一定 | 2倍 | 一定 |
例題
1極板の面積 2.0\times10^{-2}\ \mathrm{m^2}、間隔 1.0\times10^{-3}\ \mathrm{m} の平行板コンデンサーの電気容量を求めよ。\varepsilon_0 = 8.85\times10^{-12}\ \mathrm{F/m} とする。
解答
C = 8.85\times10^{-12}\times\frac{2.0\times10^{-2}}{1.0\times10^{-3}} = 1.77\times10^{-10} \approx 1.8\times10^{-10}\ \mathrm{F}
22.0\ \mu\mathrm{F} のコンデンサーを 10\ \mathrm{V} で充電したあと電池から切り離し、極板間隔を2倍にした。極板間の電圧を求めよ。
解答
切り離したので Q = 2.0\times10^{-6}\times10 = 2.0\times10^{-5}\ \mathrm{C} は一定。容量は 1.0\ \mu\mathrm{F} になるので V = Q/C = 2.0\times10^{-5}/1.0\times10^{-6} = 20\ \mathrm{V}。
注意切り離したコンデンサーは Q 一定なので電場 E = Q/(\varepsilon_0 S) も一定。「間隔を広げると電場が弱まる」と思い込まない。
確認問題
1電池につないだまま極板の面積を2倍にした。Q は何倍か。
答え
2倍(C が2倍、V 一定)
着眼点3つの形を使い分ける。V 一定なら \frac12 CV^2、Q 一定なら \frac{Q^2}{2C} が見やすい。
U = \frac12 QV = \frac12 CV^2 = \frac{Q^2}{2C}
例題
12.0\ \mu\mathrm{F} のコンデンサーに 10\ \mathrm{V} をかけたときの静電エネルギーを求めよ。
解答
U = \frac12\times2.0\times10^{-6}\times10^2 = 1.0\times10^{-4}\ \mathrm{J}
2上のコンデンサーを電池から切り離し、極板間隔をゆっくり2倍にした。外力がした仕事を求めよ。
解答
Q = 2.0\times10^{-5}\ \mathrm{C} 一定、C は 2.0\ \mu\mathrm{F} \to 1.0\ \mu\mathrm{F}。U_1 = \frac{(2.0\times10^{-5})^2}{2\times2.0\times10^{-6}} = 1.0\times10^{-4}\ \mathrm{J},\quad U_2 = \frac{(2.0\times10^{-5})^2}{2\times1.0\times10^{-6}} = 2.0\times10^{-4}\ \mathrm{J}電流が流れないので外力の仕事=エネルギーの増加 = 1.0\times10^{-4}\ \mathrm{J}。
注意電池につないだまま操作したときは電池も仕事をする(電池の仕事 =\Delta Q\cdot V)。「外力の仕事=\Delta U」は切り離したときだけ。
確認問題
1Q を一定のまま C を半分にすると U は何倍か。
答え
2倍(U = Q^2/2C)
着眼点極板が受ける力は「自分以外の極板がつくる電場」で計算する。だから QE ではなく \frac12 QE。
F = \frac12 QE = \frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}極板 -Q がつくる電場は \frac{E}{2}(両板合わせて E)なので、+Q の極板が受ける力は Q\cdot\frac{E}{2}。
例題
1面積 1.0\times10^{-2}\ \mathrm{m^2} の極板に \pm2.0\times10^{-8}\ \mathrm{C} を与えた。極板間の引力を求めよ。\varepsilon_0=8.85\times10^{-12}\ \mathrm{F/m}。
解答
F = \frac{(2.0\times10^{-8})^2}{2\times8.85\times10^{-12}\times1.0\times10^{-2}} = \frac{4.0\times10^{-16}}{1.77\times10^{-13}} \approx 2.3\times10^{-3}\ \mathrm{N}
ポイント前の項目の「外力の仕事」は、この力×移動距離と一致する(F は間隔によらない)。検算に使える。
着眼点並列は V 共通で容量の和、直列は Q 共通で逆数の和。スイッチ切り替えの問題は「孤立した部分の電荷の和は変わらない」で式を立てる。
\text{並列: } C = C_1 + C_2,\qquad \text{直列: } \frac1C = \frac1{C_1} + \frac1{C_2}
例題
12.0\ \mu\mathrm{F} と 3.0\ \mu\mathrm{F} を直列にして 10\ \mathrm{V} をかけた(はじめ電荷なし)。各コンデンサーの電圧を求めよ。
解答
合成容量 \dfrac{2.0\times3.0}{2.0+3.0} = 1.2\ \mu\mathrm{F}。Q = 1.2\times10 = 12\ \mu\mathrm{C}(共通)。V_1 = 12/2.0 = 6.0\ \mathrm{V}、V_2 = 12/3.0 = 4.0\ \mathrm{V}。
210\ \mathrm{V} で充電した 2.0\ \mu\mathrm{F} を電池から外し、電荷のない 3.0\ \mu\mathrm{F} と並列につないだ。電圧と、失われた静電エネルギーを求めよ。
解答
電荷の和 20\ \mu\mathrm{C} が保存される。V = \dfrac{20}{2.0+3.0} = 4.0\ \mathrm{V}。
前: \frac12\times2.0\times10^{-6}\times10^2 = 1.0\times10^{-4}\ \mathrm{J}
後: \frac12\times5.0\times10^{-6}\times4.0^2 = 4.0\times10^{-5}\ \mathrm{J}
失われたのは 6.0\times10^{-5}\ \mathrm{J}(導線のジュール熱などになる)。
ポイント直列では容量の小さいほうに大きな電圧がかかる(V = Q/C)。
注意電荷保存は「導線でつながり外と電荷のやりとりがない部分」ごとに、極板の電荷を符号つきで足す。
確認問題
1同じコンデンサー2個を直列にすると、合成容量は1個の何倍か。
答え
\frac12 倍
誘電体と金属板
着眼点誘電体は誘電分極で電場を弱め、容量を比誘電率 \varepsilon_r 倍にする。一部だけ挟む問題は「直列か並列か」に分けて考える。
C = \varepsilon_r\varepsilon_0\frac{S}{d}- 厚さ方向に一部挟む(極板と平行に層をつくる)→ 空気の層と誘電体の層の直列。
- 面積の一部に挟む(横に並ぶ)→ 並列。
- 厚さ t の金属板を平行に挟む → 金属内は電場0なので、間隔 d-t のコンデンサーと同じ: C = \varepsilon_0 S/(d-t)。
例題
1真空中で容量 C_0 の平行板コンデンサーの極板間をすべて比誘電率 4.0 の誘電体で満たした。容量はいくらか。
解答
4.0C_0
2容量 C_0(間隔 d)の極板間に、極板と同じ面積で厚さ \frac d2、比誘電率 3.0 の誘電体を極板と平行に挟んだ。容量を C_0 で表せ。
解答
空気の層: 間隔 \frac d2 なので 2C_0。誘電体の層: 3.0\times2C_0 = 6C_0。直列なのでC = \frac{1}{\frac{1}{2C_0}+\frac{1}{6C_0}} = \frac{6C_0}{4} = 1.5C_0
ポイント誘電体の位置(上寄せ・下寄せ)は直列の容量に影響しない。厚さだけで決まる。
注意比誘電率は1より大きい。誘電体の中の電場は真空のときの \frac1{\varepsilon_r} 倍に弱まる(強まるのではない)。
確認問題
1間隔 d の極板間に厚さ \frac d3 の金属板を平行に挟むと容量は何倍か。
答え
\frac32 倍(実質の間隔が \frac{2d}{3})
🔋
電流と直流回路
オームの法則・抵抗の接続・内部抵抗・キルヒホッフの法則・電力から、コンデンサーを含む回路と非直線抵抗まで。回路は「電位を追う」と迷わない。
電流と抵抗
着眼点電流は「1秒に断面を通る電気量」。抵抗は長さに比例し断面積に反比例する。
I = enSv,\qquad V = RI,\qquad R = \rho\frac{L}{S}n は自由電子の数密度、v は平均の速さ、\rho は抵抗率(単位 \Omega\cdot\mathrm{m})。
例題
1抵抗率 1.7\times10^{-8}\ \Omega\cdot\mathrm{m}、長さ 10\ \mathrm{m}、断面積 1.0\times10^{-6}\ \mathrm{m^2} の導線の抵抗を求めよ。
解答
R = 1.7\times10^{-8}\times\frac{10}{1.0\times10^{-6}} = 0.17\ \Omega
2断面積 1.0\times10^{-6}\ \mathrm{m^2} の導線に 1.6\ \mathrm{A} の電流が流れている。自由電子の数密度を 1.0\times10^{29}\ \mathrm{m^{-3}}、e=1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C} として、電子の平均の速さを求めよ。
解答
v = \frac{I}{enS} = \frac{1.6}{1.6\times10^{-19}\times1.0\times10^{29}\times1.0\times10^{-6}} = 1.0\times10^{-4}\ \mathrm{m/s}電子そのものはとても遅い。
注意電流の向きは正電荷の流れる向き。電子は電流と逆向きに動く。
確認問題
1同じ材質で長さ2倍・直径2倍の導線の抵抗は元の何倍か。
答え
\frac12 倍(長さ2倍、断面積4倍)
着眼点金属は温度が上がると抵抗率が増える(熱運動する陽イオンに電子がぶつかりやすくなる)。
\rho = \rho_0(1 + \alpha t)\rho_0 は 0\ ^\circ\mathrm{C} の抵抗率、\alpha は抵抗率の温度係数。
例題
10\ ^\circ\mathrm{C} で 20\ \Omega の金属線がある。温度係数を 4.0\times10^{-3}\ \mathrm{K^{-1}} として、50\ ^\circ\mathrm{C} での抵抗を求めよ(長さ・断面積の変化は無視)。
解答
R = 20\times(1 + 4.0\times10^{-3}\times50) = 20\times1.2 = 24\ \Omega
ポイント電球の電流-電圧グラフが直線にならない理由がこれ(非直線抵抗の項目につながる)。
着眼点直列は電流共通で抵抗の和、並列は電圧共通で逆数の和。組み合わせは内側の並列から1つの抵抗にまとめる。
\text{直列: } R = R_1 + R_2,\qquad \text{並列: } \frac1R = \frac1{R_1} + \frac1{R_2}
例題
12.0\ \Omega と 3.0\ \Omega を並列につないだ合成抵抗を求めよ。
解答
\dfrac{2.0\times3.0}{2.0+3.0} = 1.2\ \Omega
26.0\ \Omega と 3.0\ \Omega を並列にしたものに 4.0\ \Omega を直列につなぎ、12\ \mathrm{V} の電池(内部抵抗なし)につないだ。6.0\ \Omega を流れる電流を求めよ。
解答
並列部分: \dfrac{6.0\times3.0}{9.0} = 2.0\ \Omega。全体 6.0\ \Omega で I = 12/6.0 = 2.0\ \mathrm{A}。
並列部分の電圧 2.0\times2.0 = 4.0\ \mathrm{V}。6.0\ \Omega の電流は 4.0/6.0 \approx 0.67\ \mathrm{A}(3.0\ \Omega 側は 1.3\ \mathrm{A}、和が 2.0\ \mathrm{A} で検算できる)。
ポイント並列では抵抗の小さいほうに多く流れる。電流の比は抵抗の逆比。
着眼点電池の端子電圧は電流が流れると下がる。V = E - rI のグラフは縦軸切片が E、傾きが -r。
V = E - rI,\qquad I = \frac{E}{R + r}
例題
1起電力 1.5\ \mathrm{V}、内部抵抗 0.50\ \Omega の電池に 2.5\ \Omega の抵抗をつないだ。電流と端子電圧を求めよ。
解答
I = \dfrac{1.5}{2.5+0.50} = 0.50\ \mathrm{A}。端子電圧 V = 1.5 - 0.50\times0.50 = 1.25\ \mathrm{V}(= 2.5\times0.50 で検算)。
2ある電池に 1.0\ \Omega をつなぐと 1.0\ \mathrm{A}、4.0\ \Omega をつなぐと 0.40\ \mathrm{A} 流れた。起電力と内部抵抗を求めよ。
解答
E = 1.0(1.0 + r)、E = 0.40(4.0 + r)。
1.0 + r = 1.6 + 0.40r より 0.60r = 0.60、r = 1.0\ \Omega、E = 2.0\ \mathrm{V}。
注意電圧計を電池に直接つないで測れるのは(電流がほぼ0なので)起電力。電流が流れているときの端子電圧と区別する。
確認問題
1電池をショートさせた(外部抵抗0)ときの電流は。
答え
E/r
着眼点電流計は直列に入れ内部抵抗は小さく、電圧計は並列に入れ内部抵抗は大きい。測定範囲を n 倍にするには、電流計は並列に分流器、電圧計は直列に倍率器。
\text{分流器: } R_A = \frac{r_A}{n-1},\qquad \text{倍率器: } R_V = (n-1)r_V
例題
1内部抵抗 0.90\ \Omega、最大目盛り 10\ \mathrm{mA} の電流計で 100\ \mathrm{mA} まで測りたい。何 \Omega をどうつなぐか。
解答
n = 10。並列に \dfrac{0.90}{10-1} = 0.10\ \Omega をつなぐ(電流計に 10\ \mathrm{mA}、分流器に 90\ \mathrm{mA}、両端の電圧は 9.0\ \mathrm{mV} で一致)。
2内部抵抗 1.0\ \mathrm{k}\Omega、最大目盛り 1.0\ \mathrm{V} の電圧計で 10\ \mathrm{V} まで測りたい。
解答
n = 10。直列に (10-1)\times1.0 = 9.0\ \mathrm{k}\Omega をつなぐ。
ポイント公式を忘れたら「メーターに最大目盛りの電流(電圧)がかかるとき、残りを分流器(倍率器)が受け持つ」で式を立てる。
確認問題
1電圧計の内部抵抗が小さいと、測定値はどうずれるか。
答え
電圧計に電流が分かれて測りたい部分の電圧が下がり、小さめに出る
着眼点P = IV を基本に、直列なら I^2R、並列なら V^2/R が比べやすい。
P = IV = I^2R = \frac{V^2}{R},\qquad Q = Pt
例題
1「100\ \mathrm{V}、500\ \mathrm{W}」の電熱線の抵抗と、100\ \mathrm{V} で使ったときの電流を求めよ。
解答
R = V^2/P = 100^2/500 = 20\ \Omega。I = P/V = 5.0\ \mathrm{A}。
2起電力 6.0\ \mathrm{V}、内部抵抗 2.0\ \Omega の電池に可変抵抗 R をつなぐ。R での消費電力が最大になる R とその電力を求めよ。
解答
P = \left(\dfrac{E}{R+r}\right)^2 R = \dfrac{E^2}{R + 2r + r^2/R}。相加相乗平均より R + \dfrac{r^2}{R} \geqq 2r、等号は R = r。
よって R = 2.0\ \Omega、P = \dfrac{6.0^2}{4\times2.0} = 4.5\ \mathrm{W}。
注意「100\ \mathrm{V} 用 500\ \mathrm{W}」を別の電圧で使ったら、一定なのは抵抗。電力は V^2 に比例して変わる。
確認問題
1100\ \mathrm{V} 用 500\ \mathrm{W} の電熱線を 50\ \mathrm{V} で使うと消費電力は。
答え
125\ \mathrm{W}(抵抗一定で V^2 に比例、\frac14 倍)
複雑な回路
着眼点第1法則は「分岐点で入る電流=出る電流」、第2法則は「1周すると電位は元に戻る」。未知の電位を1つ置いて分岐点の式を立てると式が少なくて済む。
\sum I_{\text{入}} = \sum I_{\text{出}},\qquad \sum(\text{起電力}) = \sum RI\ \ (\text{閉回路を1周})
例題
1起電力 9.0\ \mathrm{V} と 3.0\ \mathrm{V} の電池(内部抵抗なし)を、互いに逆向き(+極どうしを向かい合わせ)にして、2.0\ \Omega と 1.0\ \Omega と直列に1つの輪にした。電流を求めよ。
解答
起電力は打ち消し合い、正味 9.0 - 3.0 = 6.0\ \mathrm{V}。I = 6.0/(2.0+1.0) = 2.0\ \mathrm{A}(9.0\ \mathrm{V} の電池が電流を押し出す向き)。
2上下2本の導線(上をP、下をQ)の間に3本の枝が並列に入っている。枝1は起電力 6.0\ \mathrm{V} の電池と 2.0\ \Omega、枝2は起電力 3.0\ \mathrm{V} の電池と 1.0\ \Omega、枝3は 1.0\ \Omega だけ。電池はどちらも+極がP側。各枝の電流を求めよ(内部抵抗なし)。
解答
Qの電位を0、Pの電位を V とする。上向き(Q→P)の電流は 枝1: \dfrac{6.0 - V}{2.0}、枝2: \dfrac{3.0 - V}{1.0}。枝3は下向きに \dfrac{V}{1.0}。
Pでの第1法則: \dfrac{6.0-V}{2.0} + (3.0 - V) = V → 6.0 = 2.5V → V = 2.4\ \mathrm{V}。
枝1: 1.8\ \mathrm{A}(上向き)、枝2: 0.60\ \mathrm{A}(上向き)、枝3: 2.4\ \mathrm{A}(下向き)。1.8 + 0.60 = 2.4 で検算。
ポイント電流の向きは仮に決めてよい。答えが負なら逆向きに流れている。
注意第2法則で1周するとき、電池を−極→+極に通れば +E、抵抗を電流の向きに通れば -RI(電位が下がる)。向きの符号を1周ごとに揃える。
確認問題
1上の例題2で、枝2の電池の起電力が 1.0\ \mathrm{V} ならPの電位は。
答え
\frac{6.0-V}{2.0} + (1.0-V) = V より V = 1.6\ \mathrm{V}
着眼点橋渡しの検流計に電流が流れない ⇔ 両端の電位が等しい ⇔ 向かい合う抵抗の積が等しい。
点Aから点Bへ2本の道を並列につなぐ。上の道は R_1 → R_2 の順、下の道は R_3 → R_4 の順に直列。上の道の R_1・R_2 の間の点と、下の道の R_3・R_4 の間の点を検流計で結ぶ。このとき
\frac{R_1}{R_2} = \frac{R_3}{R_4}\quad(R_1R_4 = R_2R_3)のとき検流計の電流は0。
例題
1上の配置で R_1 = 10\ \Omega、R_2 = 20\ \Omega、R_3 = 15\ \Omega のとき、検流計の電流が0になる R_4 を求めよ。
解答
10\times R_4 = 20\times15 より R_4 = 30\ \Omega。
ポイントつり合っているブリッジでは、検流計の枝を取り去っても(導線でつないでも)回路の電流は変わらない。合成抵抗の計算が簡単になる。
着眼点一様な抵抗線上の接点を動かし、検流計の電流が0になる長さの比から起電力の比を求める。
\frac{E_x}{E_s} = \frac{L_x}{L_s}
ポイント不要の理由: 実験の原理としてまれに出るだけで、中身はブリッジと同じ「電流0なら電位が等しい」。例外: 実験考察を重視する大学(共通テストの実験問題を含む)では原理を説明させることがある。
コンデンサー・非直線抵抗を含む回路
着眼点スイッチを入れた直後、空のコンデンサーは「導線」(電圧0)。十分時間がたつと「断線」(電流0)。
- 直後: 電荷0なので電圧0。そこに電流は流れ込める。
- 十分時間後: 電流が流れないので、つながった抵抗での電圧降下は0。コンデンサーの電圧は並列部分の電圧に等しい。
例題
1起電力 12\ \mathrm{V} の電池(内部抵抗なし)に R_1 = 2.0\ \Omega と R_2 = 4.0\ \Omega を直列につなぎ、R_2 に並列に 3.0\ \mu\mathrm{F} のコンデンサーをつないだ。十分時間がたったときのコンデンサーの電荷を求めよ。
解答
コンデンサーには電流が流れないので、I = 12/(2.0+4.0) = 2.0\ \mathrm{A}。R_2 の電圧 8.0\ \mathrm{V} がコンデンサーの電圧。Q = 3.0\times8.0 = 24\ \mu\mathrm{C}。
2上の回路で、コンデンサーが空の状態でスイッチを入れた直後、R_1 と R_2 を流れる電流を求めよ。
解答
直後はコンデンサーの電圧0なので、R_2 の両端の電圧も0。R_2 の電流は 0。電池の電圧はすべて R_1 にかかり、R_1 の電流は 12/2.0 = 6.0\ \mathrm{A}(すべてコンデンサーに流れ込む)。
注意「直後は導線」ははじめ電荷0のときだけ。電荷が残っていれば、直後のコンデンサーは「その電圧の電池」として扱う。
確認問題
1十分時間がたったとき、コンデンサーと直列につながった抵抗の両端の電圧は。
答え
0(電流が流れないから)
着眼点充電で電池がした仕事 QE のうち、半分がコンデンサーに蓄えられ、残り半分は抵抗のジュール熱になる。抵抗の値によらない。
W_{\text{電池}} = QE = CE^2,\qquad U = \frac12 CE^2,\qquad Q_{\text{熱}} = \frac12 CE^2電流は時間とともに減り、減り方の目安は時定数 RC(大きいほどゆっくり充電される)。
例題
1起電力 10\ \mathrm{V} の電池で、抵抗を通して空の 2.0\ \mu\mathrm{F} のコンデンサーを充電した。抵抗で発生したジュール熱を求めよ。
解答
電池の仕事 QE = 2.0\times10^{-6}\times10\times10 = 2.0\times10^{-4}\ \mathrm{J}。蓄えられたのは \frac12\times2.0\times10^{-6}\times10^2 = 1.0\times10^{-4}\ \mathrm{J}。熱は差の 1.0\times10^{-4}\ \mathrm{J}。
21.0\ \mathrm{k}\Omega と 2.0\ \mu\mathrm{F} の時定数を求めよ。スイッチを入れた直後の電流(起電力 10\ \mathrm{V})も求めよ。
解答
RC = 1.0\times10^3\times2.0\times10^{-6} = 2.0\times10^{-3}\ \mathrm{s}。直後はコンデンサーの電圧0なので I = 10/1.0\times10^3 = 1.0\times10^{-2}\ \mathrm{A}。
ポイント電流-時間グラフの面積=流れた電気量=最終的な Q。グラフ問題はこれで解く。
注意ジュール熱を I^2Rt で直接求めようとしない(I が変化する)。エネルギー収支の差で求める。
着眼点電球の電流-電圧の関係はグラフでしか与えられない。回路から「電球の電圧と電流の関係式(直線)」を作り、グラフとの交点を読む。
電球(電圧 V、電流 I)と抵抗 R を直列にして起電力 E につなぐと V + RI = E。これを I-V グラフに直線として描き、電球の曲線との交点が答え。
例題
1ある電球の電圧と電流は、2.0\ \mathrm{V} で 0.20\ \mathrm{A}、4.0\ \mathrm{V} で 0.30\ \mathrm{A}、6.0\ \mathrm{V} で 0.36\ \mathrm{A}(その間はなめらかにつながる)。この電球と 20\ \Omega を直列にして 10\ \mathrm{V} の電池(内部抵抗なし)につないだ。電球の電圧と電流を求めよ。
解答
回路の式 V + 20I = 10、すなわち I = 0.50 - 0.050V。
V = 2.0 なら直線は 0.40(電球は 0.20)、V = 6.0 なら直線は 0.20(電球は 0.36)なので交点はその間。V = 4.0 で直線は 0.30、電球も 0.30。
よって 4.0\ \mathrm{V}、0.30\ \mathrm{A}。
2同じ電球を2個並列にし、20\ \Omega と直列にして 10\ \mathrm{V} につないだ。電球1個の電圧と電流を求めよ。
解答
各電球に I 流れると 20\ \Omega には 2I。V + 20\times2I = 10、I = 0.25 - 0.025V。
V = 2.0 で直線は 0.20、電球も 0.20。よって 2.0\ \mathrm{V}、0.20\ \mathrm{A}。
注意電球の抵抗を「定数」として V = RI で解かない。電圧によって抵抗が変わる(温度が上がって大きくなる)。
着眼点理想ダイオードは順方向に電流を通し(抵抗0)、逆方向には通さない(断線)。
p型からn型へ向かう向きが順方向。回路では「流れる向きを仮定して矛盾がないか確かめる」。
ポイント不要の理由: 半導体は知識(p型・n型、整流作用)として問われることが多く、ダイオード回路の計算はまれ。例外: 共通テストや一部の大学で、整流の向きを図から判断させる問題は出うる。
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電流と磁場・ローレンツ力
電流がつくる磁場(直線・円形・ソレノイド)、電流が磁場から受ける力、荷電粒子が受けるローレンツ力と円運動。向きの決め方を1か所にまとめてある。
電流がつくる磁場
着眼点磁場の向きは右ねじ、力の向きはフレミングの左手(または「電流から磁場へ右ねじを回す」)。どの場面でどれを使うかを表で固定する。
| 場面 | 決め方 |
|---|
| 直線電流のまわりの磁場 | 右ねじを電流の向きに進めるとき、ねじを回す向きが磁場の向き |
| 円形電流・ソレノイドの内部の磁場 | 右手の4本の指を電流の向きに巻くと、親指の向きが中心(内部)の磁場の向き。親指側がN極 |
| 電流が磁場から受ける力 | フレミングの左手: 中指=電流、人差し指=磁場、親指=力 |
| 荷電粒子が受けるローレンツ力 | 正電荷は速度を電流とみて左手。負電荷は逆向き |
例題
1紙面の手前から奥へ向かう直線電流がある。電流の真上(紙面上で上側)の点の磁場の向きは。
解答
奥へ進む右ねじは、手前から見て時計回りに回る。電流の上側の点では時計回りの接線は右向き。
2紙面上で右向きに電流が流れる導線に、紙面の奥から手前へ向かう磁場がかかっている。導線が受ける力の向きは。
解答
左手で中指を右、人差し指を手前に向けると、親指は紙面上で下向き。
ポイントベクトルで書くと力は \vec F = I\vec L\times\vec B、ローレンツ力は \vec f = q\vec v\times\vec B。どちらも「前の向きから後ろの向きへ右ねじを回して進む向き」。
注意電子(負電荷)の運動では、速度の向きと電流の向きが逆。左手で決めた向きを反転させる。図の「手前・奥」の記号(・と×)も取り違えやすい。
確認問題
1円形電流が、手前から見て反時計回りに流れている。中心の磁場の向きは。
答え
手前向き(紙面の奥から手前へ)
着眼点磁場の強さ H は距離に反比例。磁束密度は B = \mu H。複数の電流があれば向きを決めて足す。
H = \frac{I}{2\pi r},\qquad B = \mu_0 H = \frac{\mu_0 I}{2\pi r}真空の透磁率 \mu_0 = 4\pi\times10^{-7}\ \mathrm{N/A^2}。H の単位は \mathrm{A/m}、B の単位は \mathrm{T}(=\mathrm{Wb/m^2})。
例題
15.0\ \mathrm{A} の直線電流から 0.10\ \mathrm{m} 離れた点の磁束密度を求めよ。\mu_0 = 4\pi\times10^{-7}\ \mathrm{N/A^2}。
解答
B = \frac{4\pi\times10^{-7}\times5.0}{2\pi\times0.10} = 2\times10^{-7}\times\frac{5.0}{0.10} = 1.0\times10^{-5}\ \mathrm{T}
20.20\ \mathrm{m} 離れた平行な2本の導線に、互いに逆向きに 5.0\ \mathrm{A} ずつ流れている。2本の中点の磁束密度を求めよ。
解答
各導線から中点まで 0.10\ \mathrm{m} で、それぞれ 1.0\times10^{-5}\ \mathrm{T}。電流が逆向きのとき、2本の間では右ねじの向きが同じ向きになる(片方を「手前向き」、もう片方を「奥向き」として図で確かめる)。よって 2.0\times10^{-5}\ \mathrm{T}。同じ向きの電流なら中点では打ち消して0。
ポイント\dfrac{\mu_0}{2\pi} = 2\times10^{-7} を覚えておくと計算が速い。
着眼点円形電流は中心で \frac{I}{2r}、ソレノイドは内部で一様に nI(n は1 m あたりの巻数)。
\text{円形電流の中心: } H = \frac{NI}{2r},\qquad \text{ソレノイド内部: } H = nI
例題
1半径 0.10\ \mathrm{m}、巻数10回の円形コイルに 2.0\ \mathrm{A} を流した。中心の磁場の強さを求めよ。
解答
H = \dfrac{10\times2.0}{2\times0.10} = 1.0\times10^2\ \mathrm{A/m}
2長さ 0.50\ \mathrm{m} に500回巻いたソレノイド(真空中)に 0.50\ \mathrm{A} を流した。内部の磁束密度を求めよ。\mu_0 = 4\pi\times10^{-7}\ \mathrm{N/A^2}、\pi = 3.14。
解答
n = 500/0.50 = 1.0\times10^3\ \mathrm{/m}。H = nI = 5.0\times10^2\ \mathrm{A/m}。B = 4\times3.14\times10^{-7}\times5.0\times10^2 = 6.28\times10^{-4} \approx 6.3\times10^{-4}\ \mathrm{T}
注意ソレノイドの n は総巻数ではなく 1 m あたりの巻数。円形コイルの公式は半径 r(直径ではない)。
確認問題
1ソレノイドの長さを変えずに巻数を2倍にすると、内部の磁場は何倍か。
答え
2倍
電流が磁場から受ける力
着眼点導線と磁場が垂直なら F = IBL。斜めなら垂直成分だけが効き、平行なら力は0。
F = IBL\sin\theta\ \ (\theta \text{ は電流と磁場のなす角})
例題
10.50\ \mathrm{T} の一様な磁場に垂直に、長さ 0.30\ \mathrm{m} の導線を置いて 2.0\ \mathrm{A} 流した。力の大きさを求めよ。
解答
F = 2.0\times0.50\times0.30 = 0.30\ \mathrm{N}
2質量 0.020\ \mathrm{kg}、長さ 0.20\ \mathrm{m} の水平な導体棒を、軽い2本の導線で天井からつるす。鉛直上向き 0.49\ \mathrm{T} の磁場の中で棒に 2.0\ \mathrm{A} 流すと、つり糸が鉛直から角 \theta 傾いて静止した。\tan\theta を求めよ。g = 9.8\ \mathrm{m/s^2}。
解答
磁場が鉛直なので、力は水平で大きさ IBL = 2.0\times0.49\times0.20 = 0.196\ \mathrm{N}。重力 mg = 0.020\times9.8 = 0.196\ \mathrm{N}。
張力・重力・磁場からの力のつり合いより \tan\theta = \dfrac{IBL}{mg} = 1.0(\theta = 45^\circ)。
ポイント力学の問題に変わったら、磁場からの力を「ふつうの力の1つ」として力の図に描き足すだけ。
確認問題
1電流と磁場が 30^\circ をなすとき、垂直のときの何倍の力か。
答え
\frac12 倍(\sin30^\circ)
着眼点同じ向きの電流は引き合い、逆向きは退け合う。片方がつくる磁場の中で、もう片方が受ける力として計算する。
\frac{F}{L} = \frac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi r}
例題
10.10\ \mathrm{m} 離れた平行な長い導線に同じ向きに 10\ \mathrm{A} ずつ流した。導線 1\ \mathrm{m} あたりの力の大きさと向きを求めよ。\mu_0 = 4\pi\times10^{-7}\ \mathrm{N/A^2}。
解答
\frac FL = 2\times10^{-7}\times\frac{10\times10}{0.10} = 2.0\times10^{-4}\ \mathrm{N/m}同じ向きなので引力。
注意電気(同符号は斥力)と逆の感覚になる。「同じ向きの電流は引き合う」を右ねじ+左手で一度自分で確かめておく。
確認問題
1一方の電流だけ2倍にすると、2本が受ける力はそれぞれ何倍か。
答え
どちらも2倍(作用・反作用で大きさは等しい)
差がつく磁場中のコイルが受ける偶力(モーターの原理)
着眼点長方形コイルの向かい合う2辺が逆向きの力を受け、偶力でコイルが回る。コイル面が磁場と平行のとき最大、垂直のとき0。
磁場に垂直な辺(長さ a)が受ける力 IBa。腕の長さはもう一方の辺 b の半分ずつ。
N_{\max} = IBa\times b = IBS例題
11辺 0.10\ \mathrm{m} の正方形の1回巻きコイルに 2.0\ \mathrm{A} を流し、0.50\ \mathrm{T} の磁場中にコイル面が磁場と平行になるよう置いた。力のモーメントの大きさを求めよ。
解答
磁場に垂直な2辺がそれぞれ IBa = 2.0\times0.50\times0.10 = 0.10\ \mathrm{N} を逆向きに受ける。各力の腕は 0.050\ \mathrm{m}。N = 2\times0.10\times0.050 = 1.0\times10^{-2}\ \mathrm{N\cdot m}
ポイント回り続けるにはコイル面が磁場と垂直になるたびに電流の向きを反転させる(整流子)。
着眼点鉄・ニッケル・コバルトは強く磁化される強磁性体。アルミニウムは弱く引かれる常磁性体、銅や水は弱く退けられる反磁性体。
B = \mu H = \mu_r\mu_0 Hコイルに鉄心を入れると磁束密度が大きくなるのは、鉄の比透磁率 \mu_r が大きいから。
ポイント不要の理由: 計算に使うのは B=\mu H くらいで、分類は知識問題としてまれに出る程度。例外: 共通テストの知識問題や、鉄心入りコイルの自己インダクタンスを扱う問題では \mu を使う。
ローレンツ力と荷電粒子の運動
着眼点大きさは qvB(垂直のとき)。速度に常に垂直なので仕事をせず、速さは変わらない。
f = qvB\sin\theta導線中の電子それぞれが受けるローレンツ力の合計が、電流が受ける力 IBL になる(I = enSv、電子数 nSL から nSL\cdot evB = IBL)。
例題
1電気量 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C} の陽子が 2.0\times10^6\ \mathrm{m/s} で、0.50\ \mathrm{T} の磁場に垂直に入った。ローレンツ力の大きさを求めよ。
解答
f = 1.6\times10^{-19}\times2.0\times10^6\times0.50 = 1.6\times10^{-13}\ \mathrm{N}
2磁場が +z 向き、電子が +x 向きに運動している。電子が受けるローレンツ力の向きは。
解答
正電荷なら \vec v\times\vec B の向き。+x から +z へ右ねじを回すと進む向きは -y。電子は負電荷なので逆の +y 向き。
注意負電荷では向きが逆。また、ローレンツ力は仕事をしないので「磁場で加速して速くなる」ことはない(向きが変わるだけ)。
着眼点ローレンツ力が向心力。半径は運動量に比例し、周期は速さによらない。
m\frac{v^2}{r} = qvB \ \Rightarrow\ r = \frac{mv}{qB},\qquad T = \frac{2\pi r}{v} = \frac{2\pi m}{qB}
例題
1質量 1.7\times10^{-27}\ \mathrm{kg}、電気量 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C} の陽子が 3.0\times10^6\ \mathrm{m/s} で 0.50\ \mathrm{T} の磁場に垂直に入った。円運動の半径と周期を求めよ。\pi = 3.14。
解答
r = \frac{1.7\times10^{-27}\times3.0\times10^6}{1.6\times10^{-19}\times0.50} = \frac{5.1\times10^{-21}}{8.0\times10^{-20}} \approx 6.4\times10^{-2}\ \mathrm{m}T = \frac{2\times3.14\times1.7\times10^{-27}}{8.0\times10^{-20}} \approx 1.3\times10^{-7}\ \mathrm{s}
2電気量が同じで質量が m と 4m のイオンを、静止状態から同じ電位差 V で加速し、同じ磁場 B に垂直に入れた。円の半径の比を求めよ。
解答
qV = \frac12 mv^2 より v = \sqrt{2qV/m}。r = \frac{mv}{qB} = \frac1B\sqrt{\frac{2mV}{q}} \propto \sqrt mよって半径の比は 1 : 2(質量分析器の原理)。
ポイント円の中心はローレンツ力の向き(速度に垂直)の先にある。入射点で力の向きを決めると、どちら回りかが決まる。
確認問題
1速さを2倍にすると、半径と周期はそれぞれ何倍か。
答え
半径2倍、周期は変わらない
着眼点速度を磁場に平行な成分と垂直な成分に分ける。平行成分は等速直線、垂直成分は等速円運動で、合わせてらせん。
v_\perp = v\sin\theta,\quad v_\parallel = v\cos\theta,\quad r = \frac{mv_\perp}{qB},\quad \text{ピッチ} = v_\parallel T = \frac{2\pi m v\cos\theta}{qB}
例題
1質量 m、電気量 q(>0)の粒子が、磁束密度 B の磁場と 60^\circ をなす向きに速さ v で入った。らせんの半径とピッチを求めよ。
解答
v_\perp = \dfrac{\sqrt3}{2}v、v_\parallel = \dfrac12 v。半径 r = \dfrac{\sqrt3\,mv}{2qB}。周期 T = \dfrac{2\pi m}{qB} なので、ピッチ = \dfrac v2\cdot\dfrac{2\pi m}{qB} = \dfrac{\pi mv}{qB}。
注意\theta が「磁場となす角」か「磁場に垂直な面となす角」かで sin と cos が入れ替わる。問題文で確認する。
着眼点電場からの力 qE とローレンツ力 qvB が逆向きでつり合うと、粒子はまっすぐ進む。その速さは v = E/B だけで決まる。
qE = qvB \ \Rightarrow\ v = \frac EB
例題
1電場 2.0\times10^4\ \mathrm{V/m} と磁束密度 0.10\ \mathrm{T} が直交する領域を、まっすぐ通り抜けるイオンの速さを求めよ。
解答
v = \dfrac{2.0\times10^4}{0.10} = 2.0\times10^5\ \mathrm{m/s}
ポイントこの条件は電気量・質量・電荷の符号によらない(負電荷なら両方の力が同時に逆向きになるので、やはりつり合う)。
注意つり合うためには電場の向きが決まっている。正電荷で「ローレンツ力と逆向きの電場」になっているかを確認する。
着眼点電流が流れる板に垂直に磁場をかけると、キャリアがローレンツ力で片側に寄り、幅方向に電位差が生じる。電位の高い側からキャリアの符号が分かる。
幅 d の板で、たまったキャリアがつくる電場 E = V_H/d からの力とローレンツ力がつり合う: qE = qvB より
V_H = vBd例題
1板に +x 向きの電流、+z 向きの磁場をかけた。キャリアが正(p型)と負(n型)のそれぞれで、板の +y 側と -y 側のどちらの電位が高くなるか。
解答
正のキャリア: +x 向きに動き、\vec v\times\vec B は -y 向き。-y 側に正電荷がたまり、-y 側が高電位。
負のキャリア: 電流と逆の -x 向きに動く。(-x)\times(+z) = +y に負の電気量をかけて力は -y 向き。-y 側に負電荷がたまり、+y 側が高電位。
2幅 1.0\times10^{-2}\ \mathrm{m} の半導体板の中をキャリアが 2.0\ \mathrm{m/s} で動いている。磁束密度 0.50\ \mathrm{T} のときのホール電圧を求めよ。
解答
V_H = 2.0\times0.50\times1.0\times10^{-2} = 1.0\times10^{-2}\ \mathrm{V}
注意キャリアが正でも負でも、寄る側は同じ(どちらも -y 側)。違うのはたまる電荷の符号で、それが電位の高低を逆にする。
着眼点周期 T = 2\pi m/(qB) が速さによらないことを使い、一定周期の交流電圧で半周ごとに加速する装置。
f = \frac{qB}{2\pi m},\qquad \text{最大の運動エネルギー } \frac{(qBR)^2}{2m}\ \ (R \text{ は装置の半径})
ポイント不要の理由: 装置名として問われることは少なく、中身は円運動の公式の組み合わせ。例外: 難関大・医学部で長い誘導つきの問題として出ることがある。
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電磁誘導と交流
ファラデーの法則とレンツの法則、動く導体棒、自己誘導・相互誘導とコイルを含む回路、交流・リアクタンス・変圧器・電気振動・電磁波。誘導起電力は「大きさはファラデー、向きはレンツ」と分けて求める。
電磁誘導
着眼点コイルを貫く磁束が変化すると起電力が生じる。大きさは「巻数 × 1秒あたりの磁束の変化」。
\Phi = BS,\qquad V = -N\frac{\Delta\Phi}{\Delta t}磁束 \Phi の単位は \mathrm{Wb}。マイナスは「変化を妨げる向き」(レンツの法則)を表す。大きさだけなら |V| = N\left|\dfrac{\Delta\Phi}{\Delta t}\right|。
例題
1巻数100回のコイルを貫く磁束が、0.10\ \mathrm{s} の間に 2.0\times10^{-3}\ \mathrm{Wb} から0に一様に減った。誘導起電力の大きさを求めよ。
解答
V = 100\times\dfrac{2.0\times10^{-3}}{0.10} = 2.0\ \mathrm{V}
2面積 4.0\times10^{-2}\ \mathrm{m^2}、巻数50回のコイルの面に垂直な磁場が、毎秒 0.50\ \mathrm{T} の割合で増えている。コイルに 5.0\ \Omega の抵抗をつないだとき流れる電流を求めよ(コイルの抵抗は無視)。
解答
\dfrac{\Delta\Phi}{\Delta t} = S\dfrac{\Delta B}{\Delta t} = 4.0\times10^{-2}\times0.50 = 2.0\times10^{-2}\ \mathrm{Wb/s}。
V = 50\times2.0\times10^{-2} = 1.0\ \mathrm{V}、I = 1.0/5.0 = 0.20\ \mathrm{A}。
ポイント\Phi-t グラフでは、起電力の大きさは傾き。傾きが0の区間(磁束一定)では起電力0。
注意起電力を生むのは磁束の「量」ではなく「変化」。磁束が大きくても一定なら起電力は0。
確認問題
1磁束が \Phi = 3.0\times10^{-3}t(\mathrm{Wb})で増える1回巻きコイルの起電力の大きさは。
答え
3.0\times10^{-3}\ \mathrm{V}(傾き)
着眼点誘導電流は「磁束の変化を打ち消す磁場」をつくる向きに流れる。増えるなら逆向き、減るなら同じ向きの磁場をつくる。
- コイルを貫く磁場の向きと、それが増えるか減るかを確認する。
- 増える → 逆向きの磁場を、減る → 同じ向きの磁場をつくる、と決める。
- その磁場をつくる電流の向きを右ねじ(右手の親指=磁場、4本指=電流)で決める。
例題
1水平に置いた円形コイルの真上から、N極を下に向けた棒磁石を近づける。上から見て誘導電流はどちら回りか。
解答
コイルを貫く下向きの磁場が増える → 上向きの磁場をつくる。親指を上に向けると4本指は上から見て反時計回り。
2同じ配置で、N極を下に向けた磁石をコイルの上から遠ざけた。誘導電流の向きと、磁石が受ける力の向きは。
解答
下向きの磁場が減る → 下向きの磁場をつくる → 上から見て時計回り。コイルは上面がS極の磁石のようになり、磁石のN極を引き止める(下向きの引力)。
ポイント力で言い換えると「近づけると退け、遠ざけると引き止める」。動きを妨げる向きの力がはたらく。
注意「誘導電流のつくる磁場は元の磁場と逆向き」と覚えるのは誤り。逆向きになるのは増えるときだけで、減るときは同じ向き。
確認問題
1コイルを貫く上向きの磁場が減っていくとき、誘導電流のつくる磁場の向きは。
答え
上向き(減少を妨げる)
着眼点起電力 vBL。向きは、棒の中の正電荷が受けるローレンツ力の向き(そちらが高電位側=電池の+極)。
V = vBL回路を閉じると電流 I = vBL/R が流れ、棒は運動を妨げる向きに力 IBL を受ける。
例題
10.50\ \mathrm{T} の磁場に垂直な、長さ 0.40\ \mathrm{m} の導体棒が 2.0\ \mathrm{m/s} で磁場と棒の両方に垂直に動く。起電力を求めよ。
解答
V = 2.0\times0.50\times0.40 = 0.40\ \mathrm{V}
2水平な2本のレール(間隔 0.40\ \mathrm{m}、端を 2.0\ \Omega の抵抗でつなぐ)に導体棒をのせ、鉛直な 0.50\ \mathrm{T} の磁場の中で、レールに平行な一定の力 0.10\ \mathrm{N} で引き続けた。やがて棒の速さは一定になる。その速さを求めよ(摩擦・棒とレールの抵抗は無視)。
解答
一定の速さ v では、引く力と電流が受ける力がつり合う。I = \dfrac{vBL}{R}、IBL = \dfrac{vB^2L^2}{R} = F。v = \frac{FR}{B^2L^2} = \frac{0.10\times2.0}{0.50^2\times0.40^2} = \frac{0.20}{0.040} = 5.0\ \mathrm{m/s}検算: 力の仕事率 Fv = 0.50\ \mathrm{W}、I = 0.50\ \mathrm{A} でジュール熱 I^2R = 0.50\ \mathrm{W}。一致。
注意起電力の向きを決めるときは、棒の中の正電荷に左手(\vec v\times\vec B)を使う。電子で考えると向きが逆になるので混ぜない。
確認問題
1棒が受ける電磁力は、棒の速度と同じ向きか逆向きか。
答え
逆向き(レンツの法則)
着眼点終端速度では「重力(または外力)の仕事率=ジュール熱の発生率」。力のつり合いとエネルギーの両方で式が立つ。
鉛直なレールを落下する棒(質量 m): mg = \dfrac{vB^2L^2}{R} より v_{\text{終}} = \dfrac{mgR}{B^2L^2}。
例題
1鉛直に立てた2本のレール(間隔 0.20\ \mathrm{m}、上端を 1.0\ \Omega でつなぐ)に、質量 0.010\ \mathrm{kg} の導体棒を水平に渡して放した。レール面に垂直な 0.50\ \mathrm{T} の磁場があるとき、終端速度を求めよ。g = 9.8\ \mathrm{m/s^2}。
解答
v = \frac{mgR}{B^2L^2} = \frac{0.010\times9.8\times1.0}{0.50^2\times0.20^2} = \frac{0.098}{0.010} = 9.8\ \mathrm{m/s}
2上の終端速度のとき、抵抗で1秒あたりに発生するジュール熱を2通りで求めよ。
解答
重力の仕事率: mgv = 0.098\times9.8 \approx 0.96\ \mathrm{W}。
電流から: I = vBL/R = 9.8\times0.50\times0.20/1.0 = 0.98\ \mathrm{A}、I^2R \approx 0.96\ \mathrm{W}。一致する。
ポイント終端速度に達する前は、減少した位置エネルギー=増加した運動エネルギー+発生したジュール熱。
自己誘導・相互誘導
着眼点コイルは自分の電流の変化を妨げる起電力を出す。電流を急に変えられないのがコイルの性質。
V = -L\frac{\Delta I}{\Delta t},\qquad U = \frac12 LI^2自己インダクタンス L の単位は \mathrm{H}。
例題
1自己インダクタンス 0.20\ \mathrm{H} のコイルの電流が 0.10\ \mathrm{s} で0から 3.0\ \mathrm{A} まで一様に増えた。自己誘導起電力の大きさを求めよ。
解答
|V| = 0.20\times\dfrac{3.0}{0.10} = 6.0\ \mathrm{V}
2上のコイルに 3.0\ \mathrm{A} 流れているときに蓄えられているエネルギーを求めよ。
解答
U = \frac12\times0.20\times3.0^2 = 0.90\ \mathrm{J}
注意自己誘導起電力の向きは、電流が増えるときは電流と逆向き、減るときは電流と同じ向き(減少を妨げて流し続けようとする)。
確認問題
1コイルの電流を2倍にすると蓄えられるエネルギーは何倍か。
答え
4倍
着眼点1次コイルの電流の変化が、2次コイルを貫く磁束を変えて2次コイルに起電力を生む。
V_2 = -M\frac{\Delta I_1}{\Delta t}
例題
1相互インダクタンス 0.050\ \mathrm{H} の2つのコイルがある。1次コイルの電流が毎秒 40\ \mathrm{A} の割合で増えるとき、2次コイルの起電力の大きさを求めよ。
解答
|V_2| = 0.050\times40 = 2.0\ \mathrm{V}
ポイント向きは2次コイルについてのレンツの法則で決める(1次コイルがつくる磁束の増減を妨げる向き)。
確認問題
11次コイルに一定の直流を流し続けると、2次コイルの起電力は。
答え
0(磁束が変化しない)
着眼点スイッチを入れた直後、コイルの電流は直前の値のまま(はじめ0なら断線と同じ)。十分時間がたつと、抵抗0のコイルはただの導線。
- 直後: 電流は直前と同じ値。はじめ0なら0。
- 十分後: 電流が一定なのでコイルの電圧0(導線)。
- スイッチを切った直後: コイルは直前の電流を流し続けようとし、ほかの抵抗に大きな電圧が出ることがある。
例題
1起電力 6.0\ \mathrm{V} の電池、3.0\ \Omega の抵抗、抵抗0のコイル、スイッチを直列につなぐ。スイッチを入れた直後のコイルの電圧と、十分時間がたったときの電流を求めよ。
解答
直後は電流0なので抵抗の電圧0、コイルの電圧は 6.0\ \mathrm{V}。十分後はコイルの電圧0で I = 6.0/3.0 = 2.0\ \mathrm{A}。
2起電力 6.0\ \mathrm{V} の電池とスイッチと R_1 = 2.0\ \Omega を直列にし、その先に、抵抗0で 0.50\ \mathrm{H} のコイルと R_2 = 10\ \Omega を並列にしたものをつなぐ。十分時間がたってからスイッチを切った。切った直後の R_2 の電圧と、その後 R_2 で発生するジュール熱の総量を求めよ。
解答
十分後、コイルは導線なので R_2 には電流が流れず、コイルに 6.0/2.0 = 3.0\ \mathrm{A}。
切った直後、コイルの 3.0\ \mathrm{A} はコイルと R_2 の輪を流れ続ける。R_2 の電圧 10\times3.0 = 30\ \mathrm{V}(電池の起電力より大きい)。
ジュール熱はコイルのエネルギーすべて: \frac12\times0.50\times3.0^2 = 2.25 \approx 2.3\ \mathrm{J}。
ポイントコンデンサーと対にして覚える。コンデンサーは「電圧が急に変わらない」、コイルは「電流が急に変わらない」。
注意スイッチを切った直後の R_2 の電流は、切る前の R_2 の電流(0)ではなく、コイルの電流(3.0\ \mathrm{A})が向きを保って流れ込む。向きは「コイルの中の電流の向きが変わらない」ことから図で追う。
交流
着眼点磁場中で一定の角速度 \omega で回るコイルの起電力は正弦波。実効値は最大値の \frac1{\sqrt2}。
V = NBS\omega\sin\omega t,\qquad V_e = \frac{V_0}{\sqrt2},\quad I_e = \frac{I_0}{\sqrt2}抵抗での平均の消費電力 \overline P = V_eI_e = \frac12 V_0I_0。
例題
1実効値 100\ \mathrm{V} の交流電圧の最大値を求めよ。\sqrt2 = 1.41。
解答
V_0 = \sqrt2\times100 \approx 1.41\times10^2\ \mathrm{V}
2巻数100回、面積 1.0\times10^{-2}\ \mathrm{m^2} のコイルを 0.20\ \mathrm{T} の磁場中で角速度 100\ \mathrm{rad/s} で回す。起電力の最大値と実効値を求めよ。\sqrt2 = 1.41。
解答
V_0 = 100\times0.20\times1.0\times10^{-2}\times100 = 20\ \mathrm{V}。V_e = 20/1.41 \approx 14\ \mathrm{V}。
注意起電力が最大になるのは磁束が0のとき(コイル面が磁場と平行)。磁束が最大のとき起電力は0。
確認問題
120\ \Omega の抵抗に実効値 100\ \mathrm{V} の交流をかけた。平均の消費電力は。
答え
V_e^2/R = 500\ \mathrm{W}
着眼点交流に対する「抵抗のはたらき」はコイルが \omega L、コンデンサーが \frac1{\omega C}。電流と電圧の位相が \frac\pi2 ずれ、平均の消費電力は0。
| 素子 | リアクタンス | 電流の位相(電圧に対して) | 平均電力 |
|---|
| 抵抗 R | R | 同じ | V_eI_e |
| コイル L | \omega L | \frac\pi2 遅れる | 0 |
| コンデンサー C | \dfrac1{\omega C} | \frac\pi2 進む | 0 |
例題
10.10\ \mathrm{H} のコイルに周波数 50\ \mathrm{Hz}、実効値 100\ \mathrm{V} の交流をかけた。電流の実効値を求めよ。\pi = 3.14。
解答
\omega L = 2\times3.14\times50\times0.10 = 31.4\ \Omega。I_e = 100/31.4 \approx 3.2\ \mathrm{A}。
2周波数を2倍にすると、コイルとコンデンサーに流れる電流(電圧の実効値は一定)はそれぞれ何倍になるか。
解答
コイル: \omega L が2倍なので電流は \frac12 倍。コンデンサー: \frac1{\omega C} が \frac12 倍なので電流は 2倍。
ポイントコイルは高い周波数を通しにくく、コンデンサーは低い周波数(直流)を通しにくい。
注意「コイルは遅れ、コンデンサーは進み」を逆にしやすい。コンデンサーは電流が流れ込んでから電圧がたまる(電流が先)と考えると思い出せる。
着眼点電圧は巻数に比例し、理想変圧器では電力が保存される(電流は巻数に反比例)。
\frac{V_1}{V_2} = \frac{N_1}{N_2},\qquad V_1I_1 = V_2I_2
例題
11次コイル500回、2次コイル50回の変圧器の1次側に実効値 100\ \mathrm{V} をかけた。2次側の電圧を求めよ。
解答
V_2 = 100\times\dfrac{50}{500} = 10\ \mathrm{V}
21.0\times10^4\ \mathrm{W} の電力を抵抗 2.0\ \Omega の送電線で送る。送電電圧が 1.0\times10^3\ \mathrm{V} のときと 1.0\times10^4\ \mathrm{V} のときの送電線での損失を求めよ。
解答
電流は P/V で、10\ \mathrm{A} と 1.0\ \mathrm{A}。損失 I^2R は 10^2\times2.0 = 200\ \mathrm{W} と 1.0^2\times2.0 = 2.0\ \mathrm{W}。電圧を10倍にすると損失は \frac1{100}。
注意送電の損失を V^2/R で計算しない。V は送電電圧で、送電線の両端の電圧ではない。損失は必ず I^2R。
確認問題
答え
変えられない(磁束が変化しないので相互誘導が起きない)
着眼点充電したコンデンサーをコイルにつなぐと、電場のエネルギーと磁場のエネルギーが入れ替わりながら振動する。ばね振り子と同じ形。
f = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}},\qquad \frac{Q_0^2}{2C} = \frac12 LI_0^2
例題
11.0\times10^{-2}\ \mathrm{H} のコイルと 1.0\times10^{-6}\ \mathrm{F} のコンデンサーの振動回路の固有振動数を求めよ。\pi = 3.14。
解答
\sqrt{LC} = \sqrt{1.0\times10^{-8}} = 1.0\times10^{-4}\ \mathrm{s}。f = \frac{1}{2\times3.14\times1.0\times10^{-4}} \approx 1.6\times10^3\ \mathrm{Hz}
2上の回路で、コンデンサーの最初の電荷が 2.0\times10^{-5}\ \mathrm{C} のとき、流れる電流の最大値を求めよ。
解答
I_0 = \dfrac{Q_0}{\sqrt{LC}} = \dfrac{2.0\times10^{-5}}{1.0\times10^{-4}} = 0.20\ \mathrm{A}。
検算: \dfrac{Q_0^2}{2C} = \dfrac{4.0\times10^{-10}}{2.0\times10^{-6}} = 2.0\times10^{-4}\ \mathrm{J}、\frac12 LI_0^2 = \frac12\times1.0\times10^{-2}\times0.040 = 2.0\times10^{-4}\ \mathrm{J}。
ポイントばね振り子との対応: m \leftrightarrow L、k \leftrightarrow \frac1C、x \leftrightarrow Q、v \leftrightarrow I。
注意電流が最大のときコンデンサーの電荷は0。電荷が最大のとき電流は0。同時に最大にはならない。
着眼点電場と磁場の振動が互いに垂直に、進行方向にも垂直に伝わる横波。真空中の速さはどの波長でも c。
c = f\lambda波長の長い順に: 電波 > 赤外線 > 可視光線 > 紫外線 > X線 > \gamma 線。
例題
1周波数 80\ \mathrm{MHz} の電波の波長を求めよ。c = 3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}。
解答
\lambda = \dfrac{3.0\times10^8}{80\times10^6} \approx 3.8\ \mathrm{m}
2周波数 2.5\times10^9\ \mathrm{Hz} の電磁波の波長と、上の電波との波長の比(上の電波を1として)を求めよ。c = 3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}。
解答
\lambda = \dfrac{3.0\times10^8}{2.5\times10^9} = 0.12\ \mathrm{m}。比は周波数の逆比で \dfrac{80\times10^6}{2.5\times10^9} = 0.032。
ポイントLC回路の振動で電磁波が出る、という流れで前の項目とつながる(送信アンテナ)。
着眼点電圧をベクトル(位相つき)で足すと、全体の「抵抗」は Z = \sqrt{R^2 + (\omega L - \frac1{\omega C})^2}。\omega L = \frac1{\omega C} のとき電流が最大(共振)。
Z = \sqrt{R^2 + \left(\omega L - \frac{1}{\omega C}\right)^2},\qquad \omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}}
ポイント不要の理由: 位相を含む合成は地方国公立の標準問題では誘導つき・頻度も低い。例外: 難関大・医学部で交流回路が大問になる年は、インピーダンスと共振周波数を前提にした問題が出ることがある。
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電子と光・原子と原子核
電気素量と光子、光電効果・X線・ブラッグ反射・コンプトン効果、ド・ブロイ波、ボーアの原子模型、原子核の崩壊・半減期・質量欠損と核反応。エネルギーの単位(J と eV)の換算で落とさない。
電子と光
着眼点油滴の電気量はすべて電気素量 e の整数倍。電場からの力と重力(と空気抵抗)のつり合いから電気量を求める。
qE = mg\quad(\text{静止させたとき}),\qquad E = \frac Vd電気素量 e \approx 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C}。
例題
1測定した油滴の電気量が 3.2\times10^{-19}、4.8\times10^{-19}、8.0\times10^{-19}\ \mathrm{C} であった。これらから考えられる電気素量を求めよ。
解答
どれも 1.6\times10^{-19} の整数倍(2倍・3倍・5倍)で、これ以上大きい共通の単位はない。よって 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C}。
2間隔 5.0\times10^{-3}\ \mathrm{m} の水平な平行板に 500\ \mathrm{V} をかけると、質量 4.9\times10^{-15}\ \mathrm{kg} の油滴が静止した。油滴の電気量は電気素量の何倍か。g = 9.8\ \mathrm{m/s^2}、e = 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C}。
解答
E = 500/5.0\times10^{-3} = 1.0\times10^5\ \mathrm{V/m}。q = \frac{mg}{E} = \frac{4.9\times10^{-15}\times9.8}{1.0\times10^5} \approx 4.8\times10^{-19}\ \mathrm{C}これは e の 3倍。
ポイント実際の実験では、終端速度(空気抵抗 kv と重力のつり合い)から油滴の大きさ・質量を求める手順が誘導される。
着眼点光は h\nu のエネルギーをもつ粒(光子)の集まり。波長が短いほどエネルギーが大きい。
E = h\nu = \frac{hc}{\lambda},\qquad p = \frac{h}{\lambda}1\ \mathrm{eV} = 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{J}(電子が 1\ \mathrm{V} で加速されて得るエネルギー)。
例題
1波長 5.0\times10^{-7}\ \mathrm{m} の光子のエネルギーを J と eV で求めよ。h = 6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}、c = 3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}、e = 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C}。
解答
E = \frac{6.6\times10^{-34}\times3.0\times10^8}{5.0\times10^{-7}} = 3.96\times10^{-19} \approx 4.0\times10^{-19}\ \mathrm{J}eV では 3.96\times10^{-19}/1.6\times10^{-19} \approx 2.5\ \mathrm{eV}。
2出力 1.0\times10^{-3}\ \mathrm{W} で上の波長の光を出す光源は、1秒あたり何個の光子を出しているか。
解答
\dfrac{1.0\times10^{-3}}{3.96\times10^{-19}} \approx 2.5\times10^{15} 個
注意eV と J の換算を忘れやすい。式に入れる直前に単位をそろえる(h を J・s で使うならエネルギーも J)。
着眼点光子1個のエネルギーが仕事関数 W を超えたときだけ電子が飛び出す。光電子の最大運動エネルギーは振動数で決まり、光の強さには関係しない。
K_{\max} = h\nu - W,\qquad eV_0 = K_{\max},\qquad \nu_0 = \frac WhV_0 は阻止電圧、\nu_0 は限界振動数。K_{\max}-\nu グラフは傾き h の直線で、横軸切片が \nu_0。
例題
1仕事関数 3.2\times10^{-19}\ \mathrm{J} の金属に波長 3.0\times10^{-7}\ \mathrm{m} の光を当てた。光電子の最大運動エネルギーと阻止電圧を求めよ。h = 6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}、c = 3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}、e = 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C}。
解答
h\nu = \dfrac{6.6\times10^{-34}\times3.0\times10^8}{3.0\times10^{-7}} = 6.6\times10^{-19}\ \mathrm{J}。
K_{\max} = 6.6\times10^{-19} - 3.2\times10^{-19} = 3.4\times10^{-19}\ \mathrm{J}。
V_0 = \dfrac{3.4\times10^{-19}}{1.6\times10^{-19}} \approx 2.1\ \mathrm{V}。
2ある金属で、振動数 1.0\times10^{15}\ \mathrm{Hz} の光では阻止電圧 2.0\ \mathrm{V}、1.5\times10^{15}\ \mathrm{Hz} では 4.0\ \mathrm{V} だった。プランク定数・仕事関数・限界振動数を求めよ。e = 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C}。
解答
eV_0 = h\nu - W の2式を引くと e\Delta V_0 = h\Delta\nu。h = \frac{1.6\times10^{-19}\times2.0}{0.50\times10^{15}} = 6.4\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}W = h\nu - eV_0 = 6.4\times10^{-19} - 3.2\times10^{-19} = 3.2\times10^{-19}\ \mathrm{J}。
\nu_0 = W/h = 5.0\times10^{14}\ \mathrm{Hz}。
ポイント光を強くすると光子の数が増えるので、光電流(飛び出す電子の数)が増える。K_{\max} と阻止電圧は変わらない。
注意限界振動数より小さい振動数の光は、どれだけ強くしても電子は飛び出さない。「強さ」と「振動数」の役割を混同しない。
確認問題
1同じ振動数で光の強さを2倍にした。阻止電圧はどうなるか。
答え
変わらない(光電流の最大値が2倍になる)
着眼点加速した電子を陽極に当てるとX線が出る。連続X線の最短波長は加速電圧だけで決まり、固有(特性)X線の波長は陽極の物質で決まる。
eV = \frac{hc}{\lambda_{\min}}\quad\Rightarrow\quad \lambda_{\min} = \frac{hc}{eV}電子の運動エネルギーがすべて1個の光子になったときが最短波長。
例題
1加速電圧 3.0\times10^4\ \mathrm{V} のX線管から出る連続X線の最短波長を求めよ。h = 6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}、c = 3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}、e = 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C}。
解答
\lambda_{\min} = \frac{6.6\times10^{-34}\times3.0\times10^8}{1.6\times10^{-19}\times3.0\times10^4} = \frac{1.98\times10^{-25}}{4.8\times10^{-15}} \approx 4.1\times10^{-11}\ \mathrm{m}
注意加速電圧を上げると最短波長は短くなるが、固有X線の波長は変わらない(陽極原子のエネルギー準位で決まるから)。
着眼点結晶の格子面で反射したX線どうしの経路差 2d\sin\theta が波長の整数倍のとき強め合う。\theta は格子面とX線のなす角。
2d\sin\theta = n\lambda\quad(n = 1, 2, 3, \dots)
例題
1格子面の間隔 2.0\times10^{-10}\ \mathrm{m} の結晶で、格子面となす角 30^\circ で1次の反射(n=1)が強く観測された。X線の波長を求めよ。
解答
\lambda = 2\times2.0\times10^{-10}\times\sin30^\circ = 2.0\times10^{-10}\ \mathrm{m}
2波長 1.0\times10^{-10}\ \mathrm{m} のX線を、格子面の間隔 2.0\times10^{-10}\ \mathrm{m} の結晶に当てる。2次の反射の角度を求めよ。また、何次までの反射が観測できるか(\sin\theta<1 とする)。
解答
\sin\theta = \dfrac{n\lambda}{2d} = \dfrac{n}{4}。n = 2 で \sin\theta = 0.5、\theta = 30^\circ。
\dfrac n4 < 1 より n = 1, 2, 3。3次まで。
注意\theta は格子面からの角で、光の屈折などで使う「法線からの角」ではない。経路差は 2d\sin\theta(\cos ではない)。
着眼点X線光子が電子にぶつかって運動量とエネルギーを渡すので、散乱X線の波長は長くなる。光子を粒子として扱う代表例。
\lambda^{\prime} - \lambda = \frac{h}{mc}(1 - \cos\varphi)導き方: 光子の運動量 h/\lambda とエネルギー hc/\lambda で、運動量保存(2方向)とエネルギー保存の3式を立て、近似 \dfrac{\lambda^{\prime}}{\lambda} + \dfrac{\lambda}{\lambda^{\prime}} \approx 2 を使う。
例題
1X線が電子によって 90^\circ の方向に散乱された。波長の増加量を求めよ。h = 6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}、電子の質量 m = 9.1\times10^{-31}\ \mathrm{kg}、c = 3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}。
解答
\cos90^\circ = 0 なので\Delta\lambda = \frac{6.6\times10^{-34}}{9.1\times10^{-31}\times3.0\times10^8} = \frac{6.6\times10^{-34}}{2.73\times10^{-22}} \approx 2.4\times10^{-12}\ \mathrm{m}
ポイント波長の増加量は入射X線の波長によらず、散乱角だけで決まる。後方(180^\circ)で最大 \dfrac{2h}{mc}。
注意入試では式の導出(保存則3本と近似)が誘導される。結果の式だけ覚えて導出を飛ばすと、誘導に乗れない。
粒子と波動・原子の構造
着眼点運動量 p の粒子は波長 h/p の波の性質をもつ。電子線の回折・干渉はこれで説明される。
\lambda = \frac{h}{p} = \frac{h}{mv} = \frac{h}{\sqrt{2meV}}\quad(\text{電位差 } V \text{ で加速した電子})
例題
1静止した電子を 100\ \mathrm{V} で加速した。ド・ブロイ波長を求めよ。h = 6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}、m = 9.1\times10^{-31}\ \mathrm{kg}、e = 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{C}。
解答
p = \sqrt{2meV} = \sqrt{2\times9.1\times10^{-31}\times1.6\times10^{-19}\times100} = \sqrt{2.91\times10^{-47}} \approx 5.4\times10^{-24}\ \mathrm{kg\cdot m/s}\lambda = \frac{6.6\times10^{-34}}{5.4\times10^{-24}} \approx 1.2\times10^{-10}\ \mathrm{m}
2加速電圧を4倍にすると、電子のド・ブロイ波長は何倍か。また、同じ電圧で加速した陽子と電子ではどちらの波長が短いか。
解答
\lambda \propto \dfrac1{\sqrt V} なので \frac12 倍。同じ電圧なら \lambda \propto \dfrac{1}{\sqrt m}(電気量の大きさは同じ)で、質量の大きい陽子のほうが短い。
ポイント求めた波長が原子の間隔(10^{-10}\ \mathrm{m} 程度)と同程度なので、結晶で回折する。ブラッグの式にそのまま使える。
確認問題
1電子の速さが2倍になるとド・ブロイ波長は何倍か(相対論は無視)。
答え
\frac12 倍
着眼点量子条件(円周がド・ブロイ波長の整数倍)と振動数条件(準位の差が光子のエネルギー)の2本柱。エネルギー準位は n^2 に反比例する。
\text{量子条件: } 2\pi r = n\frac{h}{mv}\quad\left(mvr = n\frac{h}{2\pi}\right),\qquad \text{振動数条件: } h\nu = E_m - E_nr_n = \frac{h^2}{4\pi^2kme^2}n^2,\qquad E_n = -\frac{13.6}{n^2}\ \mathrm{eV}向心力はクーロン力: m\dfrac{v^2}{r} = k\dfrac{e^2}{r^2}。
例題
1水素原子のエネルギー準位を E_n = -\dfrac{13.6}{n^2}\ \mathrm{eV} とする。n=3 から n=2 に移るとき出る光の波長を求めよ。h = 6.6\times10^{-34}\ \mathrm{J\cdot s}、c = 3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}、1\ \mathrm{eV} = 1.6\times10^{-19}\ \mathrm{J}。
解答
\Delta E = 13.6\left(\frac14 - \frac19\right) = 13.6\times\frac{5}{36} \approx 1.89\ \mathrm{eV} = 3.02\times10^{-19}\ \mathrm{J}\lambda = \frac{hc}{\Delta E} = \frac{1.98\times10^{-25}}{3.02\times10^{-19}} \approx 6.6\times10^{-7}\ \mathrm{m}(可視光の赤)
2量子条件とクーロン力による円運動から、軌道半径 r_n が n^2 に比例することを示せ。
解答
量子条件より v = \dfrac{nh}{2\pi mr}。これを m\dfrac{v^2}{r} = k\dfrac{e^2}{r^2} すなわち mv^2 r = ke^2 に代入してm\cdot\frac{n^2h^2}{4\pi^2m^2r^2}\cdot r = ke^2 \ \Rightarrow\ r = \frac{h^2}{4\pi^2kme^2}n^2よって r_n \propto n^2。
ポイント光を出して落ちる先が n=1 ならライマン系列(紫外線)、n=2 ならバルマー系列(可視光を含む)、n=3 ならパッシェン系列(赤外線)。
注意E_n は負の値。「準位が高い」= n が大きく0に近い。電離エネルギー(n=1 から引き離す)は 13.6\ \mathrm{eV} で、符号を取り違えない。
確認問題
1基底状態の水素原子を電離するのに必要なエネルギーは。
答え
13.6\ \mathrm{eV}(E_\infty - E_1 = 0 - (-13.6))
原子核と放射線
着眼点質量数 A =陽子数+中性子数、原子番号 Z =陽子数。α崩壊で A が4・Z が2減り、β崩壊で Z が1増える(A は不変)。γ線では A・Z とも変わらない。
| 崩壊 | 出るもの | A | Z |
|---|
| α崩壊 | ヘリウム原子核 ^4_2\mathrm{He} | -4 | -2 |
| β崩壊 | 電子(原子核内の中性子が陽子に変わる) | 0 | +1 |
| γ崩壊 | 電磁波(γ線) | 0 | 0 |
例題
1^{226}_{\ 88}\mathrm{Ra} がα崩壊してできる原子核の質量数と原子番号を求めよ。
解答
質量数 226 - 4 = 222、原子番号 88 - 2 = 86(^{222}_{\ 86}\mathrm{Rn})。
2^{238}_{\ 92}\mathrm{U} が何回かのα崩壊とβ崩壊をして ^{206}_{\ 82}\mathrm{Pb} になった。α崩壊とβ崩壊の回数を求めよ。
解答
質量数はα崩壊でしか変わらない: (238 - 206)/4 = 8 回。
原子番号: α崩壊8回で 92 - 16 = 76。β崩壊を x 回として 76 + x = 82、x = 6 回。
ポイント回数の問題は「まず質量数でα、次に原子番号でβ」の順に決める。
注意β崩壊は質量数が変わらないのに原子番号が増える。「電子が出るから減る」と考えない。
確認問題
答え
原子番号(陽子数)が同じで、質量数(中性子数)が違う
着眼点電離作用はα>β>γ、透過力はγ>β>α。単位は「崩壊の数(Bq)」「吸収したエネルギー(Gy)」「人体への影響(Sv)」で区別する。
- ベクレル(Bq): 1秒あたりに崩壊する原子核の数。
- グレイ(Gy): 物質 1\ \mathrm{kg} あたりに吸収されたエネルギー(\mathrm{J/kg})。
- シーベルト(Sv): 放射線の種類や臓器による影響の違いを考慮した、人体への影響の量。
| 放射線 | 正体 | 電荷 | 電離作用 | 透過力 |
|---|
| α線 | ヘリウム原子核 | +2e | 強い | 弱い(紙1枚で止まる) |
| β線 | 電子 | -e | 中程度 | 中程度(薄い金属板で止まる) |
| γ線 | 電磁波 | 0 | 弱い | 強い(鉛や厚いコンクリートで弱める) |
例題
1電場の中を通すと、α線・β線・γ線はそれぞれどう曲がるか。
解答
α線は正なので電場の向きに、β線は負なので逆向きに曲がる。γ線は電荷がないので曲がらない。
注意磁場で曲げるときの向きは電荷の符号とローレンツ力で決める。β線(電子)はα線と逆向きに曲がり、質量が小さいので曲がり方も大きい。
確認問題
1同じ吸収線量(Gy)でも、放射線の種類によって Sv の値は同じとは限らない。正しいか。
答え
正しい(Sv は種類ごとの生体への影響を考慮する)
着眼点半減期 T ごとに、残っている原子核の数が半分になる。時間が T の何倍かを数える。
N = N_0\left(\frac12\right)^{t/T}
例題
1半減期 8.0 日の放射性原子核が N_0 個ある。24日後に残っている数を求めよ。
解答
24/8.0 = 3 半減期なので N_0\times\left(\frac12\right)^3 = \dfrac{N_0}{8}。
2遺跡の木片に含まれる ^{14}\mathrm{C} の割合が、生きている木の \frac14 だった。^{14}\mathrm{C} の半減期を 5.7\times10^3 年として、木が切られてからのおよその年数を求めよ。
解答
\left(\frac12\right)^{t/T} = \frac14 より t/T = 2。t = 2\times5.7\times10^3 \approx 1.1\times10^4 年。
ポイント割合が \frac12 のべき乗でないときは、両辺の対数をとる(\log_{10}2 = 0.30 などが与えられる)。
注意「崩壊した数」と「残っている数」を取り違えない。3半減期後に崩壊したのは \frac78。
確認問題
1放射能の強さ(Bq)が \frac1{16} になるのは半減期の何倍の時間後か。
答え
4倍(放射能は残っている原子核の数に比例)
必須質量とエネルギーの等価性・質量欠損と結合エネルギー
着眼点原子核の質量は、ばらばらの陽子・中性子の質量の和より小さい(質量欠損)。その差 \Delta m c^2 が結合エネルギー。
E = mc^2,\qquad \Delta m = (Zm_p + (A-Z)m_n) - M,\qquad E_{\text{結合}} = \Delta m\,c^2原子質量単位 \mathrm{u} で計算するときは、1\ \mathrm{u} に相当するエネルギー(約 931\ \mathrm{MeV})が与えられることが多い。
例題
1質量 1.0\ \mathrm{g} がすべてエネルギーに変わったときのエネルギーを求めよ。c = 3.0\times10^8\ \mathrm{m/s}。
解答
E = 1.0\times10^{-3}\times(3.0\times10^8)^2 = 9.0\times10^{13}\ \mathrm{J}
2陽子 1.0073\ \mathrm{u}、中性子 1.0087\ \mathrm{u}、重水素の原子核 ^2_1\mathrm{H} を 2.0136\ \mathrm{u} とする。1\ \mathrm{u} を 931\ \mathrm{MeV} として、重水素の原子核の結合エネルギーを求めよ。
解答
\Delta m = 1.0073 + 1.0087 - 2.0136 = 0.0024\ \mathrm{u}。
E = 0.0024\times931 \approx 2.2\ \mathrm{MeV}。
注意質量の差は小数第4位あたりで出る。与えられた桁をすべて使って引き算し、途中で丸めない。
確認問題
1原子核の質量と、構成する核子の質量の和はどちらが大きいか。
答え
核子の質量の和(差が質量欠損)
着眼点核反応では質量数と電荷(原子番号の和)が保存される。反応後に結合エネルギーの合計が増えれば、その分のエネルギーが放出される。
- 核子1個あたりの結合エネルギーは質量数60前後(鉄の付近)で最大。
- 重い原子核が分かれる(核分裂)、軽い原子核が合体する(核融合)と、1個あたりの結合エネルギーが大きくなり、エネルギーが出る。
- 放出エネルギー = 反応後の結合エネルギーの和 - 反応前の和 =(反応前の質量 - 反応後の質量)\times c^2。
例題
1^{14}_{\ 7}\mathrm{N} + {}^4_2\mathrm{He} \to {}^{17}_{\ 8}\mathrm{O} + \mathrm{X} の X は何か。
解答
質量数 14 + 4 = 17 + A より A = 1。原子番号 7 + 2 = 8 + Z より Z = 1。X は陽子 ^1_1\mathrm{H}。
2重水素の原子核の結合エネルギーを 2.2\ \mathrm{MeV}、^4_2\mathrm{He} の原子核の結合エネルギーを 28.3\ \mathrm{MeV} とする。重水素の原子核2個が融合して ^4_2\mathrm{He} になるときに放出されるエネルギーを求めよ。
解答
28.3 - 2\times2.2 = 23.9 \approx 24\ \mathrm{MeV}
ポイント放出エネルギーが生成物の運動エネルギーになる問題では、運動量保存(はじめ静止なら運動量の和0)と組み合わせて分け前を求める。分け前は質量の逆比。
注意「質量数が保存される」と「質量が保存される」は別。質量は保存されず、減った分がエネルギーになる。
着眼点陽子・中性子はクォークからできている(陽子は uud、中性子は udd)。自然界の基本的な力は、強い力・弱い力・電磁気力・重力の4つ。
粒子には、質量が同じで電荷などが逆の反粒子がある(電子に対する陽電子など)。
ポイント不要の理由: 計算問題になることはほとんどなく、知識として問われても配点は小さい。例外: 共通テストで用語・電荷の組み合わせ(クォークの電荷 +\frac23e、-\frac13e から陽子の電荷を出す等)が問われることはありうる。